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第十四話 『第二王女誘拐』

次回の更新は月曜日です。

コツコツ、と足音を立てながら此方に近づいて来る。

張り付いた笑顔を向けて此方に向かってくる様には、スパルダと同じような恐ろしさを感じる。

とっても嫌な予感がする。


「これはこれは…ご機嫌如何かな?ニグラス殿」

「お、お久しぶりでございます。メゾルテ姫殿下…」


彼女から物凄い敵意を感じる。

いや、それも当然だろう。

ニグラスの記憶がフラッシュバックする。


数年前の出来事。

メゾルテが初めて社交界に姿を現した時にまで遡る。

当時から評判の悪かったニグラスは貴族の伯爵という立場を利用して好き勝手していた。

社交界に姿を現しては、自分よりも立場の下の令嬢を脅して様々な嫌がらせを行っていた。

その悪行を辞めさせようと、ニグラスの元に訪れたメゾルテの言葉に腹を立て彼女が大切に思っていた世話係の女を陵辱した。


それに激昂したメゾルテによってシュブーリナ家は取り潰されそうになったが、メルルザの真摯な謝罪でなんとか難を逃れた。

が、ニグラスが誤ることはなかった。


原作ですら明かされなかった2人の因縁。

まさか2人の間にそんな事があったとは知らなかった。

やはり、ニグラスという男を知れば知る程に嫌になるな。


「メゾルテ様…」

「メゾルテ第二王女、此方へ!」


すぐに謝罪をして誠意を示そうとした。

が、彼女は他の貴族に呼ばれて中心の集まりに戻ってしまった。

結局、謝る事が出来なかった。

このままでは終われない…原作でも大好きなヒロインに嫌われたままというのは嫌だし、彼女が受けた傷を思えば直ぐにでも謝るべきだ。

ったく、何処まで足を引っ張るんだニグラス・シュブーリナ!


「はぁ…」

「随分な嫌われっぷりだなニグラス!大丈夫か?」


心配してくれてありがとう…と言いたい所だが、彼女は凄い笑顔だった。

この人…絶対に楽しんでやがる。

俺がこんなにも悩んでいるというのに…しかし、タイミングが中々掴めない。

流石はこの国の第二王女…自国のみならず他国の貴族や王族からも絶大な人気を誇っている。

そして何よりも、ニグラスと接している時のあの恐ろしい表情とは打って変わり物腰の柔らかい態度と表情を見せている。


「ほんと、笑い事じゃありませんよ…」

「やはり、第二王女はニグラス様を恨んでいるようですわね」


うん、だよね。

だって今も、チラチラと此方を見ては凄い睨んで殺気を浴びせて来るんだもん。

いや確かに、俺…というかニグラスが100悪い。

けどさ…そんなに睨まれたら新たな扉が開いてしまいそうになるよ。


あともう一つ気になっている事がある。

第二王女の誕生日会だというのに、肝心の王や妃、そして第一王女がこの場に現れない。

原作で、メゾルテが家族と仲が悪い設定はなかった。

むしろ、あの事件が起きるまで本当に仲が良かった筈だ。

だけど、この場には居ない。


何かあったのだろうか?

それとも、この世界では家族中が悪くないとか?

だとしたら悲しいな…考えすぎかもな。


「第二王女様より、皆様に向けてお話があります」


メゾルテが登壇する。

拡声器の役割を持つ魔導具を使って言葉を伝える。


「此度はこのメゾルテ・イォマー・インセンベルクの誕生日会に集まってくれて感謝の言葉を…本来であれば王や姉殿下と皆で感謝を伝えたかったのだが、少し勇王国で問題が生じてしまったので私だけこうして皆様の前に立たせて貰っている」


その佇まいは、正に王女に相応しい。

その声色は何処までも響き渡る。

言葉を聞く一人一人が彼女に釘付けになっている。

スパルダも。

フェンも。

そして、ニグラスも。

原作、画面越しで見ていた彼女の姿。

今、目の前で見る彼女の姿。

似ているようで、まるで違った。

その言葉の一つ一つに揺るがない自身と納得させる威厳がある。


見惚れていると、彼女の話を聞き逃してしまった。

しまった、と思いつつフェンに後で彼女が話していた内容をこっそりと教えてもらおうと悪巧みする。


「ーー以上だ」


メゾルテの話が終わる。

大勢の前で堂々と話し切った彼女は、それでも気を抜く事なく最後までこの会の主役に相応しい態度を示している。

彼女の王族としての在り方は、貴族の何たるかも知らない今の自分にとって参考になる。


「チャンスは、今しかない…」


誕生会が幕を下ろす。

会場を去ろうとする前に、なんとかメゾルテを引き止めて謝罪をしよう。

そう決意し動き出す。


「ーーッ!?」


気配察知に何かが引っ掛かる。

次の瞬間。

会場の壁が突然、爆発する。


「フェン!」


壁の瓦礫が、フェンに向かって飛来する。

脚に魔力を込めて加速する。

彼女を守る為に覆い被さろうとするが、瓦礫が粉微塵に粉砕される。

フェンによって。


「あら?」


覆い被さり庇おうとしたが、フェンが物凄い速さで動いてしまったので空かしてしまう。

そのままの勢いで地面とキスをしてしまった。

あれ、フェン…何者?

いや、只者ではないと思ってたけどさ。


「メゾルテ第二王女ー!!!」


会場の奥から叫び声が響く。

あわてて、振り返る。

目にしたのは、メゾルテが意識を失った状態で謎のローブを纏った集団に捕まり連れ去られいる場面だった。


「師匠、助けましょう」


しかし、スパルダは動こうとしない。


「どうしたんですか?」

「私はお前の護衛だ。それ以外の仕事は請け負わん」

「なっ!?」


こんな状況で何を言ってるんだこの人!?

メゾルテが、第二王女が連れ去られてしまったんだぞ?

これは明らかな重大な事件だ…一国の王族が何者かによって攫われた。

だというのにスパルダは平然とその場に立ち、いつの間にか制圧していた黒ずくめの人物達の上で欠伸をしている。


「フェン行こう!」

「ニグラス」


フェンを連れて助けに行こうとするが、スパルダに呼び止められる。


「絶好の機会だ。喜べよニグラス」


これは、冗談なんかじゃない。

彼女の真剣な表情が物語っている。

おそらく。

こんな時でも彼女は弟子である自分に試練を課そうとしている。

国の王族が連れ去られても尚、冷静な態度を取るスパルダを見てハッとする。

冷静になれていなかったのは自分だと。

深く深呼吸をする。

そして、自分の頬をぱちんと叩く。


「すみません、もう大丈夫です」

「ふっ」


冷静さを取り戻したニグラスの様子を見て、スパルダは笑みを零す。

そして、いつの間に奪ったのか分からないが俺に剣を手渡す。

会場に入る前に護衛によって回収されていた自分の剣と防具を身に付ける。

会場内はいま、混乱している。

煙が充満し、視界が悪い。

さらに、襲撃者が会場を襲っている。

衛兵や騎士達が他国自国問わず、貴族や王族を誘導し安全な場所に避難させている。

手の空いている者は襲撃者を迎撃している。

流石は、幾つもの修羅場を潜った本職の方達だ。


母…メルルザは姉レメオダスの護衛が付いている。

それなら、任せて良いだろう。

今の彼女は俺よりも強いと思う、多分。


「さて、ニグラス。お前に試練を与える」


スパルダと向き合う。


「今からお前は攫われた第二王女の後を追い、その身柄を取り返してみせろ」

「っ!」


やはり、そうだ。

与えられた役割の重大さに、少し戸惑ってしまう。


「王女を攫った者達は容赦なく殺せ。国家反逆者だ、生かしておく価値はない」

「……」


彼女の目は、本気だ。


「大丈夫。今のお前の強さはあの『剣聖』のお墨付きだ」


その言葉を聞き、一気に心が落ち着く。

ああ、『剣聖』が。

公式最強の女剣士が言うなら間違いはない。

ならもう、迷わない。


「この弟子ニグラスが貴女の期待に応えてみせます」

「よし。なら行け!時は少ないぞ」


その言葉を最後まで聞く事なく動き出す。


複数の武器を持った黒ずくめの襲撃者達が行く手を阻もうとする。

が、ニグラスはそんな奴等に一切目を向けない。

何故なら…


「邪魔だカスども」

「「「ぎゃぁあ」」」

「こっちには最強の"鬼"が居る」

「ニグラス、後で覚えておけよ」

「ニグラス様!頑張って下さいまし」


スパルダの脅し。

フェンの優しい声援。

その両方を胸に…いざ、ヒロイン救出へ

行け!ニグラス!


お読みくださりありがとうございます!


「面白そう!」

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