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師弟関係

 翌朝、ソラは機嫌の悪そうなミラに起こされた。


「たくっ、あの男は何者なんだっての」

「いや、カレン師匠が言ってたじゃないか」

「そういう問題じゃなくてさ、あの態度がむかつく」


 ソラはその反応を見てため息をつく。


「まあまあ、僕はあの人から結界術を教わることになったし、きっと力になってくれると思うよ」

「そう思うなら勝手にやっといて、私は遠慮するから。じゃ、お休み」


 それだけ言うとミラは自分の部屋に戻っていった。ソラはそれを見送ってからヨウコの部屋に向かう。部屋に入ってみると、ヨウコだけが起きていて、恵美はまだ寝ているようだった。ファスマイドの姿は見えない。


「おはようございます」

「おはよう。恵美ちゃんはまだ寝てるわよ」

「姉さんに夜遅くまで付き合わされたんでしょうか?」

「そうみたいね。ミラちゃんはなんだかいらいらしてたようだったし」


 ヨウコは声を出さずに笑った。


「ファスマイド君はどこかにいってしまったようだけど、そのうち現れるでしょ。それまでゆっくりしていればいいんじゃない?」

「わかりました」


 ソラはそれからアランのベッドの隣にいって、いつものように椅子に座ってアランを見守った。今は後ろで恵美も寝ている。


 しばらくそうしていると、ファスマイドが普通にドアから入ってきて、ソラの隣に椅子を持ってきて座った。


「人間の子どもというのはよく寝るね」

「それだけじゃありませんけどね。特にこの子は特別です」

「ま、そういうことなら君のほうがよくわかるか。僕は精霊っていうのはよくわからないからね。ま、それよりも早速結界術について教えてあげようか」

「座ったままでいいんですか?」

「ああ、かまわないよ。さて、結界術っていうのは基本的には魔力を使うものだけど、まあ精霊の力でも問題ないね。得意なほうを選べばいいよ」


 そこでファスマイドは立ち上がり、その場でぐるぐる歩き出す。


「そうは言っても、これは簡単なものじゃない。簡単だったら、一応資料も残ってるんだし、誰もが使うはずだからね。ところが、僕の知る限り、現在これをちゃんと使える人間はいない。例えば」


 ファスマイドは自分の目の前で指を素早く動かした。それから口を動かしたが、ソラには何も聞こえない。それからファスマイドはまた指を動かして口を開く。


「今のは簡易な結界だよ。まあ空中に作るのはちょっと難しいんだけどね」

「どうやったんですか?」

「結界というのは、特定の位置に魔力なりなんなりの力を置いて、壁や盾のようなものを作り出すものでね。この城みたいに城の構造そのものを使って結界を作ったりするものもあるけど、まあ原理は同じだよ」


 そこでファスマイドは一枚のたたんだ布を取り出して、それを自分が座っていた椅子の上に広げた。さらに、その上に小さな駒のようなものをいくつか置く。


「これだけあれば地面を使った結界の練習はできるから、やってみようか。まずはお手本と」


 ファスマイドはまず駒を一つ中心に置き、その周囲にほかの駒をゆっくり配置していった。そして、並べ終えると指を一つ鳴らす。すると、中心に置かれた駒が消えた。


「これは一種の壁を中心に作り出すものだよ。駒を並べるだけで簡単だからやってごらん」


 ファスマイドは配置した駒を崩してから、それをソラに手渡す。ソラはファスマイドがやった通りに駒を並べてみた。


「じゃ、駒に魔力でもなんでもいいから力を込めてみなよ」

「こうですかね」


 ソラは風の精霊の力を使って、わずかな力を並べた駒に力を注いだ。だが、何も起こらない。


「ずれてるね。その手前の駒を少しだけ前に動かして、その隣はもう少し右側だよ」


 ファスマイドの指示通りソラは駒を動かす。それからもう一度精霊の力を注ぐと、今度は中心の駒が消えた。それと同時に拍手の音が響く。


「さすがだね。今のが基本で、あとは目的に合わせて色々なやりかたがあるわけだけど、まあ君なら空中に力を配置するやりかたもすぐに覚えられるだろうね。とりあえず、これが完璧に、できるだけすばやくできるまで練習だ」

「わかりました」


 ソラは素直にうなずくと、駒を崩して最初からやり直し始めた。


 そのままソラは、たまにアランの様子を確認しながら練習を続けていると、いつの間にかファスマイドは姿を消し、恵美がソラの手元を見ていた。


「それはなんなの?」

「おはようございます。これは結界術っていうものの練習ですよ」

「結界術?」

「色々便利なものらしいですよ。中々難しそうですけどね」


 そこでソラは立ち上がって体を伸ばした。


「それより、姉さんが夜遅くまでつき合わせてるみたいですけど、大丈夫ですか?」

「ううん、大丈夫」

「それなら良かったです」

「じゃあ、私は朝食に行ってきます」

「はい。気をつけて」

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