緊張していたらしい。
「どうだった?」
エリが電話の向こうで弾んだ声を出す。
「電話、早!まだ彼と一緒じゃないの?」
「そうだけど、今日の報告を二人で待ってたのよ。で、どうだった?」
ああ。こんな弾んだ声で言われると言いづらいな。しかし、言わないと。あちらも私のこと、気に入らないだろうし。
「ゴハンご馳走になって、さっき送ってもらったところなんだけど、また日曜日に会えませんか?ってLINEが来た。」
「ああ。よかった。」
「それが、ほとんど話してないの。なのに、楽しかったです、とかまた会えませんか?って。そこまで社交辞令してくれなくてもいいんだけど。」
言い終わるとエリがクスクス笑う声が聞こえる。
「ちょっと待ってて。」
エリがそう言ってから、電話の向こうでヒソヒソと話している様子が伝わってきた。彼に報告しているみたいね。
「あがり症だから、話せなかったんだと思うよって白川君が言ってる。」
「私のことが気に入らなかったんじゃないの?」
「何とも思わない相手には緊張しないはずだって言ってる。もし苦手じゃなければ、あと2回くらいは会ってみて?」
「まあ、ダメってわけじゃないけど…。」
「じゃ、決まりね。」
まあ、全体的に無難なタイプだと思うし、親には気に入られそうなタイプだとは思うけど、何しろ、つかみどころのない人なのよね。
エリの顔を立てるつもりでOKしとくか。
エリとの電話のあと、さんざん悩んだ挙句、短い一文だけを原田君に返信した。
『はい。大丈夫です。』
そうね。結婚相手としては悪くないものね。エリの顔も立てなきゃってことで、また会ってみよう。