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ロベイル王国首都

「何か見つかったか」


 サモンの声に、ベッドに座って目を閉じていたタマキは息を吐きながら目を開けた。


「いや、はっきりとはわからない。まあ怪しい感じのところは何ヶ所か見つかったけどな」

「それで、どうするつもりだ」

「そうだな」


 タマキは立ち上がって室内を見回した。そこそこの宿の一室なので、それなりの広さがある。


「とりあえず、次は人から情報収集だ。あの鳥さんは便利だけど、何を探すかわかってないと駄目だしな」

「わかってるなら最初から楽をしようとするな」

「はいはい」


 タマキは生返事をして部屋を出た。下の食堂件居酒屋にはまだ今の時間ではあまり人はいなかった。


「ここは夜だな」


 それだけつぶやいて宿を出た。


 そして向かった先は町の中心にある公園。今は露天がたくさん出店されていて、多くの人で賑わっていた。


 タマキはとりあえずテーブルと椅子を並べて軽食を売っている店に行った。なにやら色々並んでいる。


「なにかおすすめは?」

「はいよ」


 店の親父は串に刺さったフランクフルトみたいなものを差し出した。タマキは硬貨と引き換えにそれを受け取って、適当なテーブルまで行って椅子に座った。


 それから周囲の会話を聞くことに集中した。


「あの噂聞いた? 最近はこの町にも魔物が出るとか」

「聞いた聞いた、なんでも夜のアッパータウンを魔物がうろついてるらしいじゃない」

「まったく、警備兵は何をしてるんだかね」

「これは面白そうだな」


 それだけつぶやくと、タマキはフランクフルトを一気に食べて立ち上がり、そこらへんの通行人にアッパータウンまでの道を聞いた。


 そして目的地に到着してみると、そこはそれなりに高級な住宅街で、警備の兵士が巡回もしていた。


 タマキはそこをざっと歩き回って様子を見てから、ベンチに腰かけた。


「おいサモン。お前は何か感じたか?」

「なにやら魔力の残滓はあったようだが、それだけではなんとも言えんな」

「じゃあ、夜になるまで待ってみるか」

「おい、そんなことが目的だったのか?」

「いや、違うけど。まあ面白そうじゃないか」

「相変わらずもの好きなことだ。まあ我はかまわんがな」

「じゃあ、適当に宿に戻って夜にそなえないとな」


 それからタマキは町を少しぶらついてから宿に戻った。


 日が完全に落ちるまで部屋で昼寝をしてから、タマキは下に降りていった。さっきとは違って、今は多くの人でごった返していた。


 タマキは適当な席に座って、飲み物を注文してから隣の若い大工風の男に声をかけた。


「仕事帰りかい」

「え、ああ。あんたは?」

「俺は旅をしてるんだ」

「へえ旅か。それは面白そうだ」

「まあ、それなりに楽しいけどね。それより、最近この町の中に魔物が出るって噂を聞いたんだけどさ」

「ああ、アッパータウンの話か。特に被害は出てないみたいだし、警備のほうもあんまり力いれてない雰囲気だな」

「ふーん。なんか他にはおもしろそうな噂はないかい?」


 そうしてタマキはしばらく男と話してから宿を出た。夜の町は人通りが少なく、何となく怪しい雰囲気が漂っている。そんな中をタマキは黙ってアッパータウンのほうに向かった。


 アッパータウンでは警備兵が巡回していて、タマキのような旅人がうろつくのはあまり都合がよくなさそうな雰囲気だった。


「これは上から行くか」


 そうつぶやいて、タマキは辺りを見回して人がいないのを確認すると、手近な家の屋根まで軽やかに飛び上がった。


 そのまま音もなく屋根から屋根に飛び移って、一番背の高い家の屋根の縁に腰かけた。


「さて、何が出るのか楽しみだな」

「どうだろうな」


 そして、それなりに時間が経ち、すでにほとんどの住人が眠りについた頃、タマキは何かの気配を感じた。


「やっとお出ましだな」


 そうつぶやいてからタマキは立ち上がると、気配を感じた方向に跳躍した。数分後、入り組んだ路地でタマキは噂の魔物と対峙していた。


「こいつは、いわいる狼男ってやつか?」

「ああ、ウェアウルフだな」

「確かすごいタフな奴だよな」

「この世界の奴にしてはな」

「で、元は人間か」


 サモンとのんきに会話するタマキの前のウェアウルフは、口からよだれを垂らしながらタマキのことを威嚇するように低く唸っている。タマキはそれにたいして、挑発するように手招きをした。


「来いよ、狼さん」


 それに応じたのか、ウェアウルフは地面を蹴ってタマキに跳びかかった。


「バースト!」


 タマキの手から放たれた爆発でその突進は弾き返された。その勢いのまま壁に叩きつけられたウェアウルフだったが、まるで何事もなかったかのように立ち上がった。


「なるほど、タフだな」


 タマキはそうつぶやいてから、手をその方向に向けた。


「マシンガンライトニングボルト!」


 小さな雷の矢が連続で放たれ、次々とウェアウルフに着弾した。だが、それをものともしない感じで、ウェアウルフは前進する。


 そして、雷の矢が途切れたタイミングで前方に勢いよく跳躍しようとした。


「おっと、そいつは遠慮してもらおうか」


 いつの間にかその背後にまわっていたタマキがウェアウルフの背中に手を置いた。


「プロテクション! 反転!」


 魔力で作られた盾がウェアウルフの全身を覆い、その動きを拘束した。


「さてと、ここじゃ人が来るだろうし、場所を変えようか」


 そう言ったタマキは、屋根の上に跳んでからウェアウルフの体を魔力を使ってそこまで引っ張りあげた。


「後はこいつが人間に戻るまで待てばいいわけだな」

「さっさと始末すればいいだろう」

「それじゃ面白くないし、俺は人間を殺す気はないよ。それに、こうなった事情は知りたいしな」

「まあ好きにしろ」

 タマキは屋根の上に座って、じっくりと待つことにした。

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