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第十二話 『この世界を生き抜く為に』

「なるほど」


現在。

ニグラスは、シュブーリナ邸の書庫にて書物を読み漁っていた。

いつもの鍛錬だが、今日は無しになった。

スパルダは酒を飲みすぎて酔い潰れ。

セイラムは勇王国のある重要な任務の為に王城に向かった。

どちらも指導が出来ない、ということで今日は鍛錬を開始して一年で初めての休み。


特にする事も無かったので改めてこの世界の知識をおさらいしておこうと思い至った。

自分の知っている【スター・ウォーリアーズ】の世界設定と実際のこの世界がどう違うのか。

今のうちに調べ、備えておく。


まず、この世界の大陸は"三大国"とそれらに属さない周辺国家に分かれている。

物語として名前が上がる国は、三大国とある都市だけで周辺国家はあまり物語に出て来ない。

冒険者都市などはある。

大陸の南側に位置するのが、今いるインセンベルク勇王国。

広大な土地。

農作物や漁業が最も盛ん。

他国との交流も多く。

大陸に於いて、最終防衛拠点としての役割を担っている。

かつて邪神によって二つの国を除き殆どの国が滅ぼされた。

インセンベルク勇王国はその内の一つ。

邪神との戦争に勝利し邪神を封印した星の勇者によって託されたある重要な物を管理し次の勇者に引き継ぐ役割を任された当時の勇者パーティーの一人によって建国された。


【スター・ウォーリアーズ】の物語に於ける重要な国であり、ゲームの中盤までの物語はこのインセンベルク勇王国を中心にして繰り広げられる。

主人公や周辺のヒロインの殆どが大勢暮らしている。


西側にはファウグン神聖国が存在する。

世界で三番に国力と歴史を持つ国。

あるヒロインの出身地で、インセンベルク勇王国との関わりが深い。

"星の聖女"が古くより選抜される重要な国家。

女神チャウグナルを信仰する宗教国家であり、その教会は各国に広く分布している。

平原が多く、畑作より放牧をしている農家が多い。

静穏を信条とした堅苦しい国柄で純白の建物が多く見られる。

世界で最も平和な国と呼ばれているが、その実態は全く異なる。

次期聖王の座を狙った権力者達の内乱や陰謀が常に渦巻いている。

そう言った理由も相まって、"星の聖女"候補だったヒロインの一人が表向きは留学という理由だが、本当の理由は権力争いから逃れる為に避難してきた。

ここら辺の神聖国絡みのストーリーは物語のメインにはあまり関わって来ない。

が、街並みは本当に綺麗なのでいつか行ってみよう。


東にはイレム大帝国。

物語の中でも最も謎に包まれた国。

世界で一番目に国力と歴史を持った大国。

土地半分が砂漠に覆われ、また半分は肥沃の土地が広がっている。

また武力国家としても名高く、帝都にはコロッセオと呼ばれる闘技場があり其処では剣闘士同士による殺し合いが娯楽として人気を誇っている。


北部全域。

此処は、【スター・ウォーリアーズ】のラスボスとなる邪神が支配していた異界が存在する。

深い霧が立ち込める濁った湖の都市があると言われている謎多き世界。

本編の最終ステージで、地図や敵の配置、アイテムなどが毎回ランダムに配置されるようになっていて非常に厄介な場所だ。

しかも、途中で遭遇する異形は『潜伏』のスキルによって姿も気配すら感じ取れない。

いきなり遭遇して戦闘になる事なんて珍しくない。


他には亜人共和国。

多種多様な種族が混合して国家を築く唯一の大国などが存在する。


書物を読み終える。

本を閉じて目を閉じる。

うん、国家の名前も詳細も全部原作と同じだ。

その他にもメインストーリーでは絡まないある国もしっかりと存在自体はあるようで安心した。


「さてと、次は…」


魔法の練習だな。

【スター・ウォーリアーズ】内に存在する魔法は大体把握している。

セイラム先生が書き上げた魔導書に記された各属性の魔法や詠唱文も全て同じだ。

これから一から憶える必要もなさそうでよかった。


「渦巻け黒炎ーー『螺焔(スパイラル)』」


的目掛けて魔法を放つ。

黒焔が螺旋を描き周りの物全てを焼き尽くしながら的を消し炭にする。

よし、上手く行った。

今行っているのは、混合魔法の練習だ。

スター・ウォーリアーズでこの混合魔法はかなり強力で多くのプレイヤーが使っていた。

技術としては難しくない。


螺焔(スパイラル)』は風+炎の2属性の性質を利用した魔法。

本来は単体攻撃魔法なのだが、黒焔に変化した事で範囲攻撃魔法になっている。

また、この魔法は更に一手間加えてある。

『闇』魔法によって黒炎を受けた者には強力なデバフ効果を付与させる。

鈍化・混乱・能力低下などと言った嫌がらせ効果がオマケでついてくる。

味方には逆にバフが掛けられる様にセイラム先生に工夫してもらった。


試しているのはこれだけではない。


水+土を利用した嫌がらせ特化の魔法も研究している。


魔力が許す限り永遠に魔法を使い続ける。

俺は未だかつてなくこの世界を楽しんでいる。

あれだけ面倒くさがりで、退屈な人生を送っていた事が嘘かのような…

だが、今は違う。

熱中出来るものが出来たから。

心に誓うものが出来たから。


こんな自分に期待してくれている全ての人達。

剣術を教えてくれるスパルダ・カームブル師匠。

魔法を教えてくれるセイラム・エリエッタ・ユードラシル先生。

どんなに疲れた時、いつも側で支えてくれるフェンやカトリーナ…

彼女達の存在が何よりも大きい。


そして、自分に降り掛かる死の運命を回避する為。

前世で怠けてばかりだった自分がこんなにも頑張れている。


「決めたぞ」


俺だけじゃない。

俺の周りにいる全ての大切な人達を幸福な人生に導く為に努力し続ける。

全てを守れる力を手に入れて…なるべく物語は壊さずに生きてみせる。


「その為には努力!努力!努力!」

「ご主人様…そろそろ眠られては?」

「あぁ、フェンか?いつも悪いな、こんな僕の為に…」

「いえ…メイドとして当然の事をしていますの。毎日血反吐を吐きながら努力しているご主人様を支えたい…という私の我儘を聞いてくださった貴方に感謝してますわ」


全く…本当にニグラスなんかには勿体無いメイドであり、女性だよ。

そんな彼女をあんまり無理させる訳にはいかないし…もう今日は寝るか。


「フェンが言ってくれた通り、今日は寝るよ。君もゆっくり休んでくれ」

「ありがとうございます」


そう礼を言って去っていくフェンの後ろ姿を眺める。

僅かに狼耳がぴくぴくと動いて赤くなっている。

きっと照れているのだろう。

何故か知らないけど。

理由も知れるような男になるべきか?

スター・ウォーリアーズの主人公みたく鈍感系主人公にはなりたくないしなぁ。


「誰かに女心の指導を頼もうかな?

スパルダ…は、ちょっとイメージも湧かないしね」


セイラム先生は、かなり適任。

フェンは…めっちゃ良いかも。


「ひっ!?」


見ては行けないモノを見てしまった…

物陰から頭部だけ覗かせて此方を凝視する見慣れた鬼、いや女性…が居る。

ガタガタと肩が震える。

ええい、ままよ。

見て見ぬ振りをしてその場を去ろうとする。

が、突然足が地面から離れる。


「何処に行くのかなニグラス・シュブーリナくん」


その日、ニグラスが地獄を味わったのは言うまでもない…


ーー


sideーーフェン。


ニグラスと別れた後、フェンは自分の自室に戻った。

自室に備え付けられたシャワーを浴びて身体を洗い流す。

そして、たかがメイドの部屋には烏滸がましい程に広い浴槽に浸かる。

その間も考えるのは主人であるニグラスの事。


「ちゃんと部屋に戻ってると良いのですが…」


あの方は少々、頑張りすぎてしまう傾向にある。

確かに必死に努力しているニグラスは素敵でかっこいい。

が、支える者として側で見ていると心配でもある。

昼間から夕方まで剣術や魔法の鍛錬。

夜はシュブーリナ家が行っている事業の勉強…

それを毎日、寝る時間すら削って…

流石に、頑張りすぎてる。


ニグラスは何処かいつも張り詰めたような雰囲気で鍛錬に励んでいる。

何か、怯えているような…そんな空気も感じる。

しかし決してニグラスはそれを誰にも話さない。

逆にフェンや剣聖達もまたそれは聞かない。

いつか彼から話してくれるその時まで…


浴槽から出て、ミニスカート型のネグリジェと黒タイツに着替えてベッドに横になる。


「そういえば…」


メルルザ様から手紙が届いていた。

数週間後に行われるある大物の誕生日会という名の貴族王族集会。

それにニグラスも参加するように…という手紙。

正直、連れて行きたくない。


自分達は既にニグラスという人物を嫌ってない、むしろ好いている。

だが、他の者達は違う。

誰も彼もがあの頃のニグラス・シュブーリナしか知らない。

なら、自分達が支えてあげれば良い。


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