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考えられていた事態

 与えられた部屋でミラはベッドに座って剣の手入れをしながら、さっきの戦いを思い出していた。バーンズは元々強いのだが、あの剣を使われると、一人では勝てる気がしない。しかも、まさかあの剣の力だけで吹き飛ばされるとは思わなかった。


「おーい。俺だ」


 ジャドの声がしてドアがノックされた。ミラは剣を鞘におさめてからそれを持ったままドアを開ける。


「何?」

「ちょっと話があるんだよ」

「はいはい。どうぞ」


 ジャドは無事に室内に迎え入れられ、椅子に座った。ミラはもう一度ベッドに座って、ジャドの話を聞く態勢になった。


「さっきの剣はとんでもなかったな」

「まあね。あんなにすごいとは思わなかった」

「で、俺のアイデアならあれくらいの力を出せると思うか?」

「まあ、あそこまで万能じゃないけど、いけるんじゃないの」

「じゃあ、やる気になったのか」

「本腰を入れてやってもいいかもね。でも、あの訓練場とかじゃ危なくて試せないけど」

「そういうことなら、早速明日から始めるぞ。俺はソラのほうにも言ってくる」


 ジャドは部屋から出て行った。ミラはそれを見送ってから、剣をつけてバーンズのところに向かった。


 バーンズは兵舎の自分の部屋で剣の手入れをしているところだった。ミラがノックをして声をかけると自分でドアを開けてミラを迎え入れた。


「どうした?」

「その剣についてもっと知りたいと思ったんですけど。まだ使ってないカードとか」

「ああ、それならこれで全部だ」


 八枚のカードが机の上に並べられた。そしてバーンズはカードを四枚ずつにわけて、まずは左側のほうを指差した。


「この四枚は順番にファイアソード、アイスソード、サンダーソード、バーストソードと名づけられている。基本とも言えるカードで、これはそれなりの時間、複数回使える」

「でも、どれも威力はありますよね」

「ああ、そうだ。そしてこっちの三枚は威力はあるが、一度に一回しか使えない。順に、ライトニングスラッシュ、メテオスマッシュ、トルネードスラッシュ。タマキ様が使う伝説級の魔法がベースになっているな」

「じゃあ、後の残りの一枚はなんですか」

「ファントムクラッシャー、そういう名前がつけられている。対悪魔、魔族用ということらしい」

「はー、すごい多彩さですね。私も負けてられません」

「そう言うということは、何か新しい技でもあるのか?」

「まあ、まだ完璧じゃないんですけどね」


 ミラがそう言って首をかしげると同時に、ドアがノックされ、一人の兵士が入ってきた。


「バーンズ様、ご報告が」


 兵士はミラを見ると少し戸惑ったような表情を浮かべた。


「かまわん。続けてくれ」

「は! 巡回から不審な者を発見したという報せがありました」

「どういうことだ?」

「それが、村人からの通報で巡回の者が駆けつけて、その者を拘束したそうなのですが、その駐屯所からの連絡が途絶えてしまったのです」

「そうか。その場所は」


 バーンズは兵士の答えにうなずきながら、このことに関して嫌な予感を感じた。


「では、私が行こう。ミラ、ソラを呼んできて一緒に来てくれ」


 ミラがうなずいたのを確認してから、バーンズは兵士に向き直った。


「各駐屯所に守りを固めるように連絡を頼む。怪しいものが現れてもこちらからはしかけないようにするんだ」

「はい! しかし、バーンズ様は?」

「心配するな、この剣の力を使うには少人数のほうが都合がいい」

「了解しました!」


 兵士が出て行ったのを見送り、バーンズは立ち上がった。


「城門で待っている」

「はい。すぐに行きます」


 数分後、装備を整えたミラ、ソラ、それにジャドもバーンズの待つ城門に集まっていた。


「よし、ではすぐに連絡が途絶えたという駐屯所に向かう」


 バーンズはそれから馬を四頭用意させ、一行は急いで例の駐屯所に向かう。現地に到着してみると、不自然な沈黙がその場を支配していた。


「何かおかしい。用心しろ」


 バーンズはそう言ってから馬から降り、背中の剣を抜いた。ミラも同じように剣を抜き、ソラは杖を構える。ジャドは腰に下げた袋から何かを取り出して、その手に握った。


 不気味な静けさの中、四人がゆっくりと駐屯所の建物に近づいていると、その中から二つの影が出てこようとした。


「何者だ!」


 バーンズの大音声が響いたが、その影は何の応答もせずにゆっくりと姿を現した。それはタマキやカレンは何度か遭遇している、フードつきのローブをまとった者達だった。それが同時にバーンズ一行に突っ込んできた。


「風よ!」


 ソラが風の精霊の力でそれを止めると、その両者は後ろに飛び退いた。


「もう一度聞こう。何者だ」


 今度は大声ではなく、低く良く通る声でバーンズが告げるがローブの連中はそれに従う様子はない。それを見て、バーンズは剣のスロットにカードを入れた。


「これがタマキ様の懸念していたことなのか」


 そうつぶやいて、スロットを元の位置に戻し、カードを発動させた。

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