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間話 『女子会』

「よし、全員集まったようだね」


シュブーリナ邸には秘密の部屋がある。

男は決して入る事が許されないその部屋には、夜な夜な。

皆が寝静まった深夜に五人の女性達が部屋に集まる。

カトリーナ。

フェン。

スパルダ・カームブル。

セイラム・エリエッタ・ユードラシル。

フェン。

メゾルテ・イォマー・インセンベルク。


彼女達は大切な主人であるニグラスが深い眠りについた事を確認した後にこうして席を囲み集まって女子会を開いた。

内容は勿論、ニグラスについて。


「それで、ニグラス様はどうなんだ?」

「はっきり言って規格外だ。剣術も魔法も、成長が人の何倍も早い。いや、元々天賦の才があったのだろうな。だからこそ、疑問もある。何故、誰一人としてニグラスの才能に気づかなかったのか」


無論、それは答えが出ている。

誰一人としてニグラスという人物と向き合おうとしなかったからだ。

粗暴で品性の欠片もなく、貴族としての誇りすら感じない。

文字通り、救いようのない男。

それが、この屋敷に仕えていたすべての者の総評。


此処に居る、カトリーナとフェンも同じだ。


あの日、ニグラスが変わっていなければ今もまた誰もが彼の才能を腐らせてしまっていた。

スパルダは、それを問い詰めているのだろう。


「否、それは我々があの方の本質を見極める事が出来なかった事が原因だろう。しかし、本当に驚いたよ…ニグラス様の変わりようには…」

「カトリーナ姉様の言う通りですわ。ニグラス様は本当に変わられました見違えるほどに…それも、異常なまでの才能もオマケして」

「ほんと、天才だよねぇ〜?独自で魔法を創り上げちゃうしさ~」

「ふっ、我が旦那はどんな宝よりも価値がある」


此処に居る全員がニグラスの才能に感動している。

元の人間性を知っているカトリーナとフェンは特にニグラスの成長に感激している。


「そこだ。どうしてアイツは急に変わろうとしたんだ?人間、ちょっとやそっとの事でそう簡単に変わる事はない」


最もである。

人は、そんな簡単に今までの自分を変えられない。

それは悪人も善人も同じだ。

善人が悪人に変わろうとしても、根本にある"善良"が邪魔をする。

悪人もまた同じだ。

しかし、ニグラスは変わった。

まるで、誰かが入れ替わったみたいに。



「ニグラス様が自分を変えるキッカケになった出来事があったんじゃないだろうか」

「ほう、というと?」

「詳しい推測など出来ん。ともかく一つわかるのは、何か自分が変わらないと行けない何かが彼を動かしたんだと思うがね」


この場にいる誰もがニグラスの中身が入れ替わった事など知る由もない。

これからもきっと、彼は誰にも話さないだろう。


「まぁ良いさ。それよりも明後日は遂にニグラスの入学試験だ」

「ああ、そうだな。まぁでも、今のニグラス様なら余裕で受かるだろうよ。勉強も剣術と魔法も人並み以上に努力していたからな」

「ま、落ちても私がニグラスを学園に付き人として連れて行くさ」

「第二王女、それは反対ですわ」


メゾルテの発言にフェンが反対する。


「どうしてかな?」

「独り占めはさせませんの」

「ふっ、ニグラスは私のものだがね」

「聞き捨てなりませんわね。ニグラス様は誰の物でもありません」


バチバチバチと、2人の間に稲妻が走る。

獅子と狼の幻影が浮かび上がり、お互いを牽制している。

そんな様子を見て、やれやれといった様子で2人を眺めるカトリーナ。


「ねーねー、すーちゃんはさ正気なの??」

「ああ。もう既に根回しは済んでいるさ」

「うわぁー」

「お前はどうするんだ?」

「あーしは、いつでも監視出来るから良いかなぁ」


スパルダとセイラム。

2人は2人でとんでもない会話の内容を繰り広げている。


「お前達…はぁー、本来の趣旨を忘れたのか?『ニグラス様の素晴らしさを語ろう』という理由で集まったではないか」


カトリーナの発言に、部屋に居た全員がハッと我に返る。


「全く…それで、続けるのか?それとも、解散か?」

「明日は早いし、少しだけ語って解散しよー」

「そうだな」


その後。

少しだけと言っていた彼女達だが、ニグラスの事を語り続け夜が明けてしまった。


ーー


「ふわぁ…」


その日の朝。


ニグラスは欠伸をしながら一階のリビングに降りてきた。

ある街に向かう為に準備をしようとした所で、奇妙な光景が目に映る。


「ひぃ!?ゾンビ??」


一階をヨロヨロと歩くスパルダ達の姿。

目を開けたり閉じたり、身体をフラフラと揺らし、ゾンビのようにリビングを彷徨っていた。

その光景を見たニグラスはびっくりして腰を抜かしてしまう。


「ど、どうなってるんだ…」


そういえば昨日。

トイレに向かうために廊下を歩いていたら、ある部屋から声が聞こえていた気がする。

なんか、楽しそうで凄く盛り上がっていた。

なんの話をしていたのかは全く分からなかったけど…もしかして、みんな夜通し何かしていたのだろうか。


フェンも今日は珍しく起きてこないし…


「うーん」


ま、いっか!

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