プロローグ
俺は佐藤拓海。帰宅部。コンビニバイトの高校2年生の17歳。高校生にもなって、異世界転生し、ハーレムチート無双をするのが夢な非常に残念な少年。
容姿もはっきり言って残念だ。クラスでもワースト1位を争えるレベルである。
2次元に嫁はたくさんいるが、現実の彼女はもちろん居ない。家に帰れば、ゲームやアニメ、ラノベばかりの楽園生活。
だが、そんな日常は、ある日を境に崩れて行ったのである。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、今日も憂鬱な学校終了した。
ようやく家に帰れるのだが、今の俺はそうは行かない。
「なぁ、佐藤、今日も一緒に遊ぼうぜぇ?」
と、俺に声をかけてきたのはいつもの3人組だ。
友達が少なく、見た目から明らかにキモオタな俺にとって遊びのお誘いはとてもありがたいことだ。
だが、こいつらの言う遊びはただの遊びではない。
昨日は頭にジュースをぶっかけられた。一昨日は俺の働くコンビニで万引きをさせられた。それに加え、俺の金も奪っていく。
ここまで言えば誰でも分かるだろう。俺は不良からイジメられているのだ。クラスにもイジメを止めてくれる人は居ない。居たとしたら次はそいつがイジメを受けることになってしまうだろう。
どういうわけか、担任も見て見ぬ振りだ。
うちは親が離婚して、母1人だけ。母は仕事が忙しいし、どうしても迷惑をかけるわけにはいかない。
ついこの間まではまともな学校生活を送れていたんだ。
だが、2ヶ月前。朝、学校に登校して教室に入ると、普段は綺麗に並んでいる机が1つだけ倒れていた。それだけなら問題ない。しかしその机に、「死ね」「消えろキモオタ」「学校来んな」など多くの悪口が書かれていた。
あぁ、もちろん書かれて、倒されていたのは俺の机だ。まるで心に穴が空いたような感じであった。
1日に1冊教科書は奪われるし、周りからは蔑んだ目で見られるし、それからはめちゃくちゃであった。
いや、蔑んだ目で見られるのは元からだったかもしれないな。
そんなに酷いことをされているなら学校行くなよ、不登校になればいいだろ?と、そういう意見もあるでしょう。はい、俺は3日前まで不登校でした。怪我で授業に出れないことも多くあり、出席日数が足りてなかったので今は来ているだけです。
はぁ、今日も今日とて遊びに誘われてしまった。
もし断ったらどうなるかなんて分かりやしないので、「はい。」とだけ答えて、俯きながら3人の後をついて行っています。
今回はどんなことをされるのか...。
なんて考えながら階段を上っていると、到着したのは屋上だ。
すると、早速、3人組のいかにもリーダーっぽい人が俺の顔面を殴ってきた。気持ちいいほど綺麗に決まったストレートパンチを受けるのは何回目だろうか。
リーダーくんの名前は確か俺と同じ【佐藤】だ。下の名前は覚えていない。
「お前さ、今更だけど俺達になんでこんなことされてるか分かってんのか?」
胸ぐらをつかんで、覗くように聞いてくる。
分かるわけ無いだろ。そんなこと俺が1番知りたいよ。
なんて言ったら日が暮れるまでには命は無いだろうから
「すみません。よく分かりません。」
と答えると、瞬時に両サイドのリーダーではない2人に蹴り飛ばされた。
確か、右の人が太田で、左の人が安田、って名前だった気がする。
「そうかそうか、分からないのか。可哀想だから教えてやるよ。それはな、俺と、お前の、名字が、一緒だからだよ」
さすがにこれは嘘だろう。ストレス発散の為に俺を使っているに違いない。佐藤なんて全国探せばどこにでもいる。お前はどこの王様だ。だから俺はこう返答した。
「そ、それだけです?」
佐藤の眉がピクリと動いた。ただでさえイラついていた佐藤がさらにイラつきはじめ気がする。失言だったか。
「あぁ、これだけだよ。お前のせいでクラスメイトにとって、佐藤という名字は汚物同様さ。つまり、お前がいると俺も汚物になるんだよ。それだけですだと?お前なんかに俺の気持ちが分かるかっ!この世の中は俺が中心に出来てないとダメなんだ!お前なんか死ね!」
訳の分からないことを言われながら佐藤に蹴られている。
このままいけば間違いなく俺は殺されるだろう。正直もう、死んでもいい。でも、こいつに殺されるのは絶対に嫌だ。
なら殺られる前に殺っちまえ。
そう思ってからの行動は早かった。
念の為に隠し持っていたナイフで佐藤の腹を刺す。「なっ...」と声をあげ、驚いた様子でこちらを見てくる。だがもう遅い。
相手が弱まったところで、屋上から突き落とす。
佐藤がどうなったかなんて確認する時間も無く、残りの2人が俺に襲い掛かってくる。
俺は、気が保てなくたり、気付けば残りの2人も屋上から突き落としていた。
校舎の屋上から落ちれば、間違いなく生きてはいないだろう。俺は3人の命を奪った人殺しだ。
どんな理由があろうとも、人を殺すのはいけないこと。なんて小学生でも分かることだ。
どの道俺はしょうもない人生を送るだけだ。
ならば俺なんかは死んだほうがマシだろう。
俺が死んだら迷惑がかかる人もいるだろう。
最後の最後まで本当にすみません。
今までありがとうございました。そして最後に
「さようなら」
そう呟き、俺は3人と同様に校舎を飛び降りた。