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握り

「あの・・・先輩・・・これ、いつまで続けるんですか? 私、もうそろそろ、ほんとに終わりにしたいんですけど・・・」


「えー、もう? 遠慮しないでよ。それじゃ大貴とかわらんじゃん・・・はい、大盛り!」


そう言って先輩は千春の空けた茶碗へ間髪入れずご飯をよそい、ついでに自分の大きな丼にも山盛りのご飯を追加する――こんなやりとりがさっきから、もう何回も繰り返されているのだ。大貴さん――というのは、先輩の先輩の元カレさんの名前らしく、付き合っていたころはデートのたび、大食いに付き合わされていたらしい――かわいそうに・・・。


「先輩、大貴さんといつもこんなことしてたんですか?」


「もちろん! 大貴に食べさせるついでに、自分も一緒にトレーニングすれば、時間を有効活用できんじゃん?」


頬にごはんつぶをつけた状態で無邪気に笑って答えられると、なんだかどうでもいいような気もしてくるから不思議だ。


「うーん、ちょうどこれで大貴と同じくらいかなー」


そばにある三升釜を先輩が覗き込んだので、千春もそばへ行って覗き込んだ。釜のなかにあれほどあった米は半分以上なくなって、一部釜の底が見え始めている。こんなにたくさん食べたのだろうか。重さはそれほど感じないが、胴体の前方、鳩尾あたりの皮膚が張りつめている感じはする。千春が自分のおなかのあたりを見下ろした瞬間、先輩の手が伸びてきて千春の体操着越しに肋骨の下、お腹のあたりの膨らみへ触れる。


「ちょ、ちょっと…」


相手が女とはいえ、突然触られれば緊張はする。


「ちょっと失礼ー。おー、いいぐあいに張ってきてるね!」


少し力の入った千春にはおかまいなく、触る、というより、撫でる、というような手つきだ。


「よし、じゃあちょっと早いけど、握ってあげようか?」


「握る?」


「千春ちゃん、おなか自分で押してみて。どのくらいへこむ?」


言われるがまま、親指でそっと押してみると、プニッとした薄めの皮下脂肪の向こうに、確かな胃袋の感触はある。それほど固くもないが、それほど柔らかくもないと思う。


「まあ、そこそこ…って感じです」


「じゃあ、私の、このあたり押してみて」


先輩が背筋を伸ばすようにして、自分のお腹を指さす。千春より遅れて食べ始めたけれど、食べる速度が速いので、既にそこには十分、少女の身体に不自然な膨らみが出現している。


「このあたりですか? …うわっ! かたっ!?」


「そう、固いでしょー? ご飯って、空気入ってるから、もっとずっとつぶせるのよ。私がときどき食べながら、お腹を下に押し込んだり、揉んだりしてたの、気づいた?」


「…見えてはいましたけど、そういう…趣味…かなんかかと思って、見ないふりしてました」


「違うの違うの――まあ、お腹を揉むのは好きだけどーーこれは胃の中のものを押しつぶして固める大食いのテクニックなのね。ってことで、今から千春ちゃんにも、やってあげまーす」


「え? いえ、いいですよ、私は別に…」


「何言ってんのよ今さら。ここまでいったらやるしかないでしょ? 今日は限界まで食べて計量するんだから」


「ふあっ!?」


「はい、息止めてー! ゆっくり吸って、吐いてー。」


「へっ!? ふあっ?」


先輩が千春のおなかに抱き着くような形で、直接ぐいぐいお腹を押し始める。どうして他人の手って、こんなに自分の手と違うんだろう。自分で自分をくすぐっても全然くすぐったくないのに、他人の手だとくすぐったいのと似たような感じだ。痛い、と、気持ちいい、の中間くらい。もしも窓の外から今の状況を見た人がいたら、戯れている2人の少女――あるいはカップル――の姿に見えただろう。

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