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終わらない戦い

 ミラはとりあえず合流した兵士達と一緒に小屋に戻ることにした。帰路では魔物の大群と遭遇するようなことはなく、無事に戻ることができた。小屋の前にはバーンズ達も戻ってきていた。


 バーンズは顔を上げてミラ達を見ると、わずかに表情を緩める。


「無事だったか」

「怪我人はいますけど、全員無事ですよ」

「そうか。とにかく、まずは怪我人を中に運んで治療だ。手伝ってくれ」

「わかりました」


 二人は負傷していない兵士と協力して、負傷者をバリケード内に運び込む。そうしている間に、ソラが兵士達と一緒に戻ってきた。


「あんたのほうはどうだったの

「壊されそうだったバリケードを直してきたよ」

「ああ、そういうこと。じゃあ、なんとかなったの?」

「とりあえずは大丈夫だけど、そんなに長くは持たせられないと思う」


 ミラは腕を組んでため息をついた。


「カレン師匠は詳しいことは教えてくれないし、魔物はまだまだいるみたいだし、先が見えないのはまいっちゃうね。さっさと本命が出てきて欲しいもんだけど」

「きっと大丈夫だよ」

「ま、そう思ってやるしかないか」


 同じ頃、小屋からだいぶ離れた場所に、危険な雰囲気が漂う場所があった。魔物が何かを守るように立ち並んでいて、その後方には何か人影のようなものが見える。


 そこに上空から一筋の光が飛来し、魔物達を薙ぎ払った。無事だった魔物は素早く動き、光が落ちた地点を取り囲む。


 土煙がおさまると、そこには白銀の輝きを身にまとったカレンが立っていた。カレンは周囲の魔物は気にせず、後方の人影を見すえる。


「言葉がわかるなら、返事をしてもらえますかね」


 カレンの言葉に人影は全く反応しない。だが、魔物達は包囲の輪を狭めてくる。それを見たカレンは軽く息を吐いてから、体を漆黒の鎧で包み、白銀に輝く剣を抜き放つ。そのままゆっくりと前方に歩き出すと魔物が飛びかかってきた。


 その圧力は圧倒的に見えたが、まるで紙切れのようにカレンの振る剣に切り裂かれていった。カレンはそのままペースを落とさずに進み、人影がはっきり見える距離まで到達した。そこでカレンはわずかに眉を動かした。


「ずいぶんと変わった姿ですね」


 変わった姿どころではなく、人影は倒したはずの魔族、アーブレリオナとフィルガロエが半分ずつ混ざったものだった。合成魔族とでも言うべきその存在は、グロテスクな顔でおかしな笑みを浮かべる。


「オメガ様の力だ」


 声は二重に聞こえ、嫌な響きを持っていた。カレンは静かに剣を構え、それとの距離を少しづつ詰めていく。そして後数歩というところまで迫った時、合成魔族が手を上げるとカレンの目の前で凄まじい爆発が起こった。


 しかし、カレンは上空に舞い上がりそれをかわしている。合成魔族はそれを見上げると、その目から熱線が発せられた。カレンは体を回転させてそれをかわすと、そのまま合成魔族に向けて急降下していく。


 そして剣を振り下ろすが、それは見えない壁に阻まれた。それでもカレンは剣をさらに押し込み、その壁との間に火花が散る。


「甘いな」


 合成魔族が口を開くと同時に、見えない壁が実体化し、カレンに向かって炸裂した。直撃を受けたカレンは瞬間的に腕を交差させてそれを防いだが、体は後方に吹き飛ばされる。


 空中で体勢を立て直したカレンは膝をついて着地する。そこに間髪いれずに魔物が跳びかかるが、剣の一振りでそれを両断すると、カレンは低い姿勢のまま地面を蹴って合成魔族に向かう。


 だが、カレンは直前で地面に手をつくと、そこを中心に体を横に回転させて合成魔族の後ろに回りこむ。そして、次は相手が反応するよりも早く、その上を跳び越える。それから着地すると振り返らずに合成魔族の頭に蹴りを放つ。


 それは確実に頭をとらえ、合成魔族の体を一瞬ぐらつかせる。カレンはすぐに足を引くと、そのまま振り返る勢いで剣を横に薙いだ。手ごたえは、ない。


「やはり貴様と戦うのは得策ではないな。ここは、なに!?」


 合成魔族は突然驚いたような声を出した。


「いったん退却なんて、つまらないことはやめてもらいたいね」


 いつから現れたのか、ファスマイドが合成魔族の背後に立っていた。


「貴様! 何をした!」

「別に、転移をできないようにこのあたりに結界を張っただけだよ。気がきいてるだろ?」

「この裏切り者が。何が目的だ」


 合成魔族の言葉に、ファスマイドは実に楽しそうな表情になった。


「僕は誰かに従ったり、どこかに属したりした覚えはないんでね、裏切るなんてとんでもない。ああ、目的なら、こんな楽しいものを中断させたくないってだけさ。わかってもらえたかな?」

「貴様!」

「おっと、君の相手は僕じゃないだろ」


 ファスマイドはそう言って、カレンのほうに意味ありげな視線を投げかける。それまで黙っていたカレンはそれを受けて、剣で合成魔族を指した。


「そうですね。こうなったら、そちらも出し惜しみしている場合ではないでしょう?」


 合成魔族は一瞬だけ呆けたような表情を浮かべたが、すぐに凶暴な笑みを浮かべる。


「いいだろう。お前達の行動を後悔させてやろう」 


 そして、合成魔族の雰囲気が一気に変わった。

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