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8月4日 Day.2

相変わらず暑い日々が続いている今日この頃、皆様如何お過ごしだろうか。

俺は苦手な暑さと戦いながら、毎日一生懸命仕事をしている。

朝は早くから料理の仕込みをしたり、店の前を掃除したり、意外にやる事が沢山あるんだ。

でも眠気は朝の静謐な空気を吸えば落ち着くし、体を動かしていればけだるさも抜けていく。

でも忙しいからって鍛練は怠らない、今でも毎日刀と銃には触れている。


……毎日馬鹿が下らない戯言を欠かさないからね。


まったく、その所為で店の壁には刀と銃が掛けてある、いつでもすぐに使えるようにさ。

別にウチはミリタリーショップでもなければ和風の茶菓子を扱ってるわけでもない。

静かで落ち着ける場所を目指した、普通に洋風の喫茶店だ。

本当はこんな物騒な物は店の景観も損ねるし置きたくはない、何より趣味で集めた物は部屋に置きたいのだが……。

だってさ、アンティークな調度品に混ざって日本刀とショットガンが置いてあるっておかしいじゃないか。

最近は見慣れてきて調和がとれてきちゃったから、それが凄い嫌だ。


「おっはよー兄さん、今日も早くからご苦労さん!」


俺は躊躇いなく壁のショットガンを掴むと、素早くショットシェルを装填し、薬室に弾丸を送り込む。

僅か0.5秒の動作スピード、慣れ過ぎた、戦場かここは。

最早見なくても馬鹿の眉間を撃ち抜けるテクニック、片手でも手ブレなし、プロだねこりゃ。

指に力を込める、扉が開くと同時に撃ちだす。

扉が開き、俺はトリガーを握る。


――俺は無理矢理、弾丸の軌道を変えた。


既に発射された弾が銃口から飛び出すよりも速く、銃を上に蹴りあげる。

弾は銃身内でぶつかり、天井に向けて撃ちだされる、あぁ、また電球が割れた。

さて、この始末はどうつけようか。


馬鹿のとった行動は単純明快、要は俺が撃てないようにすればいい。


少しは賢いじゃないか、まさかカオリを盾にしながら入ってくるとはね。

確かにこれでは撃てない。

いや俺は撃ったが軌道を変える必要になった、無茶な動きをしてでもだ。

事実馬鹿は被弾せず、今も驚いた顔でこっちを見ている。


「うわ、撃ってきやがりましたよお兄さん。」

「でも無理矢理当たらないように蹴りあげてるし、相変わらず化け物だなぁ兄さんは!」

「ふむ、蛆の湧いた脳みそで考えた割には賢い回避法だなぁクズ共。」

「でしょ!流石はウチのおつむ、いやいや誉めないで、ノーベル回避賞は後日ね。」

「………だけどさぁ、ちょっとだけ間違えたよなぁ、うん、少しだけ詰めが甘いよ。」


カオリは掴まれていた腕から逃れると、一目散に事務所へと走っていった。


「完璧な作戦勝ちだよ兄さん、負け惜しみは潔くないなぁ。」

「君の低能ぶりは怒りを通り越して哀れみさえ感じるよ。あのさぁ、盾を使うってのは賢いと思うよ、カオリを盾にするのも正解だ、俺がお前らに撃てなくなるからな。でもそこで気付くべきだった、間違えたよなぁお前らは……盾にした人が俺にとっての何なのか、もっと深く考えるべきだった。」


