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1月22日 Day.13-10


綺麗に整列した十二人。

誰も彼も傷を負い、激しい戦いの爪痕がありありと伺える。

まぁウチの面子だけは普通に回復しているからおかしな光景だ、常識というかなんというか、まともな人間はいないのか。

だが疲労感は否めないようで、流石に疲れた顔をしている。


「本日はお忙しい中お越しいただき誠にありがとうございました、お陰さまで最高の戦いを見ることができ、私は非常に感動しております!」


割れるような歓声が上がる、誰もが納得する企画だっただろう。

歓声が収まり、市長が話を続ける。


「まさかこんなにも素晴らしい試合が見れるとは夢にも思いませんでした、今は素直にこの武の祭典を誇りましょう。」

「私も一日実況をさせていただき、この市に住まう最強の武人達を間近に感じ、武人の生きざまをまざまざと見せ付けられました。是非とも来年も開催された暁には、再び実況を勤められたらと存じます。また同じく一日審判をして下さった小峰宗十郎さんには深く感謝します。」

「ワシも久し振りに熱い魂を持つ者たちに出会うことができ、ワシ自身も戦うことができた。満足いく一日じゃった。」

「ではここで皆さんも気になっている結果発表と移らせていただきます。第五位からの発表です、呼ばれた方は是非観客の皆さんに手を振ってください!では第五位!並木町の御奈坂緋結華選手!」


歓声が上がる。

緋結華も恥ずかしそうに手を振って、栄光の瞬間を感じていた。

しかし良く戦ったよ、将来が楽しみだな。


「続いて第四位!木野塚町のヒロイキヨシ選手!」

「くっそー、三位以内にいないのが悔しい!」


キヨシは観客に対し槍によるリアクションを返していた、お調子者だな。

まぁキヨシも凄い技の冴えだった、あの連続技は中々美しい。


「続いて第三位!木野塚町のホカゾノ選手!」

「はっはっは!流石はウチ、やはり武神とはウチのことだぜ!」


刀を振り回しはしゃぐ馬鹿、危ないだろうが!

後ろでウザい、殴って止めたら怒られるだろうか。


「さぁ最強を決める戦いの第二位に輝いたのは、木野塚町のヒロイカズタカ選手!そして栄光の第一位は……椿町のシカマ選手だー!!」


粋な計らいだな実況、まさか二人同時に発表することで更に盛り上げるとは。

会場はもう手の施しようがないくらい歓声で埋め尽くされた、まぁ悪い気はしないな。


「両者とも勝利数は同じですが、カズタカ選手がシカマ選手に敗北しております故このような結果となりました!しかし互いに素晴らしい戦いをした事実、また木野塚町には小峰さんというハンデもありました。よってカズタカ選手にも表彰状が贈呈されることとなります。残念ながら優勝の賞金などはシカマ選手所属の椿町のみですが、この誉れは二人に捧げるべきものだと思われます。それでは両者とも舞台に上がってください!」


大歓声の中、俺とシカマは舞台に上がる。

そこには市長と、傷だらけの小峰宗十郎が立っていた。

市長が読み上げる。


「表彰状。貴殿は第一回武道大会において最も強く、最も素晴らしい戦いをし、それに勝利したとして、ここに優勝の誉れを授けるものとする。これからも絶えず研鑽を積み、更なる高みへと昇ることを願う。……おめでとう。」

