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二人の役割

 結界の補強を終えたエリアス達は、一度魔物がいる洞窟を離れ山を下りた。既に野営の準備はできており、山側へ警戒しつつ今日の戦闘は終了ということになった。


「戦果は上々というわけですね」


 エリアスから報告を聞いたフレンはそう応じると、山を見据えた。


「魔物は夜、活動的になるでしょう。配下を倒した人間がここにいるとわかれば、攻撃を仕掛けてくるかもしれませんが……」

「索敵に引っ掛からない魔物がいる可能性もゼロじゃないし、警戒はしないといけないな。とはいえ」


 と、エリアスは地面を見る。


「色々と仕込みはしたか」

「はい、これで魔物が近づいても察知はできます」


 ――それはフレンが東部で使用していた魔法。作業には今回討伐に同行した魔法使いの助力もあっただろう。

 それは魔力以外にも足音など、様々なものを感知して魔物が接近することを知らせるもの。索敵魔法は魔力を感知するだけなので、魔力を隠すような魔物に対しては見つけられない可能性が出てくるのだが、フレンの行った処置はどれだけ隠密に行動をしていても見つけることができる。


「見張りは用意するとしても最低限にできるだろうし、睡眠時間はそれなりに確保できそうだな」

「距離的に砦に戻ることもできますが」

「俺達が攻撃を仕掛けた結果を、近くで観察しないといけないからな。洞窟の入口に結界を張り、さらに補強もしたから大丈夫だとは思うが」

「へえ、面白い魔法ね」


 そこでジェミーがエリアス達に近寄り話し始めた。


「多角的な要素から魔物を感知する……か」

「わかりますか」

「魔法の研究をやっていた身としては、解析くらいはできるわよ……これ、あなたの魔法?」

「はい、東部で使用していたものです」

「ふむ……」


 興味深そうにジェミーは地面を注視。その様子を見つつ、エリアスはフレンへ尋ねた。


「野営準備は問題なさそうだが、俺は何かやっておくことはあるか?」

「食事の準備も進めていますし、特に必要なことはありません。エリアスさんは明日に備えて頂ければ」


 そこで、エリアスはルークやレイナの様子を確認。二人は何か話し合っており、もしかすると今日の戦いについて考察しているのかもしれない。


「……明日も二人には頑張ってもらわないといけないし、二人の体を休めることを優先するか」

「お二方の戦いぶり、どうでした?」

「元々訓練の時から結構な腕前であることはわかっていたが、予想以上に良かった。後は実戦経験を積んでいけば……」


 エリアスは言いつつ二人へ近寄って行く。


「ルーク、レイナ、今日の戦いについて感想は?」

「――自分がここまで戦えるとは驚きでした」


 最初に口を開いたのは、ルーク。


「最初は全力で剣を振っていましたが、慣れてくると魔物の魔力量が明確となり、ある程度力