クッキー。
ちょっぴり気まずい気持ちで待ち合わせ場所に向かう。何せ、先週のあのやりとりから一週間、LINEもぎこちなくて。何かできることはないかと考えていたら、以前プレゼントしてもらったクッキースタンプのことを思い出した。
「お待たせしました〜。」
待ち合わせのコンビニで、つとめて明るい声で言って助手席に乗り込む。そしてクッキーの入った袋を差し出すと、てっ君がキョトンとした。
「あっ。これってもしかして…?」
袋を開けた途端に笑顔になった。てっ君は嬉しそうに一個を手に取って眺めている。ウフフ。焼いてきて良かった。もちろん、特にキレイに焼けたものを厳選したわよ。残りは愛梨へのおすそ分けと、家での私のおやつ。
「そうよ。約束したもんね。」
「もう忘れていると思ってた。」
ちょっぴり嫌味っぽく言う、いつも通りの様子に、私もホッとして同じように返す。
「毎週誘ってくる人がいるから、デートに忙しくて焼けなかっただけよ。」
「じゃあ、ほったらかしにしたら、もっと早く焼いてくれた?」
「それだったら永遠に焼いてあげない!」
「あ。ひどい。」
言いながら、サクリと音を立ててクッキーを齧った。
「あ。うまい!」
嬉しそうに口をモグモグさせながら車を発進させる。
次に何か言い出した時には、上手くキャッチしなくちゃ。などと身構えた矢先にてっ君が言った。
「一緒に住んでいれば、しょっちゅう食べさせてもらえそう。」
ーゲホッ!ペットボトルのお茶でむせた私。
い、いきなり言う?いや、ここはスルーしちゃダメよ。
「そ、そうね。毎日じゃなければいいわよ。」
キ、キャッチしたわよ!グッジョブ、私!
「えー?毎日じゃないの?」
「お菓子屋さんじゃないんだから〜。」
思わず私が笑うと、てっ君も笑った。
「さ。着いた。」
ショッピングモールの駐車場で車を停めると、てっ君が言った。
「お買い物?」
「まあね。」
ハッキリ言わないまま、いそいそと手を引くようにしてフロアに進んでいった。
「ねえ!今日、歩くの速くない?」
「そう?」
速いよ。それに表情が固い。やっぱり先週のこと怒ってるのかしら?




