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二つの道

 タマキ達は村の家に戻ってきていたが、なぜかファスマイドも一緒だった。


 まるで自分の家にいるようにくつろいで椅子に座っているファスマイド。タマキは壁に寄りかかって立ち、カレンはファスマイドと恵美の間で、恵美を守るようにして立っていた。


「さて、君達はこれからどうするんだい?」


 その問いにタマキは姿勢を変えずに口を開く。


「そうだな、ここもばれてるようだし、さっさとこの国を出るとするか?」

「おやおや、まだ敵の正体も見きわめてないのにかい? それに、王国の兵士達が来るかもしれないのを放っておいていいのかな?」

「それをお前が教えてくれれば、手間が省けるんだけどな。それに、兵士に関して言えば、あの女王様がそんな無茶をやらすとも思えないし」


 ファスマイドはそれにたいして笑顔を浮かべた。


「まあ、女王様に関する君の見方は正しいだろうね。でも、僕だって全てを知っているわけじゃないし、そういうことは自分で調べないと面白くないだろう?」

「それを調べれば、彼女を元の世界に帰す方法もわかるっていうのか」

「まあ僕は無理だって意見だけどね」


 そう言ってファスマイドはカレンを見た。だが、カレンは何も答えようとはしない。変わりにタマキが口を開いた。


「それならカレンから聞いた、方法がないわけじゃなさそうだってこともな。でも俺は自分で見てみないことにはなんとも判断できないんでね」

「なるほど、さすがに大した自信だね。そういうことなら、君はここに残るのかな」

「そうだな、それはいいかもしれない」

「では、私はエミ様とこの国を離れるべきでしょうか」

「そうしてもらったほうがいいかな」


 タマキがそう言うと、ファスマイドはあごに手を当ててカレンとタマキを交互に見た。


「じゃあ、これから君達は別行動をするわけか。タマキ君はここに残って、あとの二人はそう、ノーデルシア王国にでも向かうってところだろうね」

「で、お前はどうするんだ」

「別に。僕はいままでと同じように、楽しく見させてもらうよ。さしあたっては、君と一緒に行動してみようかな」

「断ったところで、どうせついてくるんだろ。好きにしろ」


 そう言ってから、タマキはカレンに近づいてその肩に手を置いた。


「じゃあカレン、そっちは頼む。エバンスによろしくな」

「はい。タマキさんも無理はしないでくださいね」

「わかってるよ」


 それから二人は軽くお互いの体を抱いて、その体を放した。


「じゃ、行ってくる」


 タマキは家から出て行った。ファスマイドがそれを追って出て行くのを見送ってから、カレンは恵美のほうに向き直った。


「では私達もすぐに出発しましょう」

「あの、ノーデルシア王国っていうのと、エバンスさんっていうのはどういうことなんでしょうか」

「ノーデルシア王国はこの世界で最も大きな国です。そしてエバンス様はその国の王子です」

「ええと、すごい人と知り合いなんですね」

「必ずエミ様の力になってくれます。それに、召喚ということに詳しい方もいますので」

「はい。わかりました」


 カレンと恵美は家の中の荷物の整理を始めた。


 それから数十分後。タマキとファスマイドは並んで空を飛んで首都を目指していた。


「お前、そうやってずっと俺にくっついてる気か!」

「そうだよ。君と一緒だと退屈しそうにないからね」


 タマキが声を張り上げると、ファスマイドも負けじと大声でそれに応じた。


「そいつはどうも」


 それだけ答えて、タマキはスピードを上げた。


 そして、首都から少し離れた場所に着地するとゆっくりと歩き出した。


「で、これからどうするつもりだい? 町に潜り込むのか、それとも何か別の方法かな」

「それなら、せっかくだからお前に手伝ってもらう」

「手伝う?」

「女王さんとか他のお偉いさんとも知り合いだろ。俺があの王宮に入れるように手配しておいてくれ」


 少しの沈黙の後、ファスマイドは実に楽しそうに笑い出した。


「ハ、ハハハハハ! これはいい! 確かにあそこにいるのが一番手っ取り早いからね」

「返事はどうだ」

「もちろんやらせてもらうよ。いや、楽しみだね」


 ファスマイドは楽しそうな表情でタマキの前に出ると、先導するように歩き出した。


 一方、出発の準備を手早く済ませたカレンと恵美は、荷馬車に乗ってアディソンに見送られていた。


「では、あの家はあなた達の自由にしてください。それから、首都のほうから兵士が来るかもしれませんが、私達のことは隠さずに話していただいてかまいません」

「それでいいんですか?」

「そうするのが一番です。後のことは私のほうでなんとでもしますから」

「わかりました。タマキさんやカレンさんには本当に感謝しています。どうかご無事で」


 カレンはその言葉にうなずき、荷馬車を出発させた。

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