第十七話 『模擬戦』
ステータス必要かなぁ?と疑問になってきた
皆さんはどう思いますか?
予約投稿出来てませんでした。
申し訳ないです。
「やぁ、ニグラスきゅん」
「ァ……」
ニグラスは絶句する。
昨日、別れを告げた筈の婚約者…いや、元・婚約者と言う方が正しいだろうか。
ともかく、第二王女メゾルテが屋敷の扉の前でニグラスを待ち構えていた。
凍りつくような笑みを添えて。
「メ、メゾルテ様…3日振りですね…」
「ああ、そうだね。それで、どういうつもりかな?」
「えぇと何の事ですかね、ははは」
「あの手紙の事だよ」
メゾルテが言っているあの手紙の事とは、先日メルルザとメゾルテの間で交わされた婚約の破棄についての内容を記した手紙の事だろう。
「どういう理由があってかな?」
「そうですね…あれから自分でも考えてみたのですが、、、今の自分では貴方の伴侶にふさわしくないと思い至ったのです」
「…そんな事は…」
「第二王女殿下には申し訳なく思っております。ですが、これは僕自身の問題なのです…人間性も、実力も…」
程の良い言い訳に聞こえるかも知れない。
しかし、今の言葉はニグラスの紛れもない本音だ。
それ以前に、メゾルテは本来主人公に恋をして星の勇者として覚醒した勇者パーティーの一員になり世界を救う一人。
そんな重要な役割を持ったメゾルテをこんなどうしようもない嫌われキャラの自分に執着させる訳にはいかない。
「…そんなにも私の事を想ってくれているのね、ますます気に入ったよ」
「えぇ…」
うーん。
どんな事を言っても好感度が上がってしまう…なんか、原作よりもチョロくない?
「しかし、君の言い分も充分に理解した。つまり君は、もっと私に相応しい人間になれれば私のものになってくれると言う事だね?」
「ま、まぁそうなりますね」
「ふむふむ、了解だ。それなら、結婚は保留にして婚約は継続しよう!」
あぁ、そうなっちゃうのね…
「早く君を私のモノにしたいよポチ…あ、ニグラス!」
「今、なんて…」
「いや、なんでもないさ」
いや、あるよね?
今、ポチって呼んでたよね?
聞き間違い…かな、うん、きっとそうだ。
取り敢えず、結婚は何とか避けた。
後はどうやって婚約も無しにするかだな。
「ニグラス、いつまで待たせる!早く鍛錬を始めるぞ」
木剣を手に抱えてスパルダが此方にやってきた。
「『剣聖』。その鍛錬、私も一緒にやっても構わないかな?」
「ああ、どうぞ」
え!?
嘘でしょ…この人、王族だよね。
こんな所で時間を潰していて良いのだろうか…
ま、いっか。
ーー
「遅い!そんなでは直ぐに殺されてしまうぞ」
「くっ…」
拝啓、お母様。
信じられないでしょうが今、あの第二王女メゾルテ様が『剣聖』スパルダから信じられない程の鬼教育を受けております。
あれから、週に一度。
第二王女殿下は剣術と魔法を学びにシュブーリナ邸に訪れています。
あと、暇さえあれば僕を口説いてきます。
因みにスパルダ師匠は相手が王族だと言うのに、この人はそんな事は知らないと言わんばかりに第二王女でも容赦無く痛めつけています。
僕は今、夢でも見ているのでしょうか…心ここに在らずです。
それにしても、今日は少しハードだな。
心なしかいつもよりもスパルダ師匠の鍛錬が厳しいような気がする。
ニグラスに対してではなくて、メゾルテに対してだけ。
素振りの回数や打ち合いの鬼畜度が高い…一年前のトラウマを目の前で再現されているようで頭が痛い。
しかし、流石はヒロイン。
スパルダのもはや一方的な暴力になっている剣術の打ち合いに屈せず何度も立ち上がって向かっていく。
週に一度しか鍛錬に来ていないのに、その成長速度が凄まじい。
流石は、努力型の天才…ニグラスとは教えや経験の吸収速度が桁違いだ。
入学試験があと半年まで迫ってきた。
第二王女もその入学試験に向けて凄まじい量の鍛錬を積んでいる。
いやー、彼女はこんな事しなくても入学試験は余裕で首席合格するんだけどね。
でも、必死で努力する彼女を止めるつもりはないし寧ろ共に切磋琢磨…鬼にボコボコにされるボコ仲間が増えて嬉しい。
「ボーッとしているとは余裕だなニグラス!」
「うぉっ!?」
死角からの木剣の打ち込みを間一髪で防ぐ。
今までだったら完全に顔面に入っていたが、成長したもんだ。
ほら、スパルダだって驚いてーーはにゃ?
油断していたニグラスの脇腹にスパルダの強烈な蹴りが突き刺さる。
「ぎゃふん!?」
「この馬鹿弟子が。一度防いだからと言って油断したら死ぬとあれほど言っただろうが…それとも、教えを忘れるほどメゾルテにぞっこんなのかな?」
「ニグラスきゅん!!」
違うよ、違うよメゾルテ…今のは比喩表現だよ。
でも、可愛いからいっか。
「まぁいい。打ち合いはここまで。次は試合だ、フェン、お前も加われ」
「分かりました」
フェンも参戦するのか。
もうフェンがただのメイドではない事は知っている。
襲撃事件の時も、フェンはたった一人で数十人を瞬殺していたし…その正体もなんとなく想像が付いている。
原作でも難易度"災厄"級でのみ挑戦できる裏ボスだったしね。
「ああ、そうだ。ニグラス、お前は遠慮しなくて良いんだぞ」
「っ、はい!」
なんでもお見通しか。
それなら遠慮なくやらせてもらおう。
「では、メゾルテとニグラス。戦え」
メゾルテと向き合う。
対面する彼女の表情は正に原作で見せたような勇ましい姿。
この状況にニグラスは歓喜する。
ゲームでは有り得なかったヒロインとの決闘…それが、こうして叶うとは思わなかった。
木剣を構える。
「手加減はしないぞニグラスきゅん」
「当然ですよ」
「ーー『身体加熱』」
ボウッとメゾルテの身体が発火する。
自滅ではない、自己強化魔法だ。
彼女独自が生み出した魔法をこの目で拝めることに感謝しつつ剣を構える。
「ーー『身体強化・改』」
ドッと、メゾルテが地面を蹴る。
彼女が移動した後、地面が焼け焦げている。
脚から火を放出してロケットのように高速で移動する手法で、ニグラスの背後を取る。
どんなに速くとも狙いが分かり易い、メゾルテの振るった木剣は空を切る。
体勢が崩れた所を狙って彼女の足を払い転倒させ首筋に剣先を突き付ける。
「そこまで。この勝負はニグラスの勝ちだ」
「負けた、か」
「大丈夫ですか?」
彼女の手を取り、優しく立ち上がらせる。
ふぅ、思ったよりも早くて焦ってしまった。
『闇』魔法の『鈍化』で動きを遅くしておいてよかった。
「こんなにも簡単に負けるとは…人生で2度目の敗北だ。これでも城の騎士にも負け無しだったのだがね」
「…まだ鍛錬が足りんな。ニグラス、次はフェンと戦え」
「はい!」
「お手柔らかにお願いしますわ」
対峙してわかる。
フェンは強い…スパルダやセイラムと同じ類い。
纏っている魔力の質が違う…これは、本気でも勝てるかどうか。
全力で勝つ。
「纏えーー『黒焔』」
剣や身体に漆黒の焔を纏わせる。
身体強化。
痛覚鈍化。
気配感知などと言った補助効果が付与される。
「それ、は…」
漆黒の焔。
その異様な景色にその場にいた3人は驚愕する。
だが、相対した狼族の女はすぐに冷静になり充分に警戒しつつニグラスに向かって颯爽。
鋭い鉤爪が眼前に迫った瞬間、ニグラスが再び動き出す。
「覆えーー『黒烟』」
刹那。
漆黒の霧が辺りを覆い尽くす。
その霧がただの霧ではない。
効果範囲の相手に盲目状態付与。
筋力低下・体力低下・敏捷低下・魔法防御力低下、状態異常耐性低下・移動速度低下などと言ったデバフ効果が一気に襲い掛かる。
常人はあまりの弱体量に耐え切れず、瀕死状態に陥る。
だが…相手は、フェン。
状態異常の嵐を受けても尚、止まらない。
ただ、それも想定の範囲内。
フェンが腕を獣化させ、霧を打ち払う。
「!?」
晴れた霧の中にニグラスは居なかった。
この黒霧には認識阻害の効果も備わっている。
それを上手く利用してフェンの背後に回り込み、黒焔を纏った剣を振り下ろす。
流石はフェン…完全な意識外から現れたニグラスの姿に咄嗟に反応して迎撃する為に爪を振るう。
「ぁ、れ?足が、動かない…これ、は?」
泥の沼が彼女の足場を奪い体勢を崩す。
反撃が間に合わないと判断したフェンは防御態勢に切り替えて、黒焔の一撃を受け止める。
「これも、防がれるのか…でも、触れたな?」
「うぅっ!?」
剣に触れた瞬間、フェンが苦しそうに膝をつく。
そのまま地面に疼くまり、吐瀉物を吐き出す。
「そこまで!ニグラス、その炎を消せ」
「は、はい!」
黒焔を解除する。
少しやり過ぎた…か?
苦しそうな表情をするフェンを抱きかかえスパルダが治癒魔法を使う。
すると、徐々に顔色が良くなり元の美しい姿に戻る。
ニグラスは安堵して彼女の元に駆け寄る。
「す、すまない…」
「いえ、ご主人様の愛の鞭…悪くありませんでしたわ」
「あ、うん」
「ニグラス、あれはなんだ?」
「実は、この黒焔にも強力な呪属性が備わっているんですよ」
「呪属性、だと?」
この焔に触れた者に強力な呪いを付与する。
例えば、炎症状態。
身体の痙攣や麻痺。
痛覚の活性化と促進。
幻覚や幻聴。
これらの他にもさらに複数の身体的異常と精神的異常を齎らす力。
しかも、効果は重複する。
時間が経てば経つほどに、その呪いの負荷が大きくなる。
因みに、この呪いは自分が指定した"敵"にのみ効果が及ぶ。
逆に"味方"には黒焔は加護を齎らす。
その効果は、強化全般。
「……はぁー」
え?
なんで、そんな呆れた顔を…
いや、確かにまぁ無茶苦茶な力だけど…黒焔は決して万能じゃない。
魔力消費量が多く燃費が悪い。
謂わば、超短期決戦用の切り札。
だから、あまり多用は出来ない。
ゲーム終盤ではこの効果を簡単に弾いてくる化物も増えていく。
原作終盤はもっとインフレ武器や技、道具が多く存在している。
黒焔と同等か、少し劣る程度の力。
「まぁ良い、休憩は終わりだ続けるぞ」
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