表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/179

聖騎士の懸念

「……先日の戦いで、エリアス殿の勇壮ぶりはこの目で見ました。その実力ならば北部最前線でも活躍できるかと思います」

「そうか」

「場合によっては私自身の推薦、といった方法もあるのですが……」

「君には人事をどうにかできる権力があるのか?」

「私、というよりは例えば聖騎士テルヴァを介して、という方法ですね。有力な聖騎士と交流があるので」


(ほう、そういう方法か)


 エリアスは多少なりとも興味を抱いたが――


「……いや、強引に推し進めると君の立場が悪くなるだろう。最前線で戦力が欲しいというのは当然だろうけど、俺としてはあんまり波風立てたくないな。反発を生むと、俺の目標が遠ざかる」

「その目標とは? 私が聞けるような話なのですか?」

「そうだな……北部へ来た時気付いたんだが、東部の実情とかがほとんど伝わっていないことに気付いた。東部は開拓をしているわけじゃないし、目立っているわけじゃないけど、ちゃんと成果を上げたなら相応の報酬を上げて欲しいなと思って」

「今はそれが成されていない、と」

「政治的な要素含め、色々あってね」

「そうですか……そういう事情なら、変にいざこざがあれば目標が遠のく可能性もありますね」

「だろ? それに、俺は北部へ来て日が浅いからな。そういう意味でもまだ前に出るべきじゃないと思っている」

「北部全体の情勢などを調べ、政治的な状況を把握しつつ、立ち回りたいというわけですね」


 騎士メイルはエリアスの言葉を受け、状況を正確に理解する。


「わかりました。そういうことでしたら私から何か言及することはやめましょう」

「ああ、助かるよ」

「ですが、その実力の高さから考えて最前線でも欲しい戦力ではあります」


 メイルは続ける。その言葉でミシェナは興味を示すような表情となった。


(……俺の評価は高いみたいだな)


 エリアスは心の内で呟く。最前線で仕事をしている騎士からの言葉である以上、北部全体の騎士から見ても、実力が高いと考えて差し支えないのかもしれない。


「よって、聖騎士テルヴァには先日の討伐の件は詳細にお伝えしようかと思いますが、いかがですか?」

「もしかして、彼の依頼を通して最前線へ赴くという可能性があるのか?」

「あくまで可能性ですけど」

「……ノーク殿がどう言うかなあ」

「所属している人員が最前線へ派遣されるのは、砦の主としては良い話なのでは?」


 そうメイルは問うたが、エリアスは沈黙。途端、彼女は首を傾げ、


「何か問題があるのですか――」


 さらに質問しようとした時、彼女もどういう理屈なのか気付いた様子。


「……ふむ、なるほど。そういうことですか」

「瞬時に理解できることを考えると、君も政治的な出来事はきちんと把握しているみたいだな」

「私としてはあまり関わり合いになりたくはないですけどね……つまり、あなたの状況は主に政治的な要因で色々と障害があるということですか」

「そうだな。ノーク殿については砦の戦力強化を行うという方針で、俺はそれに助力しているから敵対しているわけではないよ」

「砦の主と関係のある誰かが原因というわけですか……話が複雑ですね」

「聖騎士になった俺は目を付けられたって話なんだが……」

「なるほど、事情は理解できました。ともあれ、次の戦いは間違いなく大きな戦いとなり、人間側は出し惜しみなどできないものとなるでしょう。特に地竜が相手ならば、なおさらです」

「魔獣オルダー以上に大変だと」

「敵は巨大ですからね……危険度のような定義の外にいる存在であり、だからこそ聖騎士テルヴァは可能な限り備えている」

「……わかった。ノーク殿には一応伝えておく。ただ、参戦できない可能性もあるから、そのつもりで」

「はい」


 ――そこからは、色々と情報交換を行って話が終了。ミシェナとメイルの両名はあっさりと砦から立ち去った。


「本当に情報が欲しかっただけのようですね」


 フレンが二人のことを見送った後に言及。それに対しエリアスは、


「聖騎士テルヴァが可能な限り備えているように、他の人も動いているということだろ」

「……地底を調べているということは、地竜を探している可能性が高い。本格的に戦闘となる可能性はあるのでしょうか?」

「どうだろうな、わからない。ただ、人間側が率先して動いている状況である以上、何が起こるか……地竜が誘い出されて地上に来るなんて可能性も、決してゼロじゃないと思う。ただ」

「ただ?」

「最前線で地底の調査をしていたが、実際に地竜が現れたのは町や村の近くでした、なんて危険性も存在する」


 エリアスの言及にフレンとジェミーの二人は沈黙する。


「地底はどんな風に繋がっているのかわからないからな……国はさすがに地底全体の調査までやっているわけではないだろうし、もし地竜と戦うつもりなら、その辺りについて確認をした方が良いかもしれないな――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