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異世界転生券

 ここは、某所にあるクレーンゲームの聖地にある一つのゲーセンである。昨今、


クレーンゲームの景品の種類たるや、とどまることを知らない。そんな中で、まる


どおとぎ話のような伝説があった。


 その幻クレーンゲームには、まさに夢が詰まっているというのである。ある者


は、一流のスポーツ選手になって名声を得たとか、いくら食べても太らない体質に


なって世界中のあらゆるグルメを満喫したとか、超絶になりAV業界で生きた伝説


になったとか、嘘のような話がまことしやかなに語りつがれてきたのである。




 そう、私はついに聖地あるとされた幻のクレーンゲームをみつけたのである。


 「こここ、これがあの伝説のクレーンゲームにちがいない。」


 そのクレーンゲームにはコインを入れる穴がない。その代わりに、一つの注意書


きがある。


 『クレーンゲームの代価は、あなたの命です。景品獲得に成功した場合は命は頂


きません。しかし、失敗したさいには、あなたの命を頂きます。どうぞ夢のような


素晴らしい景品を用意いたしましたので、是非に


挑戦してみてください。』



 なんだか悪魔との取引のようだが、命が代価の分それだけ価値が高い。こちとら


万能オタクですから、クレーンゲームで欲しい景品は自分でGETするタイプなの


で多少ではありますが自信があります。


 クレーンゲームの基本的な技は使えるのですが、やはりその道の人にはかないま


せんけどね。クレーンゲームのアームがどのくらい降りてくるのかや掴む力がどれ


くらいなのかなどを知らないと、勝率はガクッと下がります。しかも、今回はそれ


を調べる事ができない一回きりの、まさに一世一代の大勝負といえましょう。



 最新の人気景品には、一人一つとかの注意書きがありますが、これにはないので


運がよければ何回でも挑戦することができるでしょう。


 「さぁ、いざまいらん。」


 クレーンゲームを挑戦すると決めると、いきなり何かに魂を鷲掴みにされたよう


な感じに襲われました。


 「やばい、やばいめっちゃすべってる。」


 とりやすい景品を狙ったのですが、これはSTOPを押してもぴたりと止まるタ


イプではなかったようです。あぶなすぎます、しかし挑戦したからには途中で抜け


出す事はできません。瞬時に、ミスをリカバリーするように目的を変えます。クレ


ーンゲームは基本は縦と横です。まぁ、360度どんな方向に動かせるやつもある


けどね。


 「えぇぇ、こんどはピッタリ止まるんかい。」


 最終の位置が固定されると無情にもクレーンが下りていきます。機種によっては


降りてくる深度やアームの幅を調整できる機種もあるのですがこれにはありませ


ん。


 「終わった、なにもかも終わった。」


 そんな風に思っていると、奇跡が起きた。


 「うそ、二個どりだ。」


 クレーンゲームでは、なにも1回につきGETできるのは1個ということはな


い。技術や運があれば一度に複数の景品をGETできることもあるのである。


 狙うは易く、成功すのは難し。だれもが、あわよくばと思うものである。こんな


命をかけた一世一代の大舞台でこんな奇跡が起きるなんてまさに天佑である。 



 その時、私の頭の中に不安がよぎる。アームの強さが普通なのに最後の最後でア


ームの力が弱くなり落下するということがいくどとなくあったのである。ゲーセン


でバイトしていたとか、クレーンゲームを作っていたわけではないので、気のせい


かもしれないがそれは確かにあると自分では思っている。


 「あぁ、やっぱりだ。これで私の運命を終りか。」


 案の定、景品をGETする入り口付近でアームの力が弱くなったような気がす


る。二個取りでは普通に想定されているより、景品の重さは重くなり、2個である


ためにバランスや重心がシビアということもある。


 私は運命を受け入れて、目を瞑って運命を受け入れた。その時である、ガタンと


いう音が聞こえた。何が起きたのであろうか。音のする方を見てみると、景品が落


ちている。目を瞑る前と、現在の状況を比較する。


 「これは岩石落とし。」


 技命名には色々とあるが、今回の場合は2個取りしたものが落下して、その落下


物が他の景品にぶつかり、その衝撃で景品出口へと落ちてきたのである。


 「おっしゃー、大逆転だ。」


 もう、絶対に挑戦しないと心に決めて、運よくGETできた景品をみてみる。


 「ん、異世界転生券。なになに裏に説明が、超絶チートはありませんが努力によ


って、ありとあらゆる能力が異世界人よりも成長しやすくなっております。」


 ふむふむ、ようはゲームなんかみたいに経験する事によって成長し、その幅が一


般人よりもありとあらゆることに優れている勇者タイプってことね。


 「チートとしては、現在の記憶の引継ぎとアイテムストレージです。それでもよ


ければ、よければ券を破って下さい。なお、転生後にお使いになっていたPCの処


理やご家族さまなどの問題は解決されるようになっています。」


 なんという親切設計、さてととりあえず知識をもって転生できるなら、色々な異


世界転生小説でも読み漁りましょうかね。しかし、そのとき券が光だしメッセージ


が浮かび上がってきた。


 「な~に~、あと10秒以内に券を破らないと異世界転生券が無効になるって。


どうしようどうしよう。」


 10・9・8・・・・・・・・・3・2・ビリビリビリッ。


 

 

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