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予告された襲撃

 町のことはバーンズに任せて、カレンは一人で町の外に出ていた。すると、どこからともなくフィルガロエが姿を現した。カレンはその方向に体を向ける。


「確かあなたの目的はエミ様だったと思いますが」

「あんたの相手を私がするってだけさ!」


 フィルガロエが飛びかかってきたが、カレンは素早くその胸元に手を当てた。


「その前に場所を変えましょうか」


 カレンの髪と目が白銀に染まると同時に、胸元に当てた手から光がほとばしり、フィルガロエの体を凄まじい勢いで吹き飛ばした。


 カレンはそれを追って跳躍すると、まだ空中にいるフィルガロエにさらにもう一撃を加えた。そして、誰もいない丘までくると、何事もなかったかのように両者は着地した。


「やってくれる」


 それには答えず、カレンは剣を抜いた。フィルガロエも同時に手をかまえた。


「受けてみろ!」


 そこからカレンに向かって巨大な氷の牙が放たれた三発放たれたが、カレンはそれを全て剣で打ち落とした。フィルガロエはカレンの真上に飛び上がり、今度は小さな氷の牙を雨あられと降らせた。


 カレンがそれに向かって剣を振ると、その圧力で小さな氷の牙は全てそれてカレンの周囲に着弾した。フィルガロエはカレンの背後に着地し、振り返ると笑った。


「大した力じゃないか。このもらった力、使わせてもらうよ」


 そこでフィルガロエの雰囲気が変わった。


「なるほど、それが例の悪魔の力というわけですか」

「そうだ!」


 言葉と同時に、フィルガロエの背後に数百発の氷の牙が出現し、一斉にカレンに襲いかかる。轟音と土と氷が混ざった煙が発生したが、カレンはその上空に飛んでいた。


「こちらも、いきますよ」


 カレンがつぶやくと、その体にまとうレザーアーマーが闇に覆われていった。白銀に輝く髪、目、翼、剣、そして漆黒の鎧をまとう、神々しいとも禍々しいとも形容できる姿がそこに現れた。


 フィルガロエはそれに向かってさらに氷の牙を連続放つ。だが、カレンはそれにかまわず一気に降下した。


 氷の牙はカレンに命中したが、その体を傷つけることなく砕け散る。カレンは空中で一回転して、フィルガロエに向かって蹴りを放った。その蹴りは空を切ったが、カレンはやわらかく着地して、後ろに飛び退いたフィルガロエに輝くナイフを投げた。


 フィルガロエは氷を盾のように発生させてそのナイフを弾いた。しかし、そこにカレンが真上から剣を振り下ろす。氷の盾は真っ二つになり、フィルガロエに剣が迫る。


「クソッ!」


 なんとか身をよじりそれをかわそうとしたが、フィルガロエの肩が浅く切り裂かれた。カレンはそのまま体を回転させ、斜め上からフィルガロエに向かって踵を落とした。それは腕でガードされたが、威力は十分で、フィルガロエは地面に叩きつけられ、地面を掘り起こしながら進んだ。


 カレンは着地すると剣を構え、フィルガロエが止まった場所を見据えた。その視線の先、地面が盛り上がり、フィルガロエが飛び出した。


「貴様! 許さんぞ!」

「何を許そうと言うんですかね」


 カレンはわずかに口を歪めた。それが聞こえていないフィルガロエは両腕を広げる。すると、その体を中心として、氷の塊が形成されていった。


 そして、その切っ先がカレンに向けられ、一瞬で加速をした。だが、カレンはその場から動かず、剣を逆袈裟に振り上げた。


 なんとも言えない甲高い音が響くと、カレンの背後で氷の塊が砕け、フィルガロエがその場に倒れた。


 カレンはそこにゆっくりと歩いていき、剣をフィルガロエの胸元に突きつけた。


「何か有益な情報でもあれば、聞かせていただきたいところですね」

「そんなことを、言って、私に何の得がある」

「悪魔と手を切っておとなしくしているというなら、見逃すことも考えましょう」

「はは、アハハハハハ! それは傑作だ!」

「おかしいことではないでしょう。魔族と言えども、命は惜しいものだと思いますが」


 その一言にフィルガロエは自嘲気味の歪んだ笑顔を浮かべた。


「慈悲深いことだな」

「そうですね。私もそう思います」

「たかが人間が生意気なことを、ほざくな!」


 フィルガロエはカレンに手をむけ、氷の牙を放つが、それはカレンの拳であっさりと打ち砕かれた。だが、その隙にフィルガロエは転がってカレンと距離をとってから、立ち上がった。


「残念です」


 カレンは一瞬のうちにその距離を詰め、剣をその体の中心に突き刺した。そして、左手をフィルガロエの体に添えると、そこから闇を一気に放出してその体を包み込んだ。


 断末魔も残せず、フィルガロエは闇に飲まれてその姿を跡形も無く消した。後に残ったものは、残滓と言えるわずかな光だけ。


 カレンは普通の状態に戻ってから、剣を鞘に収めた。


「これで、こちらはとりあえず大丈夫でしょうか」


 しっかりとした足取りで町の方に戻りだした。

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