表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

生まれ変わったら女王になった〜白雪姫の継母は辛いよ〜

作者: ゆいらしい

林檎をかじった。赤い、赤いリンゴ・・・

私は、その林檎を喉に詰まらせて死んだ。まるで、白雪姫みたい。意識が遠くなりながら考えていたのは童話の物語。なんか、私、バカみたいだなぁ。


目が覚めると、私はピンクに覆われた可愛らしい部屋の大きなもふもふとしたベットにいた。お姫様みたいなフリフリとした部屋は目に毒だ。


「あぁ、奥様!目が覚めたのですね」


メイドさんのような恰好をした女性が泣きながら私を抱きしめる。よくわからないけど、心配してくれてたらしい。


「あー、その。ごめんなさい。」


私自身このまま混乱してたら話が進まないと思って、直球に聞いてみる。「私、記憶が混乱してるの。」・・・だから、私の身辺事情を教えてもらえないかしら?


話を聞いてみると、私はこの王国の女王様らしい。そして、私には娘がいるようだ。


・・・ちょ、タンマ。ごめん、余計に混乱してきた。え、ナニソレ。え、私子持ち?女王?は、え、うん?オウコクって何?


あまりにも唐突すぎる話にもう頭がついて行かず、気持ちの整理をつけるためにもしばらく一人にさせてもらうことになった。ごめんね、私から聞き出したことなのに。


で、一人になったからといって何をするわけでもなくすることもないし暇だから、部屋を観察していた。観察、といってもベットに腰かけてて視界に部屋が見えるというだけだけどね。私、女王様の部屋って初めてみた!当然だ。日本に王様制度はない。


・・はぁ、私死んだのよね?私の家族は既に他界してる。そんでもって、私はまだ結婚してない。要するに、私を心配する家族はいない。けど、仕事・・・。私は幼稚園の保母さんをしていた。子供は好きだ。家族がいない分、朝から晩まで仕事していたから長く一緒にいる分子供たちから懐かれていた自信がある。・・皆元気かな?


死んだと思ったら生まれ変わるわけでもないし、なんか女王様になってるし、子持ちだし・・ていうか、結婚してるし。せめて、恋人の段階から始めたかったなぁ。素敵な結婚生活を夢みてた私からしたら大問題だ。貧乏でもよい、幸せならば・・。この、私の人生理念返せ。なんか泣けてきた。私きっと今ひどい顔してる。・・・鏡見よう。


今度は部屋をまじめに見てみることした。見渡すと何かピンクのもので埋まっている部屋に一部似つかわしくない大きな古い鏡が置かれていた。その鏡を見たら、自分が絶世の美女になってて驚いた。しかも若い。21歳くらい。泣いてても美女は美女だ。「え、ナニこれ魔法の鏡!?」呆けて鏡にむかってつぶやく。


すると、鏡が光った。「いかにも」鏡から声が聞こえた。


ファンタジー設定は女王様だけでおなか一杯です。


「我は魔法の鏡だ。お前に真実を見せよう。」

「で、私のこの別嬪顔は魔法なの?それとも真実マジなの?」


やはり顔はどこの世界でも重要なファクターである。鏡に鷲摑みながら鬼気迫った表情で聞いてみる。「あ、ちょ、壊れる!壊れるから揺らさないで」って情けない言葉は聞き流しておこう。


「で、それで!?どうなのよ?」


「その答えは・・・


鏡の癖に息を整えながら、散々もったいぶってとうとう喋るといった段階で「アンジェええええええ!」とイケメンが遮った。「すまない!私は、気が付かない内に君のことを邪険に扱っていたのだな。すまなかった!君が自殺して初めて君の大切さに気が付いた!」


アンジェ誰た!?私か。・・え、何つまり話の流れ的にこの人王様?つまるところ私の旦那!?アンジェよくやった!!!よくぞこのイケメン捕まえた!結婚生活万歳!・・え、お付き合いから始めるラブラブカップル計画の段階を踏まなくて人生理念に反さないかって?いいの、いいの。ただし、イケメンに限る。で、この王様イケメン。つまり、正義。


「もう、いいのよ。」とキラキラした目線を送る。「私達、やり直しましょ・・


「お母様!!!ご無事でしたのね!」今度は私の言葉が遮られた。多分、私の娘だな。その子は一目散に私のところまで駆け寄った。そして心配の言葉をかける。が、王様の言葉と比べて何か違和感を感じる。・・・あぁ、なるほど。わかった。この子、全然私を心配してない。どちらかというと、焦ってる、のかな。こちとら、あらゆる子供を相手取ってきた幼児のスペシャリスト。子供のウソくらい簡単に見破れる。


さて、穿った目線でこの子を見てるといろいろなことがわかる。


私はこの子に陥れられて自殺図ったわね。で。多分その原因は・・・この子が王様を好きだから。でも親子愛とかそういうんじゃない気がする。幼稚園児の中にも、パパっ子はいっぱいいた。でも、この子からは、こう、生生しさ・・・好きというより愛してる?で、自殺したと思われた母親が生きてて、愛してるパパが妻とのやり直しを図ってて、焦ってる。っいて、感じかな。


「こらこら、白雪姫。ママは安静にしてなきゃいけないんだ。」


私にまとわりつくこの子に王様が注意する。・・・てか、白雪姫!?


