12月25日 Day.11
「お兄さん、例のブツは確保したんですかい?」
「ククク、当然よ、俺がイベントを逃すとでも?」
「流石はお兄さんだ、キョキョキョ。」
「因みに貴様は確保したのか?」
「いやまだ。」
「ダメじゃん!お前、もう今日だぞ!?」
「いゃあ、すっかり忘れてた。」
「今すぐ買ってこい馬鹿め、さもないとお前だけパーティー不参加な。」
「イエスボス!ド肝を抜かれるハイセンスなプレゼント期待しとけよ!」
「こやつ、自らハードルを上げてきおった。」
「お兄さんはいつもの如くオードブルの準備頼むぜ!」
「たまには手伝っても罰は当たらないぞ。」
「ふふふ、代わりに皆の胃袋に滅びの時が訪れるぜ!」
「キリストの誕生日にポイズンパーティーは嫌だな、せめてプレゼントくらいマシなもん買ってこい。」
「了解、んじゃ任せた!」
「兄さん兄さん、プレゼント買いに行こう!」
「テメェも用意してないのかよ!?もういいよ、二人で行ってこい!」
慌ただしく二人が出ていき、俺は言われた通りにオードブルを作っていく。
肉食が集った面子だ、こんな日くらいはひたすらに肉料理を作る。
まずは定番の七面鳥。
でも一羽を丸焼きよりはもも肉を人数分焼いた方が喜ぶ、意外に一羽じゃ足りないからな。
他には豚バラの焼き肉ともやしのナムルをレタスで挟んだもの、ナムルは俺の自信作だぜ。
鳥の唐揚げも忘れずに。
肉は漬けこんだものをカリカリに揚げたから、味もしっかりしていて美味いはず。
ローストビーフは二つの味で。
ニンニク醤油なら水菜と、おろしポン酢なら葱をトッピングに。
エビマヨとか焼売、きゅうりのたたきニンニクは昔良く行ってた中華料理屋のパクり。
どうせ酒も飲むからシャンパン以外にも、ヒロト専用焼酎各種割ロックアイス。
生ビールに日本酒、タコわさびとかかきの種は流石に作れないから買ってきた、枝豆はここで茹でる。
かなり作ったから意外に時間が経ってる、そろそろ良い時間だし店に運ぼうかな。
各種料理を大皿に盛り付け、崩れないよう慎重に運ぶ。
唐揚げなんて軽く富士山みたいになってる、崩れたら大惨事だな。
オードブルのためにあいつら昼飯抜いてたからな、楽しみにされるのは悪い気がしない。
グラスは店の物で、酒とかはちょっとだけ冷やしとこう。
料理にラップして、厨房を片付ける。
てか……なんか寂しいな。
今になって思うが、あいつら随分選ぶの長くね?
カオリは部屋でクイズの支度中、パーティーの盛り上げ用だし時間もかかるだろう。
ヒロトは朝から居なかった、一体何処に行ったのやら。
むぅ、静かだ。
外は相変わらずの雪が降っている、最近ずっとだしそろそろ移動も辛くなる。
流石にこれだけ降られるとホワイトクリスマスとかはしゃげない、東京にいた頃が懐かしいね。
俺は壁の隠し戸棚から陣太刀を取り出すと、静かに素振りをする。
切なく響く風切り音、すぐに飽きてタバコを吸う。
白い煙が薄暗い店内に広がっていく。
あ、暖房点けとこう、きっとみんな寒そうに来るだろうからね、うん。
部屋は文明の利器で暖かくなっていく、俺の心は寒々と冷えていく。
暇だからと銃をカウンター下の隠し戸棚から出し、分解して整備する。
油を差し、シリンダーを掃除する、はっきり言って地味。
どうせなら全部の武器を整備しよう、はぁ。
カチャカチャと、虚しい音が木霊する。
マガジンに弾を装填し、元の棚に戻すと、ほら寂しい。
てか料理冷めるんですけど!
まぁ冷めても美味いような味付けにはしたけどさ、やっぱ作ったからには早く食べてもらいたい料理人心を察してほしい!
