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一人でやること

 カレンは城を出ると、町を出る方向に向かった。今は町は平和で変わった様子はなく、寄り道をすることもなく素早く町を抜けた。到着したのは、町から離れた人気のない小さな林の中。そこで立ち止まったカレンは空を見上げた姿勢で待った。


 数分後、上空から黒く小さな鳥が舞い降りてきて、カレンが差し出した手にとまった。それと同時に鳥は一通の手紙に姿を変える。


 カレンはその手紙を開いて一読すると、すぐに力を込めてそれを燃やしてしまった。そして、その場をすぐに離れた。


 そしてカレンが向かった先は、かつてタマキと共に闇王と戦った草原だった。戦いがあってから時間も経っていたが、今でも戦闘の跡は残り、近づく者はほとんどいない場所だった。


 その中心あたりまで到着すると、カレンは剣を抜いて地面に突き刺した。すると地面が陥没するようにして、ちょうど人間二人分くらいの穴が現れた。カレンは躊躇せずにその穴の中に飛び込んでいった。


 地下はけっこう大きく、人間が立って歩くには十分なスペースがあった。カレンは抜いた剣に炎を まとわせると、その明かりを頼りに足を進める。そして突き当たりまで来ると、剣を地面に挿して手を離し、壁に寄りかかった。


 一方その頃、ソラはファスマイドの見ている前で壁に結界のための印をつけていた。窓一面だけでもソラだけではどうすればいいのかわからないので、作業は中々進まない。


「いや、そこじゃないよ。ああ、そこも違うね」


 ファスマイドの言葉に従い、ソラは結界を張るためのポイントを修正していく。


「今回は、まず持続時間だね。まあ窓自体を隠す必要はないし、ここはすでに精霊の力で強化されてるから、強度も大して必要じゃない。だからまあ、これでも簡単なほうだね」

「これで簡単なんですか」

「壁に印をつけてできるんだから簡単なんだよ。空中じゃそんなことはできないんだからね。ああ、そこはもっと上だよ」

「はい」


 ファスマイドにいちいち直されながらも、ソラは結界の準備を進めた。ヨウコは後ろからそれを眺めながら、感心したような顔をしている。ヨウコはそれからおもむろに立ち上がり、ファスマイドの隣に立った。


「ずいぶん人に教えるのがうまいのね」

「まあ、これでも自分で一からじっくり覚えたからね。それに別に教えるのは始めてってわけじゃないし」

「ふうん、そうなの。あなたからは色々話を聞きたいところね」

「それは勘弁してもらいたいね」

「そう。それは残念ね」


 それだけ言ってヨウコは自分の椅子に戻った。ファスマイドはそれに軽く頭を下げてから、再びソラの結界作成の指導に戻った。


 そして、その頃カレンの目の前には空間の歪みが現れてきていた。カレンはそれを確認すると剣を地面から引き抜いて、歪みから二歩ほど離れた。


 数十秒後、その歪みから何かの手のようなものが出てきた。明らかに人間のものではない太く鋭い爪を持ったものだったが、カレンは特に剣を構えることもなく、ただその様子を見ている。


 手が出てきた後は腕が出現し始めた。普通の人間の三倍はある腕がカレンの側まで伸びる。カレンはそこでその腕を抱えると、髪の毛と瞳を白銀に染め、上に飛び上がった。


 一気に地面を突き破り、上空に舞い上がったカレンは引きずり出したものを地面に向けて叩きつけた。そして自分はそれから少し離れた場所に柔らかく着地した。


 カレンは引きずり出したものをじっくりと観察する。それは強靭な肉体を持ち、一見したところオーガのようにも見えるが、明らかにはるかに危険な存在なのは明白だった。


 その存在は手を地面について体勢を立て直すと、そのままよつんばいで真っ赤な目をカレンに向ける。それでもカレンは剣を構えず、力を抜いた状態でそれを見ている。


 次の瞬間、魔物の体はカレンに向かって放たれた。その勢いはおそらく城壁をも粉砕するような威力だったが、カレンは地面を蹴って簡単にその突進を飛び越える。


 魔物は地面を大きく削って勢いを殺すと、振り返り再びよつんばいになる。しかし、いつの間にか距離を詰めていたカレンがその腕に剣を振るう。腕は切り裂かれたが、瞬く間に再生しカレンを殴り飛ばそうと振るわれる。


 カレンは体をひねってそれを剣で受け止めたが、その体は大きく弾き飛ばされる。だが、地面を転がるようなことはなく、足から着地して体勢を崩さなかった。


「大体わかりました」


 小声でそうつぶやくと、カレンは剣を白銀の輝きに変えた。魔物は再び突進してきたが、カレンが剣を振ると、それは真っ二つになってその背後に転がった。両断されても魔物の体は蠢いていたが、カレンがその二つに向かって剣を連続で振ると、剣の輝きが刃のような形状になりそれに襲いかかった。


 光の刃が命中すると、魔物の体は消滅していき、後に残るものは何もなかった。


 それを確認したカレンは自分が開けた穴に近づくと、そこから地下の歪みに向けてもう一度光の刃を放った。

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