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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第二章

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なくてはならないもの

「……地底の情報か」


 ミシェナが訪れた翌日、エリアスはノークの部屋を訪れ、地竜との戦いに関連して国側がどこまで地底のことを調べているのか、問い掛けを行った。


「私の方にはそうした情報は来ていないな……よって詳細は不明だ」

「仮に調べているとしても、北部全体で共有はしていないということでしょうか?」

「そうした解釈で良いだろう……地底は魔物の巣窟であることは私もわかっている。となれば、当然調査を進めているのであれば情報共有くらいはするだろう。それをしていないとしたら、調査はしていないか、どこかの騎士団が独自にやっているか、くらいだろう」

「そうですか……」

「君は地底調査をしていない場合、どのようなことを懸念している?」

「……先の瘴気調査で、私は地底奥深くにまで繋がる洞窟を発見しました」

「うむ」

「しかもその場所は、北部の開拓最前線とは遠い場所です……おそらく、こうした洞窟が北部全体にはまだ存在している。瘴気の発生源であったため今回の洞窟については知ることができ、ひとまず魔物が出現してもどうにか対処できました。しかし――」

「私達の知らない場所に洞窟など地底に繋がる道があり、討伐をする前に調査した段階で、そうした場所から魔物が這い出てくるかもしれない、と」

「はい、地底は地上とは異なる道が多数存在しています。地上においては距離があったとしても、地底内では非常に近い場所に道が存在している、なんて可能性も」

「ううむ……」


 ノークはうなり、一度話をまとめるようにエリアスへ告げる。


「地底を下手に調べれば魔物が出現する危険性がある。なおかつ、出現場所まで特定することは難しいと」

「そういうことです」

「……過去に、思わぬ場所から魔物が出現したという記録は残っている。それを踏まえれば、君の言う懸念を抱く者は開拓最前線にも見受けられるはずだ」

「元々、最前線にいた人物……聖騎士テルヴァを始めとした者は、地底調査にリスクがあるということは認識しているでしょうし、ちゃんと理解はあると思うのですが……」

「今回起こった騒動は、北部へやってきた貴族お抱えの騎士……となれば、問題を引き起こすのはそういった者達か」

「彼らの行動次第で、残る脅威の討伐は大きく変わるでしょう……良い意味でも、悪い意味でも」

「できれば良い意味であって欲しいものだが……功を得ようと思い北部へやってきた者達だ。説得なども通じる可能性は低いため、私達としては静観する他ないが……とはいえ」


 と、ノークは一拍間を置きつつ、椅子の背もたれに体を預け、


「現状では、元々北部にいた者達だけで連携……というのも厳しい」

「元々、反目し合っていたのですか?」

「砦間で敵視し合っているところもある。結局のところ、討伐のためにやってきた貴族とそう変わらないのだ……その顔つきだと、東部では事情が違うようだな」


 指摘を受けてエリアスは苦笑する。


「ええ、まあ……そもそも東部では魔物が出現する場所が限定されており、複数の騎士団が常駐し戦果を得ようと争っているという構図ではありませんでしたから」

「騎士団のあり方を考えれば東部の状況が好ましいのだが、開拓は騎士が出世をしていく上でなくてはならないものとなっている。今更方針を切り替えて全てを国が管理するというのも難しく、現状で反目し合う状況は変わらないだろう」


 ため息をついたノークは、さらに自身の見解を述べる。


「多くの人員が開拓を行っているのは出世する可能性が極めて高いためでもある……国の方針としては開拓を続けていく以上、現状から体制を変えるのは無理だな」

「とにもかくにも、現状の関係性でどうにか対処するしかないってことですね」


 エリアスは応じつつ、極めて厳しい状況だと感じる。

「正直、地竜が思わぬ場所に出現したとしても……即座に対応というケースは、不可能ですね」

「そうだな、出現した時初めて、私達は危機的状況であることに気付くだろう……対応が後手に回ってしまうのは仕方がないにしろ、犠牲が出る可能性を踏まえると、備えはしておかなければならないか……しかし、できるのか?」


 ノークの言葉にエリアスは押し黙る――地竜は魔獣オルダーの並ぶ名前が付けられた存在。そんな相手に砦の戦力で対抗できるのか。


「……はっきり言うと、打倒は難しいでしょう。仮に私やジェミーの攻撃が通用したとしても、反撃により犠牲者が伴うことは確実かと」

「……そうか」

「ですが」


 と、エリアスはさらに続ける。


「東部では、大型の魔物と戦う際には連携で対応していました。地竜の能力がどれほどかはわかりませんが、連携の魔法により動きを止めることができれば、あるいは……」

「連携の……魔法?」

「複数人が同じ魔法を使用し、効果を高めることで大型の魔物にも通用するようになります」


 その言葉にノークは「なるほど」と一つ呟き、


「どちらにせよ、連携の訓練をしているならばそうした技法も必要になるだろう……訓練することは可能か?」

「一度ジェミーと相談してみます」


 そう言って、エリアスは部屋を出た。


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