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悪魔の分身

 剣を構えるカレンにたいして、ローブの者はフードを取った。その下にあったのは仮面ではなく、顔に刺青のある若い女の顔だった。


「お前は邪魔だ。消えてもらう」


 無表情のままの低い声の一言に、カレンは軽く首をかしげた。


「できれば理由も聞かせていただきたいところですね」


 その問いかけに、女は無表情のまま腰に下げていた皮袋を手に取り、その中から小さな宝石のようなものを取り出した。


「オメガ様、力をお授け下さい」


 宝石をかかげると同時に女は浮き上がり、その体が内部からわずかに膨張したように見えた。その体が地面に落ちると、あきらかにおかしい重みのある音がした。


 そして、女、だったものが顔を上げると、その目は死んだ魚のように、白く濁っていた。


「話は、聞けそうにありませんか」


 カレンはため息をついてから、あらためて剣を構えた。次の瞬間、女は突進してくる。カレンはそれを軽くかわしてから、後ろに下がって距離をとった。


 女はすぐに振り返ろうとしたが、そこには刃の形をした炎が襲いかかる。だが、それは腕の一振りであっさり霧散してしまった。


「簡単にはいきませんか」


 カレンはつぶやいてから目を閉じて、再び突進してきた女をかわしてから、目を開いて白銀の輝きを見せた。


 女はこりずにもう一度突進してきたが、カレンは今度はそれにたいして、剣を持っていないほうの腕を突き出して、止める。わずかに押されたが、女の突き出した腕をしっかりとつかんで、その勢いを殺していた。


 そのつかんだ腕を引き込んで、カレンは膝を顔面に叩き込もうとしたが、女は無理矢理腕をもぎ放しながら後ろにさがってそれをかわした。


「やはり貴様は」


 女がそれまでとは違う声で何かを言おうとしたが、カレンはそれを待たずに踏み込んで白銀に輝く剣を振り下ろした。


 左腕が飛んだが、女は動転することなく後ろに飛び退くと、すぐに腕を再生した。それを見てカレンは軽く首を横に振った。


「どうにも人間を簡単に捨てるのは感心しませんね」


 もう一度カレンは踏み込んだが、女はそれを上に飛び上がってかわした。カレンはすぐに白銀の翼を展開すると、それを追って飛んだ。


 だが、女は上空からカレンに向かって衝撃波を放つ。それをまともに受けたカレンは上昇した以上の勢いで地面に叩きつけられた。


 土煙が立ち上り、カレンの姿が見えなくなったが、その中から女に向かって闇をまとった何かが飛んだ。それは女の右肩を飲み込むようにして抉り取った。


 さらに、飛び出したカレンは女の胴を剣で薙ぎ払おうとする。女はそれをなんとかかわしたが、そこにカレンの蹴りが上から襲いかかり、直撃を受けた女はバランスを崩して地面に向かって落ちていった。


 カレンはそれを追って、女が地面に墜落すると同時にその胸元に剣を突き立てた。しかし、女はなんともないような様子でカレンの腹に蹴りをいれた。カレンは剣を抜きながら衝撃を逃がすように横っ飛びをしてから、剣を構えなおした。


 女はゆっくりと立ち上がり、刺された部分を撫でると、傷はあっという間に埋まった。だが、右肩の傷は直りが遅い。それを見たカレンは軽くうなずいてみせた。


「大した力ですね。その力を与えたオメガというのは何者ですか?」

「全てを支配するお方の名だ。貴様がそれ以上知る必要はない」

「話していただけないのなら、用はありません」


 そこでカレンは一気に女との距離を詰める。そして右手で剣を振り下ろすが、女はそれを半身になってかわす。だが、カレンはそこに闇をまとわせた左手を叩き込んだ。わき腹にカレンの突きをもろにくらった女は吹っ飛んで地面を転がった。


 カレンは剣を掲げ、そこに巨大な闇の塊をまとわせた。そして、膝をついて立ち上がろうとする女に、それを正面から振り下ろす。


「そんなもの!」


 女は振り下ろされる剣に向かって手のひらを向け、そこから雷を放つ。しかし、それは全て剣がまとった闇に飲み込まれた。そして、闇の塊が女を直撃した。


 女は闇の塊をなんとかかわしたが、その右半身はほとんどが闇に飲み込まれ、残ったのはほとんど残骸としか言えなかった。それでも生きているようで、カレンに残った手を向けようとした。カレンは無言でそれにもう一度剣を振り下ろして、女を完全に消しさった。


 カレンは普通の状態に戻ると、剣を納めてから周囲を見回した。消した女の他は誰もいないのを確認してから、ゆっくりと町の方に足を向けた。

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