覚醒の時
短いです
森の奥から悲鳴が聞こえる
そしてあちこちから炎が舞い上がっている
「いったい何が?!」
『魔族だァァァァァ』
「なっ?! 魔族だと?!」
「ユウ シルヴィ早く逃げろ」
「ユウ私たちも」
「あ、ああ」
突如、頭に鋭い痛みが走る
「がああ」
「ユウ」
痛みに耐えられずそのまま膝をつく
頭の中に凄惨な光景が広がる
それは倒壊した建物 火の海となった都市
そして己の父の絶望に染まった顔
(くっこれは俺の記憶か?)
「なぜ? こんな時に」
「ユウ早く」
そうだ今は一刻も早く逃げないと
そして俺は、シルヴィの手を取り走り出す
突如握っていた手が軽くなった
「シルヴィ?」
振り向くと手が切断され地に伏していた
「シルヴィ?!」
すると森の奥から声が聴こえてくる
「おいあいつらで最後か?」
「あああっちの隊ではもう終わったと連絡があった」
「くっそどっちが先に潰し終えるか勝負してたのによ負けちまった」
「まぁいいさっさと終わらせるぞ」
「へいよ」
そして襲撃者の全貌が明らかになる
人の形をし、頭には角 そして尻尾がある
「ユウ私は、いいから早く逃げて」
シルヴィが声をあげる
「バカ!そんなこと出来るわけないだろっ!」
「ははっ美しい友情いや恋情ってやつか」
「まさかエルフの森に人間がいるとはな」
「だけどよ…死ねっ」
奴の周りに炎の槍が現れる
「ユウ!」
シルヴィは、俺を押した そして……
「シルヴィ」
シルヴィの胸には炎の槍が刺さっていた
「ユウごめんでも私の分まで生き…て…」
「シルヴィぃぃぃぃぃぃぃぃ」
「はっすぐにお前も送ってやるよ
だから喚くなよっ」
炎の槍が俺に襲いかかる
その時
(憎いか?)
俺の中から声が聞こえる
(力が欲しいか?)
声が語る
憎いアイツらがシルヴィを殺った奴が
俺の故郷を襲ったヤツらが
俺から奪っていく奴ら全てが憎い
そして何も出来ない俺も不条理なこの世界もすべてが憎い
すると俺の内側から黒い何かが漏れ出す感覚が沸き起こる
そして俺の視界は、赤く染まった
辺りが爆煙で広がる
視界がひらけるとそこには誰もいなかった
「よしっ終わったな さっさと帰ろうぜ!」
「ああそうだな」
そのまま帰路へ経とうとすると
「おい! 待てよ どこへ行く?」
「?!」
上から声が聞こえる
見上げると
さっき殺したはずの男が女の亡骸を背負い木の上に立っていた
「な?! お前なぜ生きて?!」
「シルヴィすぐに終わるから少し待っててくれ」
男は女をそっと地面においた
男の様子を観察すると
「な?! お前なんだその目は?!」
男の目はさっきは両目とも碧眼だった
だが今は、緋色に染まり瞳にはうっすらと歯車のような模様がみえる
「今から死ぬお前達には関係ねぇことだ
だからよォ」
男の纏う雰囲気が変わる
それは、歴戦の戦士が纏うような洗練されたものではない
それは、今まで対峙したことのない圧倒的恐怖
何人も抗えぬ不条理で覆ようのない力の塊であった
「てめぇら全員ミナゴロシダァアア」
男がそう言うと 突如視界が反転した
魔族たちは驚愕し目を見開いた
仲間の死に対してではない
男が何をしたか理解できなかったからだ
魔族たちはこんな辺境の森を掃討しているとはいえ腐っても魔族の精鋭だった
そんなもの達の誰一人でさえ男が仲間の首を切り落としたそのことに対し反応すら出来なかったからだ
「な?! 何を?」
するとまたもう1人の魔族の首が切り落とされた
そう視界に捉えることは、能わず気付いた時にはもう
「くっ総員迎撃態勢をとれ こいつは今ここで殺す
」
そして魔族は男に一斉に攻め入る
ある者は剣で ある者は槍で そしてある者は魔法で
魔法により遠距離の攻撃を可能とし近接の場合は、槍と剣で対応する その間も魔法による支援も忘れない
まるで軍隊を相手取るように立ち回る
自分の力に慢心せず相手の力を驕らない完璧な布陣
それでも男の猛攻を止めるには至らなかった
魔法による攻撃も男を仕留めるどころか足を止めることすら叶わない
気付けば男は、先へ進んでいる
そして剣と槍で応戦するも魔族たちは1歩いや一瞬たりとも動くことが出来なかった
そうまるで時間でも止められているかのように
「何?!」
そして近接部隊が崩れ布陣に穴が空いた今
始まるのは、戦いと表現するには生ぬるい蹂躙だった
「ハハハハハハハハハコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスゥ」
男が呪詛のような声を上げ逃げ惑う魔族を虐殺していく
「もうイヤだやめてくれれれれ」
「い、いのち、いのちだけは助けてくれ」
魔族たちは、必死に命乞いをする
だが、それでも男が止まることはない
逃げる者達の動きを止め首を切り落とす
ある者は槍で滅多刺しに刺され
ある者は剣でひたすら切りつけられる
そして残す魔族も最後の一人となる
魔族は足が震え立ち上がることもできずただ命乞いをしていた
「待ってくれ帰りを待つ家族がいるんだ妻や娘がいるんだ だから見逃してくれ!」
必死にに乞う魔族
だが男は止まらない
一歩一歩と距離を詰め
そして剣を上げ振り下ろした
ピチャ
魔族の血が巻き散る
男の両目は役目を終えたかのように元の碧眼に戻った
そして男は力尽き倒れた
とりあえずあらすじに書いた所まで今日中に書ければいいのですが…