伝説の調味料マヨネーズ
ちなみに、異世界カンパニーは各種食事処も経営している。やはり日本人とし
て、日本食などを食べたくなるのはしょうがないだろう。世界中のグルメを食べら
れる日本、そんななかで日本人のグルメに対する情熱はかなり高いといえよう。
冒険者時代に各地を巡り、米を発見したり、こちらの世界の食材を食べ歩きした
ことを思い出す。そんな中で調味料を作ったり、入手したりしてレパートリーを増
やしていった。味噌や醤油の発酵に、酒造りなんかにも手をだしていった。
食というのは常に消費されるものである。もし、丈夫な盾を買ったとして壊れな
ければそれだけで取引は終了だろう。しかし、食は常に消費され一度の取引ではな
く継続的に取引が行われる。時にはその丈夫な盾の数倍以上の取引となる。しか
も、その求める者はその食を求める者全てとなる。
この世界に最初にマヨネーズという言葉がお見えしたのは、サラダである。サラ
ダにかかっている奇妙なソースに異世界の人達は度肝をぬいた。その味をもとめ
て、多くの商人や美食家などがそのソースを求めたが誰一人マヨネーズの秘密を知
ることはできなかった。
しかし、それだけではなかったマヨネーズという調味料は他の料理にも使われて
いるのである。大王蛸を使った大蛸焼きにはじまり、海老マヨにも名の通りマヨネ
ーズが使われている。
異世界転生といえばマヨネーズ、たしかにこれには異論はない。そもそも、油と
いうのは脳内麻薬を作るための原料の一つなのだから。しかし、異論をいえば作成
失敗をあまり聞かないというこや、大量に作った後の卵白のことである。もちろん
普通に消費できるものだから、よいのだがもう一工夫欲しい。普通に処理するなら
白い卵焼きを作るか、スープに溶き混ぜるとかが思い浮かぶ。
マヨネーズの基本的な材料は卵黄、油、そして酢である。しかし、その三つでさ
え例えば卵黄の上中下など3種類ずつで9種類できる。そして、その材料の何々鳥
の卵黄、植物油だとしても油のとれるだけの種類や酢も穀物の種類や果実の種類な
ど様々である。そうなったら天文学的な数字になる。
そのうえ、味を整えるのに塩や黒胡椒にマスタードなどもあるし、隠し味に味噌
や七味などを加える事もできる。
最高級のものを作ろうと思えば、最高の卵の産みたて新鮮なもの、油もエキスト
ラバージンなどの最高の素材をつかった新鮮なもの、酢も最高の水と穀物を作った
ものを使うとよい。まぁ、お酢などは古い方が価値が高まったり例外はいくらでも
存在する。
しかし、今回のものは保存性と味を兼ねそろえなくてはいけない。まぁ、いくつ
かの材料をピックアップして安くて、美味くて、長持ちするものができた。食中毒
での評判低下が怖いので、未開封で一ヶ月。開封後は1週間以内ということにして
おいた。
容器に関しては、おいしいポーションと同じスライムガラスを採用した。スライ
ムガラスというのは、スライムとポリミア草とよばれる草などと錬金して作る私の
オリジナルである。ふたはコルクにしておいた。多少は呼吸するだろうが、問題は
ないだろう。本来ならば、コルクに保存の魔方陣を描いてもよいが単価が高くなる
ので却下である。
今回のマヨネーズは美食家達や料理人が大量に押し寄せてきた。他には料理の苦
手な冒険者にもすこぶる好評である。材料の方も養畜もしているし、問題はない。
あまりにマナーの悪い客はきっつい労働が待ち受けている事に違いない。
時を同じくして、メレンゲ焼きというお菓子が流行しはじめた。自由都市にきた
女性はこぞって買い求め、お土産にする人も多いという。
異世界カンパニーの高級レストランでは、コンソメスープという美食の限りを尽
くしてきたというお客達が舌を唸らせていた。
孤児院では味が少しは落ちているけれど、それでも美味しい野菜や肉などと卵白
の料理が登場することになる。この料理には、灰汁が多少あるもののエキュメをし
ない人が多いこの世界では問題はないだろう。そもそも、新鮮な材料を使えば灰汁
も美味しいのである。灰汁を食べさせることすなわち、技量の高さをあらわすので
ある。
ある冒険者が雪山で遭難をした。自らよりも強いモンスターに襲われ、命からが
ら逃げ出したのだが、そのせいで遭難してしまったのだ。食料などはなく、寒さに
震え死を待つのみであった。一応、クエストの報告はしていたので何日か立てば彼
女が捜索隊をむけてくれるかもしれない。
「っへ、オレの命もここまでか。大自然の前には、人間なんてちっぽけなもんだ
な。食料といえば、自由都市で手にしたこれだけか。」
彼は、手に二つのマヨネーズの瓶をもっていた。彼は料理をあまりしないので手
軽に食べれるという理由でこれらを持ってきたのである。
「っふ、そう簡単には死ねないさ。これで命を繋ぐとするか、やれるところまで
あがいてやる。」
そう、奇跡的に彼は助かったのである。彼女も捜索隊も食料が尽きて、なぜこん
なに長い間生き残れたのかと尋ねた。
彼は、いったマヨネーズのおかげだと。後に、マヨネーズのドラゴンキャッチャ
ーが爆発的人気になる。
それに感動した彼女の父親が、今回のことを劇にしたところ超々大ヒットすること
になる。その劇で得たお金で、彼女と彼は高級レストランでコンソメースープを飲
み、新しくできた淡雪羊羹をお土産として買ったのであった。
一方、マスター社長は手作りモギーブを食べながら、感謝の印として送られてき
たチケットで劇を鑑賞していた。あの劇の主演女優、マシュマロおっぱいだなと思
っていた。