物語の世界なの、ここ!


私は、現実逃避として気絶した。視界がシャットアウトする中、私を心配する王様の声と「やっぱり、物語通り進めるべきだったわ。」とつぶやく白雪姫の言葉が聞こえた。





・・・なるほど、王様・女王様・鏡・・どれも物語に出てきそうなキーワードだ。子供たちにせがまれて読み続けて、暗記するまでに至った『白雪姫』の物語か・・・。


思い返すと、悲しい話。


女王様が美しさを求めたのは、王様に自分のことを見て欲しかったからなんだよね?庶民の普通の女の子が王様に美貌をもてはやされて「これから幸せな結婚生活をするんだ」と意気込んでお城にわたって・・・幸せの象徴の子供が出来たと思って喜んだのもつかの間。王様は娘、白雪姫のことで頭がいっぱいになる。きっと、女王様は寂しかったんだ。だから、努力して努力して美しさを求めたんだ。・・・まぁ、もちろん。だからといって、自分の娘殺すのはよろしくないけどね。


王様は、女王様が自殺を図ったことで自分がどんなことをしていたのか気が付いたんだと思う。だから、今までの溝を埋めるかのように優しく甘く私に接している。・・・私はアンジェじゃないのに。アンジェはもう死んじゃったのに。自分のことみたいに悲しくなってくる。


私には家族がいないから。母親の気持ちは理解出来ない。でも、保母として子供を持つ親をたくさん見てきた。我儘をいって母親を困らせる子供だっていた。でも、そんな子供でも母親は嫌な様子を見せず、大切な宝物も持つように子供を抱きしめていた。・・・きっと、アンジェも白雪姫に嫌われていたとしても、白雪姫が原因で自殺するくらい病んでしまったとしても、心のどこかに子供を大切にしてる気持ちはあると思う。



目が覚めた私は、真っ先に鏡の元へ向かった。

「白雪姫はどこにいるの!?」


「・・・。」


さっき無視されたからすねているだろうか?「ねぇ!いいから早く教えてよ!・・・あぁ、もう!じゃあ、こういえば良い?」息を吸い込む。


「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」


さっさと答えて、その子のいる場所を教えてよ。そんな気持ちで聞いた。


「・・・、世界で一番美しいのは、そこにいるあなただ。」


は?


「アンジェ様は美しかった。誰よりも優しくて、強くて・・・。でも、我は自己犠牲が美しいとは思わない。それじゃあ、誰も幸せにはなれない。・・・あなたは、白雪姫を助けに行くんだろ?」


物語通りにいくと白雪姫は一度死ぬ。

私が林檎をもっていかなければ大丈夫だろう・・とは思えない。きっと、白雪姫本人が知ってる。アンジェは白雪姫を殺そうとしない。なら、きっと自分で物語を進めるだろう。王子様がいるから大丈夫といっちゃえばその通りだけど・・・きっと、アンジェは自分の子供がそんな危険なことをするのを嫌がるはずだ。だから、止めにいこうと思った。・・・でも何で、鏡が物語を知っているの?


私が不思議そうにみると「我は、魔法の鏡だからな。」少し誇らしげに鏡が笑った。



鏡に白雪姫の居場所、もとい小人の家の場所を教えてもらって私は駆け出した。お城から出ていく直前メイドたちから「安静になさってください!」って止められたけど無視して走った。ごめんなさい。



森を走っていく・・・が、一向につかない。やばいよぉ、かっこよく飛び出したは良いものの道にまよったようだ。一つ言い訳させてもらうと、私今日までこの世界に暮らしてないんんだから道なんてわかるわけがない!と、ぶつくさいってると悲鳴が聞こえた。


「ぎゃゃゃああああ!!」


それも7人分の悲鳴。「お、女の子が死んでいる!」「どうすれば良いんだ!?」「は・・・110番だ」「違う、119番だ」「お前ら、バカか!死んでから救急車呼んでも意味ねぇだろ」「ちょ、救急車とか生生しい言葉出すなよー。この世界観でさぁ・」「メタ発言やめぃ」


「「「それもそーだなぁ」」」


悲鳴が聞こえた場所まで駆けていくと、女の子の死体を取り囲んで7人の小人たちが和んでいた。「いや、お前らもっとビビれよ!!」私が突っ込むのは仕方ない。


「お姉さん、誰?」「この女の子の友達?」「お姉さん、美人だね!」「僕らとお茶しよーよ」・・・と私を怪しむ声から段々ただのナンパになってきてる。


その雰囲気に感染されてか「あー、ごめんね。私、この子の母親なの。アンジェっていうの、よろしくね。」と死体無視して自己紹介してた。・・・って、あかんあかん。


「え、アンジェはお母さんなの?」「若~い」私は話をまじめに考えようとしてもどーしてもこの小人たちが喋りだす度に話を脱線させられる。あー、どうしよ。どうやって、死体復活させよう。と考え込んでいて気が付かなかった。


