表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつ訪れるか分からない事

作者: 狩衣旅兎

『いつ訪れるか分からない事』

それは「死」です。

 暗い事なので「お前何書いてんだ!」と嫌がられるかもしれませんが、実際に間近で目撃し己の判断力と非力を悔いた事を、ままに書きたいと。


 ある朝の7時30分前後、私は1人でY字路の縦棒部分を渡る横断歩道で信号待ちをしていました。

 縦棒から右へ進むのが本線の県道、左は住宅地密集地から出入りする道で、出勤する人達の車が多く行き交っています。本線・左の道と信号が変わった後に歩行者用信号が青となります。

「本線止まったから、もう少しで渡れるわ」と思った時、エンジンの猛烈な回転音が聞こえてきました。

 音は左の道から聞こえるのだけど、私の視界は電柱に遮られて道は見えなかった。

 「なんだ?」と口にした瞬間、電柱の陰から車が飛び出してきました。

 勢いよく走りだしたクーペが車道と歩道を区切るブロックで跳躍し、駐車場に飛び込み駐車中の車に激突して止まったのです。

 激突された車は、その勢いで駐車場に隣接する住宅の外壁に突っ込みました。

 2mも離れていない距離での瞬間的な事でした。

 

 事故を目撃した人は多かった。信号待ちの車は列を成していますし、住宅街からは何台も車が何事もなかったかのように走っていきます。

 クーペの背後で信号待ちをしていた人達も、本線で信号待ちしていた人達も、誰も車を停めて助けにはきません。住宅の住人である老夫婦も出てこない。

 ただ1人、呆然と身動きできず私と正対して止まるクーペを見つめるだけの私。頭は真っ白です。

 どうすれば・・・・・・

 動き続けるエンジンの音を聞きながら、馬鹿な事を考えていました。

 とにかく警察に通報をとスマートフォンを手に取ろうとした時、壊れたフロント部分から火が上がりました。

(マズい!とりあえずエンジンを止めないと!)

 駆け寄りドアを開けると、顔を上に向けて口をパクパク開閉している男性と目が合いました。

 キーを回しエンジンを止めて、(車から降ろすべきだが、脳の病変だったらどうしよう。動かさない方がいいか)

 焦っていました。震える手にスマートフォンを持ち、110とタップするのですが10としか入力出来ないのです。

 何度挑戦したか、やっとの事で警察に繋がりました。

 事故現場と状況を伝えると、「消防には通報されましたか?」と問い掛けられたので、まだですと伝えると「こちらから連絡します」と。

 消防署と警察署が共に数100mの場所にあり、消防署から出動のサイレンが聞こえました。

 その頃には老夫婦が家から出てきて、外壁や2台の車を眺めていました。

 消防署前の道から県道に合流すれば、現場にはすぐです。県道の歩道に立ち駆けてくる消防車に手を振ると、私を目にした助手席の消防士が不思議そうな顔をしました。

 その理由は痛いほど分かるのです。

 当時の仕事は医師・看護師等の医療機関勤務では無いけど片隅で接点がある仕事。その仕事着姿だっまから。なのに何も出来ない。知識と経験が不足すると判断できない・・・・・・


 その後は事情聴取等色々ありましたが、関係ないので触れる必要は有りません。

 当日だったか翌日だったか、破壊された外壁を前にして、老夫から男性は心臓発作だった事。病院で治療の甲斐なく亡くなられた事を聞きました。

 脳じゃなかった。運転席から早く引き摺り出して、心臓マッサージをするべきだったか?

 申し訳ないと、後悔の念が募るばかりでした・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