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第十九話 『本当の主人公』

一章・完


次回、二章は完全に描き終わったら投稿しようと思っています。

あと、四〜五話ほど書きますのでしばらくお待ちください。

インセンベルク勇王国から少し外れた辺境には数多くの小さな村々が存在する。

此処は、そんな数多くある村の一つ。


ボイオーティ村。

村の周りには深い森と広い綺麗な湖が存在する。

此処は元々、魔物や魔獣による被害が多く王都からの支援があまり行き届かない不遇の地だった。

貧困が激しく、勇王国から騎士を雇う資金もなかった村は戦える男達を集めて犠牲を出しながら自衛していた。

数年前、ある2人の存在によってボイオーティ村はめっきりと魔物や魔獣による被害が減った。


「リオンー!!リオーン!!」


高い木々が聳え立ち、雑草が覆い茂る森の中で誰かの名前を叫ぶ一人の少女が居た。

凛とした青空のような髪は肩まで伸び、その瞳もまた蒼く澄んでいる。

服装は動き易さ重視のようで胸当て、腰、膝などに軽鎧を身に付けている。

右手には大きな和弓を持ち、背中には弓筒を背負っている。

自分よりも遥かに大きい木々が生えた森に臆する事なく堂々と歩き誰かの名を叫ぶ。

少女にとってはこの森は子供の頃から今探している少年と何度も遊んだり獲物を狩っていた慣れ親しんだ遊び場。


「ガルルルッ」


草を掻き分けて緑色の毛皮を持った巨大な狼の群れが少女を取り囲んだ。

雄叫びを上げ、獲物を目の前にして涎を垂らしている。

ジリジリと距離を詰めて、今にも飛びかかろうとしている。


「もう!リオンを探してるんだから邪魔しないでよー!」


少女が矢筒から狼の数と同じ数の矢を取り出す。

そして、右手を弦にかけ、左手を整えて的である狼達を見据える。

大きく息を吐き、静かに両拳を同じ高さに持ちあげる。

打起こした弓を、左右均等に引分け魔力を弓矢と腕に流し力を込める。


「ギャオオオッ!!」


異様な気配を感じ取った狼のリーダーが群れに指示を出す。

一斉に狼達は少女に飛びかかる。


「ーー『乱嵐』」


刹那。

閉じていた瞳をカッと開き、胸廓を広く開き、一気に矢を放った。

放たれた数本の矢が更に枝分かれし、嵐のように降り掛かると狼達を串刺しにする。

飛び掛かった狼が一匹残らず矢の餌食になった。


「ガゥ、!」


此方に狙いを定める弓使いを見て群れのリーダーは背を向けて走り出す。

しかし、それは弓使いと対峙するにあたって絶対にやってはならない行為。

それに気付いた時には、もうあまりにも遅かった。

少女の腕から放たれた矢が狼リーダーの頭を打ち抜き、風穴が空く。


「ふぅぅ」


完全に息絶えた事を確認してようやく少女は弓矢を下ろす。

狼に刺さった矢を抜き、綺麗に血を拭き取って回収する。

そして、再び少年を探す為に歩き出す。

一部始終を見ていた他の魔物達は少女を恐れ、その場から逃走していく。


「あ、リオン!」


しばらく進むと、ようやく目的の人物を発見した。

森を抜け、人里離れた場所に出る。

大きな絶壁と辺りに転がる形が歪な大岩。

どれもが見事に砕かれ、風穴が空いているものばかり。


「アル?どうしたの、こんな所まで」


リオンと呼ばれた少年が振り返る。

黒眼黒髪。

顔は歳相場で幼さが残りながら、非常に整っている。

肉体は異常なまでに鍛えられ、片手には棍棒を持ち、もう片方の手には巨大な熊の死骸を握っている。

揺らぎのない魔力の鎧を纏った15歳の少年。


「おばさんがご飯の時間だから呼んで来いって」

「もうそんな時間か…ごめんごめん、今行くよ」


自分よりも遥かに大きい熊を片手で持ち上げ、放り投げる。

アルと呼ばれた少女と共にリオンは森を抜けて自分達が暮らす小さな村ボイオーティに戻ってきた。


「あ!リオンとアルだ!」

「お帰り」


村の老人や子供達が2人を出迎える。

彼等の多くはリオンとアルを尊敬し感謝している。

この村はかつて、周辺の魔物や魔獣による被害で多くの犠牲者を出していたが2人の活躍によってその被害は極端に少なくなり、2人の強さに恐れた魔物達は村に近付かなくなった。


「ただいま、皆んな」

「ただいまー」


村の人たちと交流した後、2人はリオンの家に訪れた。

2人は赤ちゃんの頃から共に過ごしてきた幼馴染で、2人の両親も仲が良い。


「あら、おかえりなさい」


2人を出迎えるのは、リオンの母親エウリュア。

リオンと同じ黒目と黒髪。

とても淑やかで上品な女性で、その美貌から一人の子を持つ親とは思えない。


「さ、食事の準備は出来ているわ!」


木作りの食卓にはずらりと料理が並んでいた。

いつもよりもずっと豪華な食事の量に2人は驚く。


「母さん、これどうしたの?」

「明日は遂にあなた達が王都にあるインセンベルク勇王学園の入学試験でしょ?お母さんに出来る最善の方法がこの豪華な食事だったのよ!」

「嬉しいです!ありがとうございます」


そう。

明日は遂に、ダーレス勇王学園の入学試験。

貴族や裕福な者達が受ける事が出来る世界最高峰の教育機関。

莫大な費用が必要となる。

本来であれば貧乏村出身の2人が受ける事は一生叶わない筈だった。


が、ある日ーー偶々、この村に立ち寄ったある騎士が2人の鍛錬している姿を見つけた。

王都の騎士にも引けを取らない剣術や弓術。

王都の魔法使いにも匹敵する魔法の技術。

そして、凶暴な魔物や魔獣を相手に圧倒する戦闘能力を見込んだ騎士がダーレス勇王学園の入学試験の資格を推薦してくれた事で実現した。

だからこそ、2人は自分達の実力を認めて期待してくれた騎士に応える為に今日まで鍛錬に励んでいた。


「それで、調子は?」

「絶好調だよ!明日は絶対に勝てるさ」

「全くもう…油断はしないようにね」


と、口でそんな事を言うアルだが今のリオンの発言を本気で心配している訳ではない。

この数十年間。

ずっと、側でリオンの事を見てきた自分が誰よりも知っている。

明日の入学試験に訪れる受験生の誰一人として彼に敵う者はいないだろう。

或いは、現学生ですら彼に勝てる者は少ないと思っている。

幼い頃から英雄譚に登場する星の勇者に憧れて死に物狂いの鍛錬を積んできた。


「ま、リオンと私なら大丈夫ですよ!それに、彼が馬鹿な事をしたら私が止めますし」

「あらあら、アルちゃんは本当に良い子ねぇ!リオンちゃんには勿体無いわぁ」

「母さん…」


他愛もない会話をしながら家族で食事をする最後の時間を楽しむ。

もし、入学試験を合格したなら2人は学園に設備されている寮で暮らす事になる。

そうなると必然的に村には戻って来るのが難しくなる。

最初、リオンは一緒に引っ越そうと相談したが断られた。

エウリュアは何十年も前に行方不明になってしまった父親の帰りを待つ為に村に残ると言った。


「母さん、本当についてこないの?」

「えぇ、やっぱり諦めきれないの…」


エウリュアは悲しそうにそう語る。


「そっか。まぁ、学園に入学して落ち着いたら村に顔を出すつもりだからさ」

「そうですよ!」

「うふふ、ありがとう!」


食事を終え、2人は各々の準備を始める。


「ふぅ〜」  


リオンは部屋のベッドに寝転ぶ。

そして、考えるのは明日の入学試験。

試験は二つある。

一つ目は、筆記試験。

二つ目は、実技試験。

筆記試験は平均50点以上取れていれば合格。

特に重要なのは二つ目の入学試験だ。


一対一の決闘方式で行われる試験。

勝者は即学園に入学が決まり、負ければ失格、或いは一つ目の筆記試験の結果を見て合格か不合格か決まる。

なんて単純な試験なのだろうか。

もし、合格条件が筆記試験重視だったら厳しかったかも知れない。

が、ダーレス勇王学園は実力主義。

闘いが好きなリオンにとってまさに最高の舞台だ。


幼馴染のアルーーアルテミリスは、凄腕の弓使いだ。

数百メートル離れた的の真ん中に完璧に矢を射たり、放った矢は外れる事がない。

また、近接格闘術もリオンと互角に戦える実力者。

そして、頭も良いので彼女が試験に落ちるイメージが湧かない。


「明日は頑張ろう」


絶対に合格してみせる。


彼ーー【スター・ウォーリアーズ】の主人公・オリオンは心にそう誓うのであった。


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オリオン (15)

レベル:35

種族:人間

耐久:C

筋力:A

敏捷:C

魔力:C

スキル:身体強化、気配感知、勇猛、威圧、疾駆、魔力操作、剣術、格闘術、不動

総評:C


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アルテミス (15)

レベル:34

種族:人間

耐久:D

筋力:C

敏捷:A

魔力:C

スキル:身体強化、気配感知、威圧、疾駆、魔力操作、弓術、格闘術、鷹の目、集中、隠密

総評:C-


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