2.戦いの脳筋、脅しの脳筋by篠原 萌葱
この村は歴代の英雄を産み出すだけあって、みんな強い。
強いのに、農作業をやっている。
一回戦目は魔法が得意な子との対戦だった。
だから、短剣を武器として選んだ。
拳大の大きさの火の玉がどんどん飛んでくる。
もちろん、私はよける。
針の穴ほどの小さな隙間を縫って。
飛んだり屈んだりしながら。
短剣を選んで良かったって本当に思う。
だって、ロングソードとかだと火の玉を切れるけど切ってる一瞬の隙に次の火の玉が来たら避けれないじゃない。
だったら、切るよりも全力で魔力が切れるまで打たせるに限る!
それに、こんなところで、切り札を使える訳がない。
二回戦目は大きい斧を振り回すのが得意な子だった。
相性は最高。
渾身の一撃を回避すれば、大きな隙ができる。
そのときに、首トンで勝利。
三回戦目は私と同じように短剣を使う小回りのきく動きをする子だった。
相性は一回戦目の子より悪い。
しかも、まだ一回戦目の疲れが抜けきってない。
ちょっときついかも。
油断するとお腹に蹴りが入る、しかも、この子は蹴りが重いのだ。
絶対に蹴りは注意しなきゃならない。
短剣も毒が塗ってある可能性があるから全力で回避しつつ、チクチク隙を見ては攻撃していかなきゃならない。
地味に疲れる。
この戦いは一番長かった。
四回戦目は槍が得意な子だった。
相性はまあ、普通ぐらい。
物凄い早さで振られている槍をどうにか掻い潜って首筋にピタッと、短剣を当てて終了。
相手の子、連戦で疲れてたみたいで、動きに精彩さを欠いていたから勝てたのかも。
五回戦目は、また魔法が得意な子。
でも、攻撃と言うよりも補助を得意としてるから意外と倒すのは簡単。
かと思ったら、流石に四回勝っただけあって、強い。
ホントに足が重かった。
しかも、まあ、きれいなパンチだこと。
ちょっと、粗っぽいけど、正確に必要最低限の力で打ってくる。
避けるのにどれだけ苦労したことか。
魔法を使えて、ましてや体術もできるって、反則でしょ。