俺はショットガンを壁に戻すと、カウンター席の板を外し、中から彼のブリテン王が振るいし剣を取り出した。


「そんな所に隠し武器が!?」

「さぁて、今日は釣りに出掛けよう。黄泉でバス釣りと洒落込もうか……お前達だけだがなぁ!」




数時間後。


「こんちはマスター、いつもの珈琲……どうしたトシユキくん、その顔は。」

「いえ、何でもないッス……。」

「いらっしゃいませ沢井さん。そこのクズはお気になさらず、どうぞこちらの席へ。」

「彼はまた何かやらかしたのかい?」

「お恥ずかしながら馬鹿の教育不足でして、怖いもの知らずで困ります……そうだなぁ?」


ヒィと小さく悲鳴を上げ、傷だらけの馬鹿がテーブルを必死になって拭きあげる。

沢井さんは苦笑しつつ、俺が淹れたブレンドを飲む。


「うん、やはり朝は珈琲だね。」

「その通りですね、私も朝から暴力ではなく珈琲を楽しみたいですよ。」

「あはは……。そういえば昨日までそこに掛けてあった刀はどうしたんだい?」

「今朝、天寿を全うしましたが…何か?」


沢井さんが身震いしつつ、哀れみの目でホカゾノを見る、黙祷までしてやがる。

さて、そろそろお昼時だな。


「そこのカス、厨房に行って準備しやがれ。涙で味を変えたら……言わなくても判るよな?」


鬱陶しいくらいにわざとらしく走っていく。

チッ、もうふざける程度には回復しやがったか。


それからは忙しかった。


流石にこの時間帯はふざけてる余裕もない、カオリを呼んで五人で目まぐるしく働く。

大体は気が付けば15時を過ぎている。

そろそろ休憩を挟むか。


「そこの馬鹿二人とヒロト、ちょっくら休憩行ってこい。カオリはもう少し待ってくれ。」

「んじゃ~行ってくる~。」

「さ~て煙草だなぁ。」

「疲れた~。」


ぞろぞろと気の抜けた三人が厨房の奥に消えていく、少しは客に気を遣え。

溜め息を吐いた俺を、カオリと一部のお客さんが苦笑して見ている。


「一緒に休憩してきたら?落ち着いてるし、あたしでもどうにかなるよ。」

「…すまん、忙しかったら呼んでくれ、どちらにせよすぐ戻る。」


店をカオリに託すと、厨房へと入る。

厨房の奥の倉庫に裏口の扉があるんだ。

吸い殻を適当にされると厄介だからと、わざわざ吸い殻入れまで用意したスペース。


「いやぁ、それじゃつまんないでしょ!」


ん?

何か会話に熱が籠もってるな。

気配を消して、とりあえず聞き耳。


「そろそろライオットシールドを買ってちゃんと防がないと流石に死ぬよ。」

「いや、それなら鎖かたびらでしょ。不意に斬られても大丈夫!」

「いい加減やめとけば良いじゃん。」


良いこと言ったなヒロト!

てか斬られること前提の会話を初めて聞いたわ、しかも自然な雰囲気なのが謎すぎるだろ。

流石に今日はやり過ぎたか?

頭の何処かが更にいかれたのかもしれない、加減するべきだろうか。


「あ、名案を思いついた。」


……何だか嫌な予感しかしやがらねぇ。


「兄さんの刀を奪えば良いんだ!」


……あん?


「兄さん秘蔵の大典太とか、あの辺りをウチらが構えてたら攻撃できないでしょ、兄さんの破壊力じゃ確実に叩き斬るし!」

「確かに、傷もつけたくないから銃も撃てないな。……どうしたヒロト、どこ行くの?」


無言でヒロトが遠ざかるのを感じる。

流石はヒロト、危険察知が上手くなったな。

そこに居たら無関係でも無事じゃ済まないからさ。


キィ………。


振り替える二人。

最高の笑顔の俺。


「や……やぁ兄さん、に、兄さんも休憩……かな?」

「あぁ、そうだよボブ。ボクはとても疲れているからね、ははは。」

「あ、あはは……ボブ、まさかお兄さんは俺たちの会話を……。」

「ハハハ、まさかそんな……ねぇにいさグハァ!」

「テメェが探してた刀はこれかぁ?」

「あ、相変わらず至るところに隠してあるね…お茶目だなぁ兄さんは。」

「――辞世の句はそれでしまいか?」

「兄さんそれ今世紀最高のギャグ。」

「……滅殺?」

「何で疑問文ー!?」


――さて、今日も変わらない毎日だね。


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