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新しい力

「バーンズさんはそっちをお願いします! 僕達はこっちを相手にしますから!」

「わかった、頼んだぞ」


 バーンズ、ミラとソラに分かれてローブの者と対峙した。ジャドは後ろに下がってミラとソラを見守るような位置に立った。


 まず、バーンズが踏み込んで剣を正面から打ち下ろすが、ローブの者はそれを後ろにステップしてかわす。同じようにミラも切り込むが、それも同様にかわされる。


 そして、二人のローブの者は宝石のようなものを同時に取り出した。


「オメガ様、力を」


 フードの奥の目が怪しい鈍い光を放った。一気にその二者の存在感というべきものが増し、それと対峙するバーンズ達は緊張を強めた。


 数秒後、その二者は地面を蹴ってバーンズとミラに突進した。二人はそれをかわさずに剣で受け止めた。バーンズは一歩下がったくらいだったが、ミラは四歩ほど押された。


 だが、バーンズはそこでカードの力、バーストを発動させてローブの者を吹き飛ばした。そしてカードを素早く入れかえる。


 剣が雷をまとい、横殴りに振るわれる。雷が飛び、ローブの者に直撃するが、それはフードとローブの一部を消し飛ばしただけだった。


 そこにあったのは、白く濁った目をした若い男の無表情な顔だった。バーンズはその意志のない表情に危険なものを感じた。


 それ以上考える暇はなく、男は再び突進してきた。バーンズはそれを横にかわしながら、男の胴を剣で薙ぎ払う。男の胴は大きく切り裂かれたが、男が体勢を立て直すと、それはすぐに再生してしまった。


「化物か」


 バーンズはつぶやきながらスロットのカードを入れかえ、剣に炎をまとわせた。


 その後方では、バーンズの戦いとミラとソラが攻撃をしのいでいるのをジャドが冷静に見ていた。敵は明らかに魔族や悪魔に属するような力を使っている。そして、さっき言ったオメガ様という言葉。ジャドは自分の記憶の中にそういう名前の悪魔がいるかどうかを必死に考えた。


「オメガ、そうか! 確かオメガデーモンとかいうのがいたはずだ」


 名前は思い当たったが、その悪魔がどんなものなのかはジャドの記憶の中にはなかった。しかし、悪魔の力を使っているというのは間違いない。


「みんな! そいつらはおそらく悪魔の手先で、その力の一部を与えられているぞ!」


 それを聞いたバーンズは、対悪魔、魔族用というファントムクラッシャーのカードを思い浮かべたが、今の段階で使うのはまだ早いと判断した。


 そして、ミラは瞬時にジャドのアイデアというものを実行するのを決心した。


「兄さん! ちょっとの間でいいからこいつを引きつけておいて!」

「わかった!」


 ジャドは勢いよく返事をして、ミラの前に出ると、手に持っていた小さな石のような物をローブの者に向かって投げつけた。それは爆発して煙を噴出し、視界を遮る。


「ソラ! 私の剣に精霊の力を!」

「わかった! 火の精霊よ!」


 ソラが剣に向けて手をかざすと、ミラの剣の刀身を炎が包み込んだ。そこでミラが剣を握る手に力を込めると、その炎が柄の方に移動していき、剣を通じてミラの体に流れ込んでいくように見えた。


「くっ!」


 その流れ込んでくる力に、ミラは顔を歪めた。ソラは思わず手を引こうとする。


「いいから続けて!」


 ミラの怒鳴り声で、ソラは引こうとした手を止め、再び剣に精霊の力を注ぎ込むことに集中する。その前方では、ジャドは短剣と最初に投げた石でなんとかしのいでいるが、明らかに追い詰められていた。


 ミラはそれを見てさらに剣を強く握った。


「おおおおおおおおおおお!」


 炎の熱気よりもさらに激しい咆哮が響くと同時に、剣を包み込んでいた炎が一気に剣を伝ってミラの体に吸い込まれた。後に残ったのは白く強く輝く剣と、それまでとは明らかに違う、全身に何かの力を漲らせたミラの姿だった。


 そして、ジャドを追い詰めようとしているローブの者に向かって、一気に跳んだ。その勢いはまるで放たれた矢のようで、そのまま激突し、ローブの者を大きく吹き飛ばした。


 ミラは自分の勢いをまだうまく制御できないようで、体勢を崩しながらもなんとか膝を地面について、勢いを止めた。ジャドはそれを見て、思わず手を叩いた。


「うまくいったな!」

「下がって!」


 だが、ミラは振り返ることなく叫んで、起き上がったローブの者に近づいていく。ローブの者は勢いをつけてミラに拳を叩き込もうとしたが、それはあっさりと受け止められ、拳が焼けるような音がした。


 そこにミラの剣が袈裟切りに振り下ろされ、ローブごとその体が斜めに切り裂かれた。ミラはそこから拳をつかんでいた手を放すと、今度は両手で剣を持ち、そのローブの中心に鋭い突きを繰り出した。


 剣は深々とローブの者の胸を貫き、フードが取れたが、その下の若い女はにやりと笑った。だが、ミラはそれに怯まない。


「火の精霊の力よ!」


 声と同時に剣から炎が噴き出し、女の体を凄まじい勢いでおおった。女は言葉は発しなかったが、もがいて体に刺さった剣から無理矢理体を引きはがした。


「風よ! 切り裂け!」


 そこにソラの放った風の刃が襲いかかり、さらにその体を切りきざんだ。すると、その動きは止まり、あっさりとその場に崩れ落ちた。


 それを確認したミラは、その場で崩れ落ちそうになったが、なんとか剣で自分の体を支えて、バーンズのほうに視線を移した。


 バーンズは氷の刃を飛ばして男を足止めして、カードを入れかえたところだった。そして剣をかかげると、まるでその剣から雷が天に昇るように見えた。


 それでも男はバーンズに突っ込む。


「ライトニングスラッシュ!」


 気合と共に雷の剣が振り下ろされ、男を直撃した。その一撃で雷は四散したが、男は倒れ、その体からは煙が立ち昇っている。バーンズはそれに近づきながらカードを入れかえた。


 立ち上がろうとする男の目の前で剣を振り上げると、それが光の粒をまとい始めた。


「ファントム、クラッシャー」


 静かな声でそう言って、剣を振り下ろした。真っ向から切られた男は、目を見開き、切られた場所を中心として光の粒に変わっていった。

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