ボウルの中の友人
僕には秘密の友人がいる。
台所のボウルに溜まった水の中に、夜毎現れるその人は、日頃、いじめられている僕を慰めてくれる。
「大丈夫だよ。私がいるよ。」
「大丈夫だよ。私がいるよ。」
友人のいない僕は、ボウルの人に癒されて、毎日、話しかけていた。
「大丈夫だよ。私がいるよ。」
「大丈夫だよ。私しか居なくしてあげる。」
え?
その時、
「ぎゃああああ!!」
家の外から叫び声が聞こえた。
いじめっ子のあいつの腕が……ありえない方向に曲がっている。
「大丈夫だよ。これであいつはあなたを殴れないよ。」
「大丈夫だよ。喋れなくもして欲しい?」
やめてくれ!こんなことがしたいんじゃないんだ!
「大丈夫だよ。だって憎んでいるんでしょ?」
「ぎゃああああ!!……ああ!」
あいつの足が血だらけになっている。
やめてくれ!
「バッシャー!!」
僕はボウルの中の水を捨てた。
「な……ん……で?」
断末魔を上げながら、僕の友人は排水溝へ消えていった。
僕は泣きながら「さよなら」を言った。