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第十三話 『必然の会合』

「母上から手紙?」

「はい。メルルザ様よりニグラス様へ手紙が届いております」


フェンから手紙を受け取る。

シュブーリナ家の朱印が入った手紙と送り主の名前。

メルルザ・シュブーリナ…確かに、ニグラスの母親の名前に間違いない。

本編では名前とその末路だけが明かされていた。


恐る恐る手紙を開封する。

中から一枚の紙を取る。

すると、白紙の紙に不思議と文字が映し出される。

おお、便利な魔導具だ。


「なになに、『久しぶりねニグラスちゃん。

早速だけど今日、第二王女様の誕生日会が開かれる事になってます。様々な国の貴族や王族も訪れる大切なパーティーになっています。シュブーリナ家の跡継ぎ候補として恥を晒す事なくしっかりと参加してね♡』、、、、」


いや、あー、そうだよな…。

そう、なるよな。

地獄のようなスパルタな鍛錬の日々を送っていて完全に忘れていたが、ニグラス…いや、シュブーリナ家は勇王国の伯爵の爵位を預かる大貴族である。

そんな大貴族の跡取り候補であるニグラスが参加しないとなると、現当主であるメルルザの評判が悪くなる。

顔もあまり憶えてないが、それでも俺の…ニグラスの母親だ。

そんな人の評判を落とす事は出来ない。

本当に、本当に心の底から断りたいけど参加せざるを得ない。


「フェン、馬車の手配は済んでいるぞ」

「カトリーナ姉様!ありがとうございます」


oh、仕事が早いこって。

腹を括るかぁ…

その後、フェンやメイド達に着替えを手伝ってもらう。

思えばこんなに貴族っぽい衣服を装うのは初めてかも知れない。

普段は、スポーツウェアで過ごしているからね。


屋敷の外に出ると、外にはあの地獄のデート以来の馬車が待ち構えていた。

そして、何故か…


「やぁ、ニグラス様」

「……フェン。同行者が君だけで安心したよ」

「やあ、ニグラスくん」

「……はは、鍛錬のやり過ぎかな?幻聴が聞こえるよう」

「やあ!ニグラス・シュブーリナ」

「すみません!調子に乗りましたッ!!」


身体を押し潰すような殺気が襲ってきたので全力で土下座する。

少し普段の鬱憤を晴らしてやろうと思ったが、幾つ命があっても足りない…


「所でスパルダ師匠はなぜここに?」

「私もお前の護衛としてメルルザ様に依頼されているからな」

「まじかよ…」

「ん?何か言ったかなニグラスくん?」

「いえ!頼もしいです!」


うん。

護衛としては優秀すぎる。

でもこの人…怖いんだもん!


「ふっ、まぁいい。時間も迫ってきてるし出発するぞ」

「そうですわね。それではニグラス様、馬車に乗ってくださいまし」

「わかったよ…」


渋々、馬車に乗り込む。

絶世の美女が2人、ニグラスの両脇に座っている。

フェンに至っては柔らかい胸を押し付けている。

スパルダ師匠は、もう既に爆睡している。

この人…自分が護衛って分かってるのかなぁ?

まぁ、絶対領域が最高にえっちだから良しとしよう。


それよりも楽しみな事がある。

これから向かうというパーティーだ。

何故なら、その主役が()()だからだ。

同時に心配でもあるのだが…ま、なるべく関わらず早く帰ろう。


あ、因みにこんな時でも努力は忘れない。

常に魔力の膜を纏い続けている。

魔力操作の訓練。

そして、目を閉じて深く深呼吸し瞑想を始める。


道中で野蛮な盗賊に遭遇し戦闘になったり。

爆睡していたスパルダが夢を見ながら暴れたり。

なんやかんやありながら、馬車に揺られ数時間。

ようやく勇王国の王都アルテミの中央街に存在するパーティー会場に到着した。


ニグラスの膝の上でぐったりと眠っているスパルダを起こさなければ。

この人は一度寝ると中々起きないので、手っ取り早い方法を取ります。

スパルダ師匠の大きな胸に手を近づける…と、強烈な鉄拳が飛んできた。


「くぁwせdrftgyふじこ!!?」

「ニグラス風情が私の胸を触ろうとするとはなぁ!?ぶっ殺す」

「剣聖。お戯れはそこ迄にして下さいまし」


ふぅ、助かった。

逃げるように馬車から降りる。

続いてフェンが降りてくる。

普段のメイド服とは違い今日の彼女は綺麗なピンクのドレスコートに身を包んでいる。

可愛い。

天使。

女神。

次に、スパルダが降りてくる。

うん、この人はいつも通りだ。

服装も変わってない…


会場の入り口には勇王国の星と剣のエンブレムを鎧に着けた騎士が何十人も立っている。

一人一人が恐ろしい程の強者だ…全く隙がない。

あんなのに一斉に襲われたら勝ち目がないだろうなぁ。


「ふん、腐っても騎士という訳か」

「洗練された人ばかりですね」

「まぁまぁだな。アレではニグラスの足元にも及ばん」

「え?」

「なんでもない。行くぞ」


どういう意図での発言だろうか?

