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村の守護神

 時間は少し戻って、タマキ達が出かけた後の村。カレンは滞在するための空家を案内されていた。


 カレンは外をざっと見てから、中も同じように確認した。


「これなら少し手を加えればよさそうですね」


 そうつぶやいて、カレンは案内の男のほうに顔を向けた。


「では、荷馬車をここまで持ってきてください。それから、この村のことに関して一番詳しい人を呼んでもらえますか?」


 カレンがそう言うと、案内の男は言われた通りにしようとしたが、そこに別の村人の女が焦った様子で駆けつけてきた。


「大変! 畑に魔物が!」


 案内の男は女の肩をつかんだが、おろおろしてどうすればいいのかわからないようだった。そこにカレンが歩み寄って女の肩に手を置いた。


「案内してもらえますか?」


 その落ち着いた様子に取り乱していた女も少し落ち着いたようで、深くうなずいた。


「こっちです」


 女が先導して、カレン達三人は畑に向かった。到着してみると、そこには四足の大きなトカゲのような魔物が三体ほどうろついていた。


「こんなところにキラーリザードが出ますか。妙ですね」


 カレンはそれだけ言うと、腰の剣に手をかけて、止める間もなくどんどん魔物に向かって進んでいった。


 当然そこにキラーリザードが飛びかかったが、それはあっという間に剣で切り捨てられた。そして、残りの二体もあっさりと切られた。


 その鋭すぎる剣に村人は声も出なかった。そこにカレンが何事もなかったような表情で戻ってきた。


「あれで全部でしょうか?」

「は、はい。とりあえずは」

「そうですか。では、戻りましょう」


 そうして村に戻ったカレンは帰ってきたタマキとちょうど合流することができた。


「とりあえず、妙なやつを片付けてきたけど、カレンのほうはどうだった?」

「こちらも三体ほど相手をしてきました。ですが、少し気になることがあります」

「俺のほうもだ。まあその話は後にして、当面の家を見ておきたいな」

「そうですね。手を加えないといけないところも多いですから」


 タマキはうなずいてからアディソンの方に向き直った。


「そういうわけだから、何かあったら教えてくれ」

「それから、後で村に詳しい人に家まで来てもらえるようにしてもらえますか?」

「はい、そうします」


 アディソンがそう返事をすると、タマキとカレンは用意された家に向かっていった。


 取り残された三人の村人達は、あれだけのことをやったというのにマイペースな二人に驚いていた。


「本当にあの人達は何者なんだ?」


 アディソンはそう言って首を横に振ったが、それに答える者はいなかった。


 一方、タマキとカレンは早速提供された家の整理を始めていた。


「しっかし、思ったよりも汚れてるな」


 タマキは雑巾を片手に室内を磨きながらため息をついた。


「こんな状況ですから、掃除する余裕がなかったのでしょうね」

「まあ普通は魔物がうろついたりしたら大変だしな」

「はい。しかし、いくら小さな村だといっても、兵が送られてこないのは妙ですね」


 カレンの言葉に、タマキは雑巾を持ったまま椅子に腰かけた。


「そうだな。魔物もおかしな感じだし、やっぱりこの国はおかしい。俺達が来た理由と関係あるかもな」


 タマキとカレンはしばらくの間黙り込んだ。そこにドアがノックされる音が響いた。タマキがドアを開けると、アディソンが立っていた。


「どうしたんだ?」

「村のことに一番詳しいのは私なので」

「そういうことなら、入ってください」


 カレンがアディソンを迎え入れた。三人はそれぞれ適当に椅子に座った。


 それからカレンが村のことから、魔物に関することまで、徹底的に質問をした。


「この村のことは大体わかりました。次はこのロベイル王国に関する噂を聞かせてもらいたいのですが」

「噂、ですか?」

「そうです。何でもかまいません」

「最近は何かおかしいらしいです。なんでも女王様が何か妙なことに熱中しているとか、そういう噂があります」

「どこでも聞く噂話だな」


 そう言ったタマキにカレンもうなずいた。


「具体的なことがなにもわからないのは気分がよくないですね」

「そうだな。ま、その話はいいや。それよりアディソン、食料を売って欲しいんだけどさ」

「食料、ですか? それはもちろん大丈夫ですが、お金を払っていただけるんですか?」

「もちろんだろ。じゃあ、明日頼むよ」

「はい、わかりました」


 アディソンはそう言うと立ち上がって出て行った。タマキとカレンも立ち上がって室内の整理を再開した。


 夜になる頃には、家の中はすっかり整理されて見違えるようになっていた。


「そろそろ夕食にしよう」


 タマキは体を伸ばして、さっきから火にかけている鍋のほうに近づいていった。カレンは食器類をテーブルの上に並べ始めた。


 とにかく色々入ったシチューを大きな容器によそってから二人で食べ始めた。


「それにしても、どこに行っても同じ噂ばっかりだな」

「そうですね。本来の目的を隠すためにわざと流している噂かもしれません」

「やっぱり実際に見てこないと駄目か」

「私が行きましょうか」

「いや、俺が見てくるよ。カレンはこっちのほうを頼む」

「わかりました。気をつけてくださいね」

「ちょっと見てくるだけだから大丈夫だよ。明日の朝出発する」


 それから二人は部屋の隅に寝具を敷いてから、並んで眠りについた。


 翌日、朝一番にタマキは多少の食料だけ持って村を出て行った。


 一人村に残ったカレンは事情をアディソンに話し、農地の巡回に向かった。

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