あぁ、なんかやるせない。
「ただいま~!あぁ~さみぃ!」
「おぉ、暖かいぞ!流石はお兄さん、気が利いてるね!」
「チッ、おせえんだよお前ら。」
「すいませんヒロイさん、待たせてしまいました。」
「おぉヒロト、何処に行ってたんだよ。」
「買いたいものが近場に売ってなくて、ちょっと遠出してました。」
「ヒロトが遠出なんて珍しいな、ちょっとプレゼントが楽しみだ。」
すると、ちょうどカオリも店に降りてきて、その手にはプレゼントの包みもある。
さぁ、漸くクリパの開始だ。
俺はシャンパンの注がれたグラスを手に取ると、咳払いをして立ち上がる。
「このクソ寒い聖夜にこうして変わらず共にいられることを、俺は嬉しく思う。」
「いや~兄さん、つまんねー前置きはいいから。」
「そうだそうだ、どうでもいいぞー!」
「腹減った。」
「少しは聴いてあげなよ三人とも。」
「ったく、仕方ない。んじゃ乾杯!」
「うゎ、テキトーだな。」
「気の効いた音頭くらい取れないのかね。」
「何様だお前ら!」
「……パクッ。」
「ヒロト~、もうちょっと我慢しようか~。」
ぐだぐだのままクリパ開始、いい加減見慣れてきたな。
始まるやいなやもりもりと飯を食い始める、未だ育ち盛りなのだろうかこいつら、恐ろしい。
「唐揚げ美味いな!」
「フフン!そりゃそうだろうよ!」
「流石は兄さん、レンチンが上手いぜ!」
「喧しいわ!冷食じゃねぇよ!かなりマジに作ったわ!」
「このローストビーフ美味いな。」
「流石はヒロト、伊達な舌は持ってないぜ。」
「あたしもこれくらい作れたら手伝えるのに。」
「気にするな、俺が好きでやってる事だ。」
「よし、ならあたしはクイズで活躍するよ!」
「おぉ、待ってたぜ。」
カオリが小さなホワイトボードを三人に配り、黒のマジックも渡す。
「正解数が多い人にこの一回だけカズ君を沈静化できるチケット進呈!」
「ま、魔神を黙らせるチケットだと!?」
「欲しい!是が非でも欲しい!」
「悪いことしても一回だけ許されるってこと?」
「そうだ。よって俺は参加しない、お前達三人限定だ。まぁちょっとした俺からのプレゼントだな。」
「あたしが考えたクイズに勝てるかな?」
「面白れぇ、いつでも来いやぁ!」
「フ、ボクの頭脳を見せ付ける時だな!」
「チケットは欲しいなぁ。」
「それじゃあ第一問!五月はさつきとも言いますが、六月は何と言うでしょうか?」
「いきなり訳判んない。」
「ムズくない!?」
「馬鹿を馬鹿にし過ぎ、判るわけがない。」
「おいおい日本人、結構一般常識だと思うが。」
三人とも凄い考えてる、割と必死だな。
「それじゃあ答えをどうぞ!」
「"むつき"、きたろこれ!」
「"睦月"、意外に漢字が書ける俺に刮目せよ!」
「"水無月"、これしか思いつかなかった。」
「ヒロト大正解!正解は水無月、睦月は一月だよ。」
「お前さ、せめて漢字で書けよ。」
「あっはっは、無理!」
「ヒロトが良い感じのスタートを決めました!解説のカズ君、この流れをどう思いますか?」
「これは日頃の行いが勘にまで出ていますね。」
「フフン、マジに答えたら可哀相だから手加減してあげたのさ!ウチの本気はこれからよ!」
「ボクの賢すぎる頭脳が深読みしすぎたようだね、次は加減するよ。」
「さぁ戯れ言は聞き流して第二問!」
「酷っ!」
「カオリさんもお兄さんに似てきたなぁ。」
「世界三大美女と呼ばれるクレオパトラ、楊貴妃ですが、最後の一人は誰でしょう?因みに日本人です。」
「何かこれ知ってる気がする!」
「どっかで聞いたなぁ。」
「これって歴史?」
ホカゾノとキヨシが結構自信満々に書いてる、流石に知ってたか。
ヒロトは、何を考えてるかわからんな。
「それじゃあ答えをどうぞ!」
「"紫式部"、よく紫って書けたよウチ。」
「"紫式部"、ホカゾノと一緒とか嫌な予感しかしないんだけど。」
「"小野小町"、漢字が簡単で良かった。」
「ヒロト大正解!やはり日頃の行いか!」
「あの自信はどうした馬鹿共。」
「いやいや結構いい線いってたでしょ!」
「俺は断然紫式部を推す!」
「お前の趣味などどうでも良いわ!」
「さぁ続いていこうか第三問!これは答えられるはずのサービス問題!UHCトレーのUHCとは何の略語でしょうか?」
