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聖騎士の鑑

「現在北部最前線にいる聖騎士の中で、筆頭と言える人物はテルヴァ=ミリオンという聖騎士です。年齢は二十五歳で、輝くような金髪を持つ絵に描いたような、まさしく聖騎士という言葉を体現するかのような御仁です」

「べた褒めだな」

「事実、ルーンデル王国としての評価も非常に高い。過去に騎士達が集う決闘大会があったのですが、そこで優勝もしています。さらにカリスマ性も併せ持ち、最前線の指揮官として多数の騎士や勇者をとりまとめています」

「指揮能力も高く、さらに技量もある……聖騎士の鑑といったところか」

「そんな聖騎士テルヴァ殿に対抗するように、二人の聖騎士が最前線近くの砦にいて、開拓を進めています」

「二人……その三人は独立した形で開拓をしているのか?」

「開拓は国家の方針かつ、言わば出世レースの最前線でもあります。誰が功を立てるか、という競争心を煽りつつ、開拓を進めている」

「国としても容認しているというわけか……その二人の聖騎士についても情報はあるのか?」

「ありますが……聞きますか?」

「いや、今のところは関わることもなさそうだから問題はないかな。必要な時に聞くことにするよ」

「わかりました……現在テルヴァ殿は北部最前線の砦で指揮を執りながら、名前がつく残る脅威の対策を進めているようです」

「彼も討伐は行われると考えているのか?」

「それなのですが、彼自身はどのような判断を国がしても問題ないようにしているようです。やれることは全てやっておくというタイプらしく」

「完璧な聖騎士らしく、事前準備も抜かりはないと」

「はい。それに討伐を行わないにしても、準備したリソースについては開拓に回せばいいだけなので、それほど問題はないかと」


 エリアスは「確かに」と同意しつつ、フレンの言葉を聞き続ける。


「どうやら貴族達……つまり、討伐があると踏んで北部へ人を派遣している貴族達は、テルヴァ殿の動きを見て討伐が行われると考えているようです」

「テルヴァ殿にとってはいつものような備えだけど、それを他の人達は討伐が行われるという根拠にしているわけか」

「当のテルヴァ殿は困惑している、なんて噂もあります」

「……魔獣オルダー討伐から王都側の関心が高くなり、情報を集めた結果、テルヴァ殿が色々と動いている……うん、討伐へ動くかも、と推測しても仕方がない状況ではあるな。ただ、今は人が多すぎて人事なんかが硬直化しているらしい。その辺り、テルヴァ殿も困惑しているんじゃないか?」

「多少はあるようですが、さすがに貴族側としても最前線に向かってテルヴァ殿と話をする、といった行為はさすがに追い返される危険性もあってやってはいないようですね」

「最前線まで赴くのは気が引けるといった感じか……結果、探り合いが発生して後方が混乱していると」

「私達が難を逃れているのが不幸中の幸いですね」

「俺達のいる砦は後方過ぎるからな」


 エリアスは答えつつ、さてどうしたものかと考える。


(とりあえず、国側はどういう結論を出すか、それを待ってから行動してもおかしくはないな)


「俺達は引き続き騎士や魔術師達への訓練を行っていく……討伐が正式に決まった場合、どう動くかはノーク殿と相談だな。ま、俺が前線に出るとは思えないけど」

「私達の目的から考えると、是非とも討伐へ赴きたいところですが……」

「残る脅威のうち、一体は地竜だろ? さすがに魔獣オルダーの時みたいに一人で致命的な傷を負わせる、というのはさすがに厳しいだろう……」

「今回は集団戦になりそうですね」

「ああ、そうであればさすがに現段階の戦力で挑むのは自殺行為だし、討伐へ行くことはしないさ」

「……仮に、この砦の戦力で挑む場合はどうなるのでしょう?」

「さすがにノーク殿が動くことはないと思うから、あり得ない仮定ではあるけど……それでも考えるとしたら」


 エリアスは口元に手を当てつつ、考察を試みる。


「鍵となるのはルークとレイナ……そしてジェミーの三人か」

「討伐を行った三人ですか」

「俺とフレン以外で討伐の鍵となるのは、戦闘経験がある騎士達がどこまで戦えるか……だな」

「とはいえ、討伐したのは危険度二に到達していないレベルです。さすがに名前がついている敵と倒すのは――」

「だがまあ、準備はしておいた方がいいかもしれないな」


 そうエリアスが言う。それにフレンは眉をひそめた。


「何故……ですか?」

「あくまで、可能性だ。でも、もし次の敵が地竜であるとしたら……地底の魔物が敵であるとしたら、フレンも理解できるはずだ」


 その言葉に彼女も押し黙る。


「聖騎士テルヴァのように、やれることはやっておくべきだろうな……彼も地竜の情報は持っているはずで、地底の魔物が敵なら準備は入念にする……あらゆることを想定しているなら、その判断は正解だろうな――」


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