3.剣 by篠原萌葱
『ーーー。ありがとう。記憶を戻して
そしてーーーーーーくれて。』
『いいや、お礼なんて言わなくていいのに。
だいたい、ーーーの為にーーたんだもん。
でもやっぱり模造品じゃあ、ダメね。
キャパが低すぎるね。やっぱり本物を使いたいけどね…』
『本物、どこにあるか知ってるよ…
時を無駄に貪ってただけじゃないからね。
でも、取りに行くのは次ね、足枷が多過ぎる。
未来をーーしてくれればいいよ。』
『未来をーーって…
ああ、そういうことね、出来るけど、能力的に危険極まりないよ。
記憶まで綺麗に運べるかどうか分からないからね…』
懐かしいと感じる声と、顔はどんどん遠ざかって行く…
暗い闇、何にも感じないはずなのに、熱い。
熱い。
パチッパチッ。
炎?
私は暗闇にいたはずで…何で炎の中?
『ーー。
ごめ…ん…ね…わた…しのせいで…
巻き込んで…まも…れなく…って
…ご…めん…』
熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。
……………。
目を開けたらそこはいつもの天井で、
熱くなく、涼しかった。
献上式という巫女を祀る日まであと二日。
こんな変な夢、あの日以来。
怖い…怖い
あの夢の中で私は多分死んだのだろう…
炎に囲まれて、沢山の友と一緒に亡骸となったのだろう…怖い…予知夢?
私は死ぬの?
そんな訳ない。だって、そんなに友達多くないし。
起き上がった私はベットの横を見た…
そこには、手紙があった。誰からかはよくわからないが、開けて見ることにした。
『アーテルの巫女へ
月が頂点に達した時、悪魔は産声をあげた。
貴様の命と共に月の権威は失われ
輝く無数の星が
貴様の死を祝福するために一層輝くだろう。
The Black Catより』
予知夢だったのだ。本当に。いつ死ぬかわからないけど死ぬのだ。
私は震えながら立ち上がり
倒れた。
目を覚ましたら、そこは地下室だった。それも入ってはいけない扉の前だ。
周りを見ると、ルルがいた。深刻そうに俯いていた。
「ルル?」
「あっ、ああ、気が付いたんだ、良かった。起こしに行こうと思ったら突然バタンって音がして倒れてたからびっくりしたよ。」
わざとらしかった。
「ねえ、ここに何でわざわざ私を運んだの?
重くて大変だったはずだよね?」
何でわざわざ?
「そうね、一言で言うなら、時間が無いから。
もっというと聞かれたくなかったからかな。」
「どういうこと?」
「まあまあ、中に入れば分かる。」
中は、神殿のような作りだった。ただし、不思議なことがあった。
この村が属している『アウラト帝国』の国旗ではなく、隣国の『グリサンドラ皇国』の国旗が飾られていた。
おかしい。
あとは、祭壇が三つあり、それぞれに黒くひび割れたところから黄色光が覗く大剣、柄には『疾風』と書いてあるのが置いてあったり、銀色で丸く中央に目がある水晶があったり、紫色の花の付いた黄金の琴が置いてあったりした。
「『疾風』に触って。これまでの違和感が全部吹き飛ぶから。」
言われなくても触りたかった。
絶対何かあるという直感が働いたからだ。
柄を掴んで目を瞑った。
剣に吸い込まれてった。