「アンジェ危ない!」


え・・・


暴れ馬が私たちの方に向かって走ってきていた。たち、っていうのは死んでる状態の白雪姫と私のことで・・・「あ」と思いつつ私はギュッと白雪姫を抱きしめた。白雪姫は私自信の子供ではなくアンジェの子供であり、私が産んだわけじゃないから自分を犠牲にしてまで助ける必要もないわけで・・・でも、気が付いたら馬から守るように、白雪姫に傷がつかないように・・・まるで大切な宝物を持つかのように抱きしめていた。


多分意味なんてない。

きっと、アンジェの霊的なのが私に乗り移ったか、私生来の子供好きが影響しただけだ。


馬は私達と衝突することなくどこかへ走って行った。ほぅ…と息を吐くと、白雪姫は泣いていた。……。確かに私は白雪姫が死んだということを確認してない。小人達が死んでる!って騒いでただけだ。…なんか妙に殺意湧いてきた。白雪姫が狸寝入りを決め込んでただけで生きてた、という安心感より騙されたという気持ちが強かった。…というのは置いておいて



「なんで、助けたの?」


「私は、お母様を・・いじめたんだよ?」


「・・・だって、私、ママを残して死んじゃって、・・・パパがいないから、私いないとママ一人になっちゃうのに、ママが大好きなのに、気が付いたら新しいママがいて、でも、それは本当のママじゃなくて・・・」


「お母様は美して、優しくて、でも、ママじゃないからって嫌って・・だから、ママと物語みたいに離れ離れになればよいと思って・・・」


泣きながら、子供みたいにたどたどしく言う。

・・・大丈夫。聞こえてるよ。あなたも寂しかったんだね。ママが好きだったんだね。


ママの記憶を持ちながら新しいお母さんが出来たら、びっくりするだろう。パパの記憶がないなら新しいお父さんが出来ても受け入れるのはたやすい。


「白雪姫・・・、白雪ちゃん。私、白雪ちゃんのママじゃなくてお友達になりたいな。私のことはアンジェって呼んで!」


私もこの子と同じだ。いきなりママをやれって言われても無理。出来ない。今回たまたま母親みたいにこの子を守れたけど、次はどうなるかわからない。だって、私痛い思いしながら産んだんじゃないもん。ごめんね、アンジェ・・・。ママにはなれないけど仲の良いお友達は目指すから。


「お友達・・・うん、アンジェお姉ちゃん!!」



私達が小人達に謝罪し終えた後、


「あのー、すみません。こちらで馬を見かけませんでしたか?…っ⁈」


王子様がやってきた。


そして


「なんて素敵な姉妹だ!お二人とも是非私と結婚して下さい!!」


私達は目を合わせる。(知り合い?)(ううん、知らない人)


と、暫くして気がついた。

…この人、王子様だ。


どうやら白雪ちゃんも気がついたらしい。


「さぁ、2人共!私の城へ行こう。結婚式は盛大に行わなくては…!」


「だ、ダメ!私とお姉ちゃんは一緒にパパのいるお家に帰るの!!」


「じゃあ、まずは義父様へご挨拶へ参らなければいけないな!」


「くーるーなぁー」



王子様と白雪ちゃんのやりとりをぼんやりと見つつ、…「あ」と思い至った。


2人は「どうしたの?」とこっちに来た。「なんでもないよー」と返す。


…白雪姫の王子様は死体愛好家ネクロフィリア。私と白雪ちゃんは2人共前世の記憶を持ってる。一度死んだという意識が強いから、…ちょうど王子様の好みに合うのだ。


…何故、王子様がそれに気がついたか、というのは置いておく。


「ほらほら、王子様。君は馬追い掛けなくて良いの?さっき、この道通ったばっかだからまだ遠くへ行ってないと思うよ。」


「あ、いけない!探さなきゃ…」とすぐに行動に移す王子様は良い子だ。


「またね!」と元気に挨拶をする王子様に「もう会わない!」と返す白雪ちゃん。年齢的にもお似合いかもしれない。


今度こそ小人に挨拶して私達は手を繋ぎうちへ帰った。



「あぁ、良かった!心配したよ!」


王様が私達を抱き締めた。

…きっと、今までは真っ先に白雪ちゃんだけを抱き締めたのだろう。


白雪ちゃんは無邪気に笑う。


「改めて…


不束者ですが、よろしくお願いします!」


童話みたいに何もかも人生上手くいくとは思ってない。でも、結末は同じー幸せに暮しましたーってなると良いな!






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