「ありがとうございます!」

「以下同文。」

「端折りすぎだジジイ、以下もなにも始まりすら言ってねぇぞ。」

「ふん、ワシをこんな姿にした貴様にかける祝辞など持ち合わせておらぬわ!」

「んだとテメェ、なんなら今すぐにもう一度叩き潰してやろうか?」

「ヒロイ落ち着けって。」

「チッ、仕方ないな。」


俺もジジイから表彰状を奪い取り、振り返る。

こちらを見上げている武道家たちと、静かにしている観客たち。


「それではお二人には締めのお言葉を賜りたいと思います。」


俺たちはマイクを渡され、前を見た。

騒ぎたくてウズウズした雰囲気が伝わってくる。

まったく、いい街だよここは。

シカマと笑い合い、皆に笑いかける。


「今日俺たちは、己の武を競い合った!」

「今日オレたちは、鍛えた技を出し切った!」

「思い残すことがねぇくらいに、全力で闘った!」

「更に強くなれる可能性を、皆を通じて学び合った!」

「だが胸に残る思いは同じ!」

「痛みも喜びも、全部含めて!」


俺とシカマは刀と弓を打ち鳴らし、大声で告げる。


『最高に楽しかったなお前らー!!』


溜まった熱気を吐き出すかのように、歓声が爆発した。

拍手、指笛、武器を打ち鳴らす音。

そのどれもが、今日という長い日に相応しい雄叫び。

抱き合って喜びを分かち合う者や、良き戦いに握手する者。

興奮して叫び、あるいは泣き、笑う。


「うひゃあああぉう!」

「ぺぎゃああう!」

「訳分かんねぇ奇声発してんじゃねぇよボケェ!」


本人たちも意味を考えてない奇声を止めるため、俺は舞台から跳び、すかさず抜刀。

間一髪躱した馬鹿共はなおも奇声を発しつつ、右往左往と逃げ回る。


「あばびばべぼぼぼ!」

「うほっ?うほうほ……うほー!」

「黙れっつってんだろうがー!生き恥曝すなカスが、さもねぇと見るも無残に刻むぞ!」

「うぷぷ~。」

「ゲ~スゲスゲスゲスゲス!」

「我流・鋼牙滅爪!」

「マジで技出してきやがった、キヨシ逃げろー!」

「……今までありがとう………ギャアー!」

「キヨシー!」

「喧しい連中じゃの。」

「あれがあいつらの持ち味ですよ、はた迷惑ですけどね。」

「やっぱりフラトレスは賑やかですね~。」

「カズ君頑張れ~。」

「ZZZ。」


俺が二人を叩きのめしたのを見て、実況は楽しそうに言葉を紡ぐ。


「それではこの素晴らしい一日もこれにて終了となります!長い時間お付き合いいただき、皆様本当にありがとうございました!」


最後の歓声が響き、この武道大会は幕を下ろした。

まぁその後は大変だった、まるでアイドルのような人気っぷりだ。

緋結華やシカマを呼んで店で打ち上げをするつもりが、体育館を出たらギャラリーに取り囲まれたのだ、かったりぃ。

早く帰りたい俺と、みっともなくはしゃぐ馬鹿二人。

またも乱闘、学習能力がないのかこいつらは。

適当に殴ったら無視して帰る、流石に疲れた。

何処までもギャラリーが続くからいつまでたっても店に着かない。


「ウチが守ってやるよお姉さん。」

「俺の槍は貴女の心を貫くぜ。」

『きゃ~!』


きゃ~じゃねぇよ、白膜症ですか?ぼやけてイケメンにでも見えてんのか?

或いは難聴で今のウザい台詞が愛の囁きにでも聞こえるんだろう、可哀相なこって。

入り口のベルを鳴らして店に辿り着く、はぁ落ち着く匂いだ、珈琲でも淹れるか。


「おいそこの馬鹿野郎、適当にデザートでも取ってこい!」

「おっけ!出でよたくあん!」

「なぁ死ぬか?今度こそ死ぬか?」

「あっはっは、やだな兄さん軽いジョークですよ?」

「ならばこれだー!出でよキムチ!」

「飲みか?酒をご所望か?」

「うん、酒持って来いホカ。」

「テメェは観客席で死ぬほど飲んで最後寝てたじゃねぇか!」

「騒いでたわりにはちゃんと見てるんだねホカゾノ。」

「ふふん、もっと褒めて良いよ!」

「やめろカオリ、カスが図に乗る。」

「ヒロイ~、珈琲くれないか?」

「あ、マスター私も欲しい!カフェラテで!」

「了解、緋結華は甘いのが良いんだろ?」

「うん、あまあまで!」

「肥えるぞ?」

「マスター………怒るぞ~!」

「女の子には禁句だよカズ君。」

「うわ~兄さん無神経。」

「いくら自分が太らないからって最低だよお兄さん。」

「む、すまないな緋結華。」

「や、そこまで真剣で謝らなくても良いですけど。」

「空気読めよお兄さん。」

「ただのおふざけでしょ?」


あ~殺意湧く。

あまあまのカフェラテとミルク珈琲を四つ淹れて、それぞれの前に置いた。


「ねぇお兄さん?」

「なんだ愚弟。」

「なんで俺の珈琲はないの?」

「へいへいキヨシ、そこは俺らのだろう?」

「うるせえぞ馬鹿。」

「キヨシまで敵に!?」

「俺は分のいい方につく!」

「だが俺は受け入れない。」

「な、何だってー!?」

「ぷぷっ、ざまあ。」

「死ねゴリラ!」

「返り討ちだおチビちゃん!」

「言ってはならぬことをー!」

「ぷぷっ、ぷぷっ。」

「貫くぜ!心臓破りの魔槍(ゲイボルグ)!」

「店を壊す気か戯け!」

「痛いっ!」

「ぷぷっ、ぷぷっ。」

「テメェも黙れ!」

「おふっ!」


いつまでも賑やかに、喧しく、遅くまで騒いだ。

一応緋結華を家まで送り、店を片付けてようやく眠りに就く。

あぁ、最高に楽しい時間だった。

また明日から頑張るとしようかね。


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