腕の中で。
原田君の腕に包み込まれたまま私はうなずいた。でも、でも、ごめんなさい。まだ、次のコトをする勇気がないの。嫌われたくないけど、勇気がないの。楓花って呼び捨てにしてもいいけど、まだ、まだなの。本当に、本当にごめんなさい。
実のところ、嫌われたくないけど、私は原田君のことが好きかどうか、ハッキリわからない。嫌いじゃないけど。優しくしてくれるから、そばにいてみようと思っているの。「想われるほうが幸せ」っていう言葉もあるじゃない?私の「好き」って気持ちだけが大きくなってしまうのは苦しい。重い女になっちゃいそうだし。だから想われているほうが幸せなのかもしれないと思う。
原田君の胸は温かくて気持ちがいい。そして手は小さな子にするように優しく頭をなでたり、背中をポンポンとしてくれている。これから好きになることはあるのかしら?こんな風に甘えていていいのかしら?体を委ねることができる日が来るのかしら?
動かないままでいると原田君が唇を重ね、手を握る。いつしか唇が頬や顎をなぞり、手は肩や襟元をなぞる。体が熱くなるのを感じる。胸がドキドキする。でも、こわい。唇や手の感触におびえながら動かない私に、原田君が言った。
「もう少しだけ、いい?」
抵抗できないままでいると体を横にされ、少しだけ服をめくってブラをずらす。怖い。どうしよう。
「怖い?」
うなずくと、原田君は何度も大事そうに抱きしめながら、唇や手を胸に這わせる。みんなこんなことをしているの?エリも、彼とこんなことをしているの?私がコドモなだけ?涙がにじみそうになったとき、また抱きしめられた。
「よく我慢したね。」
そう言うと、背中をポンポンとたたいた。
「ここから先は、待つから。さ。どこか出かけよう。このまま部屋にいると、俺が我慢できなくなりそうだ。」
背を向けて服を直す。よかったこれ以上されなくて。
服を直してから振り返ると、優しい笑みを浮かべた原田君が手を差し出す。
「出かけよう。どこがいい?…ホテルでもいいよ?」
「…い、イヤですっ!」
「冗談だよ。約束する。」
ほっとした気持ちで手を取ると、そのまま抱きしめられる。
…あったかいね。原田君の胸の中。