「懐かしのマック!」
「元トレーナーを舐めるな!」
「確かにサービスだな。」
マックは略語多いからな、地味に難しい問題かもしれない。
「じゃあ答えをどうぞ!」
「"ユニバーサルホットチョイス"、我ながらそれっぽいな。」
「"ユニヴァーサルホールディングキャビネット"、流石はうつけホカゾノ、馬鹿丸出しだぜ!」
「"ユニバーサルホールディングキャビネット"、トレーナーなら常識だ。」
「キヨシくんとヒロト大正解!ホカゾノ、ホットチョイスって……。」
「ボケのセンスすら感じないわ。」
「うるさいよ!」
「さて三問終わってヒロト圧倒的!やはり日頃の行いが功を奏しているのか!」
「やはりヒロトはこういうとこ手堅いな。」
「ボクの頭脳はこれからさ、やっと暖まってきたぜ!」
「暖まりすぎて茹ってるだろキヨっちゃん!」
「黙れバカゾノ!ブッチギリドンケツの貴様に言われたくないわ!」
「大丈夫、問題は全部で十問あるからまだまだ逆転できるよ~。」
………まぁできるはずがないんだなこれが。
結局終わってみればヒロト8点、バカゾノ0点、キヨシ3点と目も当てられない。
一番チケット使わなさそうなヒロトが勝利し、あまりに無惨な馬鹿二人。
「さ、クリパも佳境だが、そろそろプレゼント披露といこうか!」
「イェア!」
「ヤッホー!」
「イェイ!」
「パーティータイムだな。」
「なお渡す相手はくじ引きで決める、キヨシとかのプレゼントは恐らくハズレだ。」
「失礼な!ちゃんと空気読んでエロに走ったぞ!」
「あぁ、ハズレだ。」
「間違いないな、ハズレだ。」
「聖なる夜にエロって……。」
「まぁいいや、とりあえず引けよ。」
早々にホカゾノがクジを引っ張りだす、相手はカオリのようだ。
「じゃあカオリさん、ウチのプレゼントをどうぞ!」
「ありがとー、では早速。」
「ろくなもんじゃないな。」
ホカゾノはポケットから横長の封筒を取り出すと、カオリに手渡した。
「ディ、ディズニーチケット!?ホカゾノでかした!」
「いつになく真面目なプレゼントだな。」
「せっかくだし兄さんと行きなよ、ペアだから。」
「サンキューホカゾノ、ナイスなセンスだよ。」
「ヤバいよヒロト、ホカゾノが意外に高評価だよ、負けるよ俺たち。」
「いや一緒にしないで、俺も真面目なプレゼントだから。」
「まさか俺だけだと!?」
「馬鹿やってないで早く引けよ、次はヒロトかな?」
「俺のはヒロイさんしか意味がないのさっ!……よしヒロイさんだ。」
「何か期待度上がるな、何をくれるんだ?」
ヒロトはテーブルの下からやたら長い箱を取り出すと、テーブルの上に置いた。
おいおい、マジかよ懐かしい箱だぞこれ。
「青龍堰月刀、わざわざ横浜の武器屋まで行ってきたぜ!」
「ヒロト、愛人になってくれ!」
「兄さんが取り乱した!?」
「いいよ。」
「素直に承諾!?」
「カズく~ん、死にたいの?」
「ありがとうヒロト、大事に使うよ。」
「使われるぞ俺たち。」
「ウチは逃げるぜ!」
そのあとは、カオリからヒロトにブレスレット。
俺からキヨシに革のリュック。
最後はキヨシから、ホカゾノにプレゼント。
「く、よりにもよってこの組み合わせかよ!」
「ウチの台詞だ!何で野郎からエロアイテム貰わなきゃいけない!」
「何故みんなボケなかった!」
「わきまえろアホめ。」
「照れながら渡してね。」
「ヒロトの要求エグい。」
「早くしろよ~。」
「え、えっと……。」
「ちゃんと照れた。」
「やるんだ。」
「やるんだね。」
「照れ方甘くない?」
「こ、これ、受け取ってください!」
かなり引き気味なホカゾノが、明らかピンクな箱を開ける。
………ブゥゥゥゥゥン。
「さぁ、殺ろうか。」
「判ってたけど、結構殺意湧くね。」
「兄さん、刀借りるね。」
「ヒロイさん、銃借りるよ。」
「ちょっ、落ち着けってみんな!」
「冷静だよ兄さんは、青龍堰月刀の威力を試したいだけさ。」
「鉛弾を浴びてね。」
「血の雨を降らせてやるよ。」
「照れるってより後輩の女子だろあれじゃ。」
「一人ツッコミどこ違うじゃんギャアーーース!」
聖なる夜の雪の中、ボロクソにやられたキヨシは棄てられました。
みなさん、メリークリスマス!




