プロローグ
これは、本気の処女作なので、お手柔らかにお願いします。
気がついたらそこに立っていた。
汚水の臭いが漂うスラムに。
意識の覚醒と共に、一つ目の疑問が脳内を支配した。
私は、誰か。
手にしていた大剣の柄に名前が掘ってあった。
篠原萌葱だ。
でも、だからなんなのだろう。
名前がわかったって、たいして状況が変わらない。
手にしている大剣は私の腕では持ち上げるのが不可能そうなのに、空気のように軽かった。
黒くひび割れ、裂け目から黄色が覗いている。
たとえ、この剣があったとしてもなかったとしても言えることは一つ。
ーーー今生きて行くのに必要なものがなかった。ーーー
私は、どうすればいいだろうか。
剣のせいか、体がだるい。重い。
三日目にして、私は倒れたのである。
気がつくとベットの上だった。
看病してくれたのは、私を拾ってくれたルルティエ。
私は、どうやら孤児院にきたらしいのだ。
なぜかよく知らないが、運が良かったということにしよう。
家族もできて幸せが続いた。
私も続けばいいと思った。
そんな思いは、バッサリ切られるのが世の中の理である。
私は信じたかったのだ。
別れが綴る物語が最悪の結末を迎えないこよ。
信じたかった。
たとえ、終焉が訪れたとしても。
何度目になるかわからない私の何度目かの物語は、取り敢えず幕を閉じた。