剣聖との出会い
焼け焦げた森の跡
そしてあちこちに散らばっている剣や槍などの武器
そして鉄と尿が入り混じったような独特の異臭がする
これらだけでもここで戦闘が行われていたと容易に予想出来る
だが極めつけは切り傷 刺し傷などが身体中にある魔族の死体の数々だ
その死体の中に1つだけ人間と思しきものがある
可哀想に巻き込まれたのか
ん? いや待てだとしたらどうして傷がない
不思議に思い少年の近くに行き安否を確かめる
生きている?!
呼吸も正常だ
だが不思議だ
どうしてこの状況でこの少年が生きているのだろうか?
詳細は帰ってから確かめようと思い
私は少年を担ぎあたしの住む山小屋まで運んだ
目が覚めると見知らぬ天井だった
天井には雨漏りのシミがあり
柱なんかもところどころ老朽化している
「ここはどこだ?」
記憶が不鮮明だ
俺は確か……
その時頭に激痛が走る
「ぐうう」
そして思い出す
俺がいた王国も
共に暮らしていたエルフのみんな
そして最愛のシルヴィも
すべて魔族に奪われたのだと
俺の腹の奥で黒い何かが動き出す
そして目に激痛が走る
「あぁああああああああ」
俺は痛みに耐えきれず絶叫する
「おい! どうした」
「な?! これは魔眼? 力を制御しきれていないのか」
「くっやむをえんか」
そこで俺の意識は途切れた
目が覚めると
そこには金髪で翡翠色の目をした美女がいた
「ん? 起きたのか? 具合は大丈夫か?」
「ああすまない」
「俺はいったいどうなったんだ?」
「お前は魔眼の力に呑まれようとしていた
だから私がその力を封印した」
「そうか」
「だがその力は右目だけしか封印できなかった」
「いや助かったありがとう」
美女はどこからか鏡を取り出すと俺に見せてきた
するとそこには金髪の少年が映っていた
右目は至って普通の碧眼
だが左目は緋色に染まり歯車のような模様が瞳に浮かんでいた
俺が今の状況に困惑していると
「そうだお前は目が覚めたばかりだったな
1から説明しよう」
そして俺はその美女からの説明を聞いた
要約するとこうだ
俺は焼け焦げた森の跡地で気を失っていた
そして辺りには無数の魔族の死体があり
状況から見てその魔族は俺が殺ったのだという
そうこの魔眼の力で
そしてそれを聞き確信する
目覚めて思い出したことあれは紛れもない真実であったと
美女が口を開く
「少年まずは自己紹介をしよう
私はレイチェル・フィンベル
まぁ世間では剣聖と呼ばれている」
「剣聖?!」
「ああそうだ」
「2代目剣聖か?」
「いや初代だよ」
「バカな?! 初代ならば年は80は過ぎているはずだぞ」
剣聖の成し遂げた偉業は有名だ
1人でドラゴンを倒したなど数え上げればキリがないほどに
「ああ昔ドジってね歳を取らない体になっちまったのさ」
「そ、そうか」
「それで少年よ名前は?」
「俺はユリウス・アルカディアだ」
「アルカディア? まさかアルカディア王国の?!」
「ああそのアルカディア王国の王子だ」
「そうかい生き残りがいたとはね」
「あそこは今はどうなっているんだ?」
「あそこは……今は魔族領になっているよ」
「そ……そうか……」
魔族に攻められたのだから予想できていたことだ
だがそれでも改めて事実を突きつけられると心を抉られる気持ちになる
そう俺はあの時逃げ出してしまったのだから……
「ユリウス君はこれからどうするんだい?」
「俺は……」
俺は逃げ出した
それでも命を託された 生きてと願われた
父上に シルヴィに
だから俺は生きねばならない
それが生き残った俺にできる償いなのだから
そして俺に魔族を倒したという力があるというならば
やはり俺は魔族を許せない!
父上をシルヴィを奪った魔族が
そして何よりあの時逃げた自分が
あの時立ち向かう勇気がなかった自分が
あの時力がなかった自分が
何よりも憎い!
だから俺は……
「剣聖いやレイチェルさん俺を鍛えてくれ!」
この時から地獄の特訓の日々が始まった
そしてこの日からユリウスの運命の歯車は動き出した
そして3年後
「くたばれれれれれ クソババアああああああ」
俺はそう言って 右手に握りしめた剣を振るう
狙うはもちろん相手の首のみ
だがそんな俺の渾身の一撃を相手は軽々と受け止める
剣でではない 親指と人差し指でだ
くっこのババア化物かよ
そして剣を受け止め相手の右ストレートが飛んでくる
だがその一撃は既にわかっていた
そう俺の魔眼の能力未来視により
そして俺は難なく右拳をかわすと
相手は瞬時に左脚で蹴りを放ってきた
だが俺にはお見通し
俺は後ろへ飛び退きかわした
「相変わらず凄まじいなその目は」
ババアこと俺の師匠であるレイチェルが口を開く
「全くこの3年間剣を教え順調に腕を上げたはいいがなんで口の悪さまで上がってんだよ」
何を言っているのだろうか?
あんなことをされれば口も悪くなるだろう
基礎体力を上げるぞと言われいきなり崖から突き落とされ
魔物の巣に置き去りにされ
そして1番腹立たしいのは剣を教えただと
剣の型など微塵も教わったことなどない
初日に剣を持たされ適当に毎日振ってろと言われ
そして何日が経つとよしっ魔物狩ってこいと言われた
もちろん異議を申し立てたさ
それを言うと奴は
「はあ?! んなもん実戦で覚えればいいんだよ
考えるな感じるんだってことで行ってこい」
という訳も分からないことを行って魔物の前に放り投げた
もうそれからの修行は崖を落とされからの無限ループだ
それを続けること苦節3年
信じられないことに俺は強くなった
強くなったのだが素直に感謝しきれない思いでいた
「あ! そうだユウ私リンドブルク王国ってことに行くことになったから」
「は?! また随分と急だな」
「まぁ頑張ってくれ」
「は?! 何言ってんだお前も来るんだぞ」
「は?! 俺もか?!」
「おうちなみに3年間な」
「3年?! なんでいつも急なんだよ」
「昔の知り合いが学校が育成学校っていうのを開いていてなそこで教えることになった」
「おい! まさか俺にその学校に通えと言うんじゃ……」
「お? 当たりだ」
「はああああああああ?
いや俺の強さならそんなとこ通う必要ないんじゃ」
「ユウお前自分がどれくらいの強さか知ってんのか」
「は?! そんなもん山に篭ってたんだから知るわけないだろう
でもよ養成学校なんて貴族のボンボンが通うような学校だろう?」
「少なくともそいつらよりは強いぞ」
「ユウこの世界にわなまだまだ強い奴がいっぱいいるぞ」
レイチェル師匠が急にシリアスな顔で言い始めた
そして……
「あとお前めっちゃ馬鹿だろっ
あと友達とかいねぇし」
「うるせぇ余計なお世話だ」
山にばっかいたんだからしょうがないだろう
それに大切なものをつくって失うのはもう嫌だしな
俺が口を開かず黙っていると
「じゃ了承したってことでよしっ行くぞ」
「は?! おいちょっと待て俺は了承なんて……
って待て行くって今からか?」
「ん? ああそうだぞ」
「だからなんでいつも急なんだよ」
そして俺は渋々レイチェルについて行った
まさかそこで運命と出会うとは露とも思わずに
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