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1月15日 Day.13-1


「武道大会…ですか?」

「そうなんだよ、頼めないかな?各街から三人まで参加可能なんだが、この街は年寄り多いからさ。」

「はぁ、俺は構いませんが。」

「ホントかい?良かった、助かるよ。」

「ウチから三人出して構わないんですか?」

「あぁ、そうしてほしい。因みに優勝地域には補助金が出るから、フラトレスには優先して要望が通るようにするよ。」

「それは助かります、頑張らせてもらいますよ。」

「それじゃよろしくね。日時は22日の10時から、場所は市営体育館だから遅れずにね。私たちも応援に向かうよ。」




「以上が事の顛末だ、参加は俺とホカゾノとキヨシで登録した、異論はないな?」

「あるわけない、最高の舞台だ!」

「腕が鳴るぜ!」

「あたし応援に行こう!」

「俺も見に行こうかな。」

「優勝は俺だがな。」

「ははは、お兄さんにしては冗談が月並みだね。」

「ウチが優勝に決まってるのにさ。」

「上等だテメェら、今ここで結果出してやっても良いんだぜ?」

「三人が暴れたら店が壊れるから止めてね。」

「てか普通にヒロイさん優勝だろうな、キヨシが一番早く負けそう。」

「冷静な予想をありがとうヒロト、だが俺は負けないぜ!」

「キヨっちゃん瞬殺して脳ミソスープであさげと洒落こむぜ、グロくて飲まないけどな、あっはっは!」

「貴様、言わせておけば!」

「Then, please return you to work.」

「Okay brother.」

「止めて、ここは日本よ!」

「今の言葉を訳すと「ウチは英語なんて判らないから日本語喋れ!」となる。」

「流石ヒロトくん、適確な説明だね。」

「黙ってろヒロト!」

「いやいや、ホカゾノ馬鹿だろ。」

「流石は馬鹿日本代表、愛国心に満ちた馬鹿っぷりだぜ!」

「よしキヨシ表出ろ、今すぐ出ろ!」

「どうでも良いがお前ら、鍛練は怠るなよ?ウチの従業員として無様な戦いは許さん、必ず勝て!」

「日頃から鍛練してるカズくんは良いとして、ホカゾノ達はサボってるなぁ。」

「一週間もあれば取り戻せるさ、槍の調子も見ないと。」

「ウチも刀出そうかな、そろそろ埃被ってそうだし。」

「ホカゾノ、かなりやる気だろ?」

「表舞台で兄さんとガチバトルなんて中々ないからね、甘く見てると兄さんだって負けるぜ!」

「よく言った、楽しみが増える。正直参加はする気なかったんだ、言われたから出るようなものだ。」

「まぁお兄さん出たら楽しむ前に優勝セレモニーだしね。」

「まさかこんな田舎のカフェに魔神がいるとは誰も思わないでしょ。」

「お前らがやる気出すなら俺も手は抜かない、全力を出そう。」

「カズくん、体育館壊すのだけは止めてね。」

「こいつらが腑甲斐なかったら壊れるかもな。」

「よしホカゾノ、早速鍛練に向かうぞ!」

「そうだな、河原に行くぞ!」

「今日はお前ら休みで良いぞ、呆気なく倒してもつまらないからな。」

「はっ、見てろよ魔神!あんたを倒して俺の武勇伝に箔を付けるのさ!」

「新年あけていきなり兄さんを倒す……むしろ一生もののネタだぜ!」


バタバタと二階に上がっていく二人、刀と槍を取りに行ったんだろう。

珈琲をカオリに任せ、俺は料理、ヒロトは………何処か行ったな、アイツも便乗しやがった。

まぁ二人が暴れすぎないように見に行ったと信じよう、行っても無駄な気もするけど…。


カランカラン。


「こんちはマスター、久し振り~!」

「あぁ君か、文化祭以来かな?」

「あの時はお世話になりました、お陰で大成功!板橋さんにもお礼言っといてもらえますか?」

「了解した、次の仕入れの時にでも言っておこう。」

「てかマスター、来週の武道大会出るってホント?」

「ん?もう広まってるのか?」

「今朝商店街の掲示板に貼られてて、それをみた先生が学校で喋ってた。」

「情報回るの速いんだね~。」

「でも気を付けてねマスター。ウチのクラスの男子が出たかったらしくて、マスター倒せば出れるだろうって張り切ってたから。」

「うゎかったりぃ、まさか決闘でも挑まれるのか?」

「カズくん負けたらダメだよ?でも大人気ないのもダメ。」

「キツい制約だぜ。」

「てかマスターって強いの?ただのカフェのマスターでしょ?」

「まぁそうだな、ただのマスターだ。」

「カズくんがただのマスターだったら世の中大変だね。」

「何か凄そうだね!」

「フラトレスのマスター!俺と勝負しろー!」

「ほらカズくん、外にお客さんだよ?」

「はぁ、マジで来るかよ普通。最近の高校生って案外行動力あんのな。」

「マスター、頑張ってね。」

「やれやれ、かったりぃ。」


俺はエプロンを外すと、面倒だが店から出る。

おいおい、ガチンコ勝負じゃねぇのかよ。

外には20人くらいの高校生が半円を描いて店を囲んでいた、まるでカチコミじゃないこれ。

俺はため息一つ、煙草に火を点けながら問い掛けた。


「えっと、全員珈琲で良いか?」

「要らねぇよ!そんな事より俺たちと戦え!」

「そんな事よりとか言われると俺も商売出来なくなるんだが。」


俺は見に来ようとした緋結華(俺をマスターって呼ぶ女子高生)を店内に押し戻す。


「何すんですかマスター?」

「こいつら結構過激だからな、お前がウチに出入りしてるのが知れたら厄介なことになるやもしれん。とりあえず中で大人しくしとけ、すぐに済むからな。」

「緋結華ちゃんこっちから見えるからおいで。」

「は~いカオリさん。」


さて、どうすっかな。

わくわくした気配は良いとして、あの制約がかったりぃ。

まぁ敗けるなんて全力でお断わりだが、大人気ないってどうすれば良いのかね。


「まぁいっか………なぁ君達。」

「なんだ!」

「かったりぃからまとめてかかってきてくんない?俺も仕事中だからあんま時間取れないから。」

「舐めんじゃねぇ!」

「調子乗んなよ!」

「お前みたいな奴が何で無条件で大会に出れるのか不思議だぜ!」

「それは君達が判断したまえ、俺は口の悪い餓鬼は大嫌いだ。因みに俺を倒したらどうするつもりだったのかな?」

「河原にいる他の参加者も潰して、この中から三人選ぶのさ。」

「じゃあまだ河原の奴等には手を出してないな?」

「あんたを倒したらすぐに行くけどな!」

「やれやれ、勇ましいね。さて、君達に良いことを教えてやろう。」

「何だコラ?」

「アイツらには会わなくて正解だ、何しろ今は鍛練に行ってる。君達がノコノコ行ったら、間違いなく皆殺し確定だよ。」

「俺たちを舐めんな!たったの二人だろ?」

「いや、今からたった一人に潰される程度じゃ荷が重いと言うことさ。」

「上等だコラァ!」

「やっちまえ!」


ヤンキーみたいな金髪二人が勢い良く突っ込んでくる、やれやれ面倒だな。

喧嘩キックを躱すと、首筋に一回ずつチョップする。

人形みたいに崩れた二人を担ぎ上げると、若干ビビり始めてる残りの奴らに放り投げた。


「力の差は判っていただけただろうか?」

「ふざけんな!」

「こいつらの仇打ちだ!」

「へぇ、そこんとこはちゃんとしてるのか。良いぞ、仲間は大事だもんな。」


次々殴りかかってくる高校生の隙間を縫うように歩きながら、確実に一人ずつ気絶させていく。

三分後。

雪の残る地面には20人の高校生が倒れていた。

緋結華が店から出てきて、俺の隣で驚いている。


「マスターってホントに強いんだね。」

「こいつらすぐに起きるからまだ出てくんな。」

「そんな調節までできるんだ。」

「寒い中で放置もできないし、中に入れてやるほどお人好しでもないんでな。」

「そんな事まで考えてたんだ。」

「これだけ何もできずに敗けたら流石に諦めるだろ?少なくとも誰も大会参加を認めない、俺に勝てないなら優勝も有り得ないからな。」

「てかマスター、そんなに武道大会楽しみにしてるの?」

「今回はリーグ戦らしいからな、俺も本気を出せる相手がいるのさ。」

「もしかしてホカゾノさん達?」

「アイツら俺を本気で倒すつもりらしいぞ、そりゃ楽しみにもなるさ。」


凄そうだねと呟いて、緋結華は目の前の光景を眺めている。

つか緋結華ってこういういかにも喧嘩ってのに慣れてるな、もしくは単に肝が太いのか、鍛えたら面白そうだが。

まぁあんまり女子高生に暴力を教えるものでもないか、護身くらいは必要だけど。


「さて面倒も片付いたし、仕事に戻ろうかな。」

「あたしもそろそろ帰るね、課題とか貯まってるから。」

「あぁ課題か、かったりぃよなぁ。」

「それじゃマスター、また遊びに来るね~!」


緋結華が鞄を背負って走っていく。

てかアイツ、何にも頼まないで帰りやがった、無駄に時間食ったな。


「あれ、兄さんだ。」

「何でこいつら伸びてんの?」


振り向くと若干汚れた格好の二人が高校生たちを指差しながら立っていた、ヒロトは雪で奴らを埋めようとしてる、コラやめなさい。


「何か大会に出たいからって俺を倒しに来たらしい、やれやれだ。」

「うゎマジで!?こいつら勇者!?」

「お兄さんをリンチなんて、魔王誘っても辞退するわ。」

「強くはなかったが肝が据わってる、まぁ二度とやらないだろうが。」

「兄さん相手に何度も挑む奴は脳外科行ったほうが良いな、多分そいつ重度のマゾだ。」

「っ………何が起きたんだ?」

「あ、目覚めた。」


雪にまみれた高校生たちがふらふらと立ち上がる。

ヒロトを手招きして後ろに隠すと、俺たちは見下ろしながらトドメの言葉を放つ。


「まだやるか?」

「兄さんばっか楽しませるな、ウチも混ぜろよ!」

「俺はお兄さんみたいに手加減とかできねぇからな、病室予約しとけよ?」

「ヒィ。」

「ビビるくらいなら始めから挑むなよ、戦いを舐めんな!」

「挑む相手を間違えすぎだよ、もうちっと賢く生きようぜ!」

「兄さんに挑むならまずウチらを倒せないと話にならないよ。」

「すみませんでしたー!」


蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく、また嫌な噂が広まりそうだ、まったく迷惑な。


「そろそろ新聞の片隅に載りそうじゃない?魔神が経営する喫茶店、高校生20名返り討ちに遭うって感じで。」

「そんな載り方は嫌だな、客足が減りそうだ。」

「でも原因は兄さんじゃない?」

「俺は被害者だと思うが…。」

「てか意外に大会出たがる人も居るんだな、強さを試したい奴らって多いんだ。」

「もしかしてこれから襲撃が増えるとかないよな、流石にかったりぃ。」

「ここまでするのは稀でしょ流石に。」

「てかヒロイさんなら関係なくない?どうせ一瞬でしょ?」

「まぁあと一週間くらい我慢しなよ兄さん。」

「やれやれ、良い運動になりそうだ。」


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