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町を散策

 昼食を済ませたカレンとタマキだったが、休むことはせずに二人で出かけることにした。


「どこに行くんだよ」

「とりあえず、できるだけこの町のことを頭に入れておく必要があると思います」

「ああ、そうだな。俺はそこらへんあんまり調べなかったし」

「とりあえず、適当に散歩をしましょうか。詳しいことはあのロドックさんに聞けばいいと思いますし」

「じゃ、どこから見てみる?」

「市場がいいですね。色々な人が集まる場所ですから、この町を知るのには最適だと思います」

「誰でも飯は食わなきゃ駄目だもんな」


 人に道を聞き、二人が市場に到着してみると、そこは食べ物から雑貨品まで様々なものが売られていて、非常に活気があった。


「にぎやかだな。この前も来ればよかったよ」

「しかし、ここではゆっくり噂を聞くようなことはできませんから」

「それもそうか」


 それから二人は色々な店を冷やかしながら市場を散策した。


「これ良さそうじゃないか?」


 タマキは骨董品を扱っている店でマグカップ的なものを手に取っていた。


「別に足りていると思いますが」

「いや、予備があってもいいじゃないか」

「予備ならもうあるじゃありませんか」

「いや、それは来客用ってことでさ」

「それもあります。そもそも二人旅としては荷物が多いんですから、これ以上増やすこともないと思います」

「それもそうかなあ」


 タマキは渋々カップを元に戻した。しかし、すぐにその隣に置いてあった腕輪に目をつけて手に取った。


「これは中々面白そうだな」

「そうですか?」

「ああ。これはいくらだい?」


 タマキは店主に値段を聞いて、結局二束三文でその腕輪を買った。


「それはどんな効果があるんですか?」

「まあざっと見た感じ、魔力が蓄積できそうだよ。用途はどうだかわかんないけど、けっこう面白そうだ」

「掘り出し物かもしれませんね」

「他にもいい物はないもんかな」


 そう言いながら、タマキはあたりの店を手当たり次第にのぞきながら歩いた。


「目的はそういうことではありませんよ」

「いいじゃないか。ここんとこ忙しかったし、息抜きしようぜ」


 カレンはその言葉にため息をついたが、すぐに微笑んだ。


「そうですね。これから忙しくなりそうですし、今は楽しみましょうか」

「よし、いこう!」


 タマキはカレンの腕を取って歩き出した。カレンもそれに遅れないように自分の腕を絡ませて、横に並んだ。


「お、あの店も面白そうだな」

「がらくたばかりに見えますけど」


 楽しそうな二人の横を長髪にローブのファスマイドが通り過ぎた。そして振り返り、腕を組んで歩く二人を楽しそうな笑顔を浮かべて見送った。


「ノーデルシアの勇者、タマキ君か。実に面白い」


 それだけつぶやいて、ファスマイドはそのまま雑踏の中に消えていった。


 二人はそれには気づかずに買物を楽しんで、いつの間にか時間は夕方になっていた。


「そろそろ宿に戻ろうか」

「そうですね。迎えが来るんですか?」

「そのはずだけど」

「では、早めに戻ったほうがよさそうですね」

「そうしよう」


 いつの間にか荷物を色々抱えていた二人は足早に宿に戻った。しかし、宿の前にはすでにタマキには見覚えのある馬車が止まっていた。


「少しだけ遅くなったみたいだな」


 そう言ったタマキが宿の扉を開けて中に入ると、ちょうど使いの男と鉢合わせになった。


「ああ、ちょっと待っててくれ、荷物置いたらすぐに戻るから」

「はい。わかりました」


 男はそう言って外の馬車に向かった。タマキとカレンは荷物を部屋に置いてきて、そのまま馬車に向かい、乗り込んだ。


 馬車はロドックの屋敷に到着し、今回は自室ではなく、二人は応接室のような場所に通された。


「とりあえず座ってくれ」


 ロドックは立ち上がって二人を迎え入れると、ソファーをすすめて自分もゆったりと腰を下ろした。


「それで、今回はどういうことなんだ?」

「今回は本腰を入れて王宮内部のことを調べようと思ってるんだ」

「どうやるつもりだ?」

「私が少し王宮に潜入しようかと考えていますが、侍女の服装はわかりますか?」


 カレンの一言にロドックは意表をつかれたようだった。


「王宮には納品に行ったこともあるし、それはわかる者ならいるが」

「そういうことなら話は決まりだな、カレンの言う通りにしてくれ。大丈夫、あんたには迷惑はかけないし、この国にとっても悪い話じゃない」

「そ、そうか。そういうことなら、すぐに絵に描かせて届けさせよう」

「よろしく頼む。ところで、狼化はどうなったんだ」


 タマキが狼のことを口に出すと、ロドックは顔全体に喜びを浮かべた。


「それが、一昨日から姿が変わらなくなったんだ」

「そうか、うまいこと押さえ込めたんだな。まあ、呪いをかけた相手がこれ以上なにもしなければそれでいいと思うけど、できるだけ早く呪いの元を探したほうがいいな」

「それは調べているが、協力してもらえないだろうか」

「ああ、別にいいよ。カレンが王宮を調べてる間は暇だろうしな」

「ありがとう! どうだ、夕食を食べていかないか?」


 タマキはカレンと一瞬目を合わせてから、首を横に振った。


「いや、今日は遠慮しておこう。昼間ずっと出かけてたし、ゆっくり休ませてもらうよ」

「そうか。それなら服装のことはできるだけ早く調べて知らせよう」

「よろしく」

「お願いします」


 タマキとカレンはそう言ってソファーから立ち上がった。

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