表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

プロローグ

「2056年 東京オリンピック Ohgui 女子48 kg級」という、以前書いたコアな読者向け短編小説のスピンオフです。「小山真理子の中学時代の話を読みたい」というご感想と、「イリーナ視点の話を読みたい」というご感想をいただきましたので、暇を見つけて少しずつ書いていこうと思います。

「おおっと!ろくじゅうきゅうてんごーさん!ろくじゅうきゅうてんごーさん!これはすごい記録が出ました!ロシアのイリーナ選手の記録を1.5 キロ上回り暫定首位です!残る計量はあと二人、これは少なくともメダル確定、ということですね。いやー、小山真理子選手、よく頑張りました!」

「コンディションをしっかりこのオリンピックに合わせてきたあたりは、さすがとしか言いようがないですねえ。自己ベストを1.2キロも上回ってますね」

「2056年東京オリンピック、女子48 kg級 Ohgui、世界ランキング1位、女王、小山真理子、堂々の貫録です!」


ーーーーーー


異国の言葉はよく分からないが、自分の記録が超されたことくらい、アナウンサーの声を聞いていれば分かる。一瞬遅れて、電工掲示板のロシア国旗の上に日本の国旗が表示された。隣のアラビア数字は...69.53! まさかここまで増量してくるとは。完敗だ。


負けたはずなのに、不思議と気持ちが落ち着いているのを、イリーナは感じた。こんなことは、はじめてだ。初めてのオリンピックだから? 自己ベストが出せたから? それとも完敗だったから? 減量が苦しすぎたから? どれも事実ではあるが、決定的な理由ではない。答えは自分でも、分かっていた。母だ。母が観客席の最前列で笑っている。私を生んでよかったと、昨日、生まれて初めて言ってくれた母が、私に向かって手を振っている。それだけでもう、十分すぎる幸せだった。そのために私は、今まで食べ続けてきたのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