ま、彼女なりに誉めてくれたのだろう。

ツンデレってやつ?可愛い所があるのです。


さて、そんなこんなで会場に着いた。

これがまぁ広い広い…シュブーリナ邸もかなりの大きさだったが、それが霞むような大きさと豪華さ。

会場には既に、多くの貴族が集まってワイングラスなどを持ち談笑している。



「はぁ…憂鬱だ」

「浮かない顔だなニグラス」 


それもそうだ。

だって何故なら今、俺は自国と他国の貴族や王族が集まる社交界の会場に訪れているのだから。

元の世界では一般家庭で育った日本男児が、いきなりこんな堅苦しい場所に放り出されているのだ。

それはもう、不安は計り知れない。


(ねぇ、見て…あれって、ニグラス・シュブーリナじゃない?)

(本当だわっ!恐ろしいわぁ…)


案の定、嫌われているようだ。

ま、当然だろう。

あれだけの悪行を繰り返してきた男だ…今更、評判が悪い事など気にしない。

謝るべき人間には謝る。

それに、今のニグラス…俺を知ってくれている人が側に居るだけで十分だ。


「にふらふぁさま、ふぁのふぃんでまふか?」


要約しよう。

ニグラス様!楽しんでいますか?と、沢山の食べ物を口に含んだままフェンが聞いてくる。

うん、ちょっと楽しみすぎじゃないかな?

ていうか、キャラ崩壊してるかも?


「やれやれ、上等な酒はないのか?使えない貴族共め」


やめて、師匠。

そんな多方面に喧嘩を売らないで?

なんで、護衛と付き人が主人よりも暴走しているのかぁ?


「あ〜!ニグラスちゃぁん!」


ふと、聞き馴染みのない女性の声が後ろから聞こえた。

疑問に思いながら背後を振り返る。

其処に立っていた人物を見て、ニグラスがニグラスだった時の記憶がフラッシュバックする。


このゆるふわな雰囲気を醸し出す超可愛らしい女性が…ニグラスの母親。

メルルザ・シュブーリナである。

それにしても、綺麗だな…お母さんというより、お姉さんだ。


そして、隣に居るのが…ニグラスの姉であるベディ・シュブーリナだ。

母親に似た美女。

しかし、メルルザと違うのはこの人が明らかにニグラスを睨んでいる点だろう。

凄く嫌われているのだと一発で理解できる。



「母上。姉上。お久しぶりです」


ぺこり、と頭を下げる。

流石に堅苦しかったか?

だけど、仕方ないだろう…自分はニグラスであって、ニグラスじゃない。

転生した俺にとってこの人たちは赤の他人だ…接し方すらわからない。

なるべく、中身がすり替わっていると気付かれないと良いけど…


「ニグラスちゃん、最近はどう?」

「はい。剣術と魔法の鍛錬は毎日欠かさず、そしてシュブーリナ家の事業の勉強にも勤しんでおります」

「どうだか。アンタにそんな事、出来るの?」

「姉上、弟として貴女を失望させてしまっている事は自覚しています。だからどうか、これからのニグラス・シュブーリナを信じて欲しいです」

「なっ…母様が居るからよく見せようとしているだけよね?悪いけど私は騙されない…それじゃ、私は行くわ」


最後まで目を合わせる事なくレメオダスは去ってしまった。

自分が蒔いた種とはいえ、実の家族にあそこまで嫌われていると少し堪えるな…

だが、決してあきらめない。

必ず認めてもらおう。


「ふふ、変わったのねニグラスちゃん。それじゃ私はそろそろ行くわね?スパルダちゃんもフェンも頼んだわよ?」

「ああ」

「かしこまりました」


そう言ってメルルザは貴族達の元へと向かっていった。

ふぅ、緊張した。

正体が別の人間だとは気付かれなかったようだ。


「おぉ!」


ふと、会場の奥の方が騒がしくなる。

何事かと騒がしい方に目を向ける。

会場の中央。

赤い絨毯が敷かれた階段からある美しい女性がゆっくりと降りてくる。


灼熱に煌めく綺麗な金色の長い髪。

冷たく威厳と王威に満ちた綺麗な紅き瞳。

目を奪われるほど芳醇な色合いの唇。

軍服のような貴族衣装を着こなした、凛々しく美しい顔立ち。


その姿に、会場の誰も彼もが目を奪われる。


ニグラスは彼女の姿を見て感動する。


「はは、まじかよ…」


まさか、本当にこの目で見れるとは…

彼女こそ【スター・ウォーリアーズ】人気No.1ヒロイン…メゾルテ・イォマー・インセンベルクだ。

だが、同時に素直には喜べない…


だって何故なら…彼女はニグラス・シュブーリナを心の底から嫌っているのだから。


「ふっ、ふふ」


恐ろしき獅子の瞳が憎き悪童を照らす。

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