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絞殺少女

「アイル! アイルッ!? 良かった生きてたんだ……!」


「ギャアアアアアアアア! 離せ痛い痛いマジ痛いんで離しぎゃああああああああああ!」


バキバキバキッ!


 俺の全身の骨が悲鳴を上げてるんですけど! 何これ怖い!


 ちょ、マジで離してくんないと俺死ギャアアアアアア!


 というか俺の名前はアイルじゃないんですあ、ヤバイこれ死ぬ。



 …………謎の墜落とオオカミ退治を乗り越え、どうやら神殿らしい病室で寝かされていた俺は、突然駆け込んできた謎の少女に締め殺されかけていた。



「よかった、生きていてくれて……」


「ちょ、ちょっとまってメミル! あなたのせいで死にそうになってるんだけど!?」



「……えっ」


 そう言い、“メミル”と呼ばれた俺を抱いていた人物がやっとこさ手を離した。


 制御と支えを失った俺の体が、ベッドの上に倒れこむ。



 ……どうやら、アイランさんが力づくで止めてくれたようだ。


 感謝します、これで安らかに、逝け――


「『ヒール・コア』」


 ……あれ。


「『イクス・ヒール』


 …………お? アイランさんの声が二度聞こえたぞ?


 ……なんだか、体に精気が戻ったような……? なんだこれ……?



 と思って右の方に体を向けた俺は、驚愕した。


「お、俺の腕……?」


 

……俺の腕が……

 

…………俺の腕が、変な方向に曲がってやがるっ! 生物として曲がっちゃいけない方向にっ! 曲がってやがるっ!


 さっきのか! さっき抱かれたときにやられたのかこれ! 怖っ!



「……」


「…………」


「………………」


 と、そこでなにか慈愛に満ちた目でこちらを見るめるアイランさんと、顔を真っ赤にしたメミルとかいう殺人未遂犯と目があった。……あ、メミルが目を逸らしたぞ。


 ……っていうか、なんでアイランさんはそんなに俺のことをそんな優しい目で見つめるんですかね? 正直怖いんですけど?



 そんなことを思っているとは知ってか知らずか、アイランさんはそっと曲がった俺の手を取り……


「ギャアアアアアアアア!! 痛い痛い痛いっ! ぐえーっ!」


 くるっと元の方向に九十度回した後……



「私の教会で死人を出すわけにはいきませんものねっ! いきますよ! 『イクス・ヒール』ッ!『イクス・ヒール』ッ!! 『イクス・ヒール』ッッ!!!」


「ぎゃああああああああ痛いです死んでしまいまギャアアアアアアアア!」


 ――――俺の悲鳴も聞き届けずに、怪しい呪文をなんども唱え続けた。




「……で、アイルって誰?」


「そ、それは…………」


 天使の笑顔をした地獄の治療からなんとか回復した俺は、俺のことを瀕死に至らしめた問題の少女と話をしていた。


 その目の前に座る、問題の少女といえば、黒ずくめの恰好をしていて、あまり良い印象を受けない。見た目は大体12~14くらいで、俺よりも背は10cmほど小さそうだ。ちなみに俺は15才で160cmなので、目の前の少女は1~3才ほど年下の、150cmほどとなる。



 そんな少女が、今俺の前で涙目になりながら事の次第を説明しようとしている。


 服のセンスはあまり良いとは言えないけれども、顔だけ見ればかなりの美少女だ。ここが教会の病室でなければ、俺は多大に悪目立ちしていたことだろう。



「アイルというのは、その…… 私の幼馴染で……」


 まあ、察するに俺のことを似ている誰かと勘違いしたとかそんなところだろう。俺の記憶力はあまりよろしくないので忘れているだけだったら申し訳ないけれども。



「というか、俺のことを吹っ飛ばしたのも、お前?」


 俺は話題を変えて彼女にそんなことを聞いた。


 俺はオオカミに襲われている馬車を守るため、そして今にも飛び降りそうであった少女を見つけ、身を翻らせてその間に潜り込んだ。……潜り込んだのだが。


「そ、それは……」


 なんだか怪しげな呪文と共に、俺の体は宙へと舞ってしまったのだ。近くで聞こえた、恐ろしげな爆裂音と共に。



「それも、メミルだ」


 メミルと呼ばれていた彼女が口ごもっていると、隣に座っていたアイランさんが口を挟んでくる。


 まあ、やっぱりというか、なんというかだ。



 あのとき、俺は少女が馬車から出てくる姿を見た。その姿は、たしかにこのメミルと呼ばれた少女だった。そしてあの怪しげな呪文は、馬車のほうから聞こえたのだ。


 そして、ありえないことかもしれないけれども、俺が思う限りあれば――



「爆発魔法、“イクスボンバー”。中級魔法だな」


 俺の思考を、アイランさんが続けた。



 そう、俺の思う限り、あれは、“魔法”。“イクスボンバー”というネーミングセンスはどうかとも思うけれども、ともかくあれは“魔法”と表記する以外にありえない。


 発達した超能力、という線もないわけではない。けれども、あんな高度な超能力を持っているのなら、とっくに全世界に知られているはずだ。しかも、二人もだ。聞かないはずがない。



 魔法。そう魔法だ。ファンタジー等に登場する、超能力の最終進化系だといわれ、今のところ誰も超能力者の誰も習得できていない、あれだ。


 そんな魔法を扱える、魔法使いが、ここに二人も存在する。



「メミルねえ、あなたはもう高LVなんだから人に抱きつくときにはもっと優しくしなさいよ」


「別に、私はそんなに人に抱きつく人種じゃないし……」


 アイランさんとメミルの声が響く。


 

魔法。魔法使い。そして今しがた聞こえた、“高レベル”という言葉。


 その言葉から察するに――



 いや、あまり信じたくはない。だが、ある意味そう、信じたい。


俺は超能力を使えなくなったわけではなく、“ここ”では使えないだけなのだと。


 

そうだ。たぶん、俺は――



――――あの穴から、異世界に来てしまったのだろう。




「大体あれで回復不能だったらどうするつもりだったのよ?」


「うう…… それは…………」



 異世界、か。それも、超能力が使えない。


「「「はあ……」」」


 三人の声が、重なった。




初戦闘(モンスターとは言っていない)


……お読みいただき、有難うございます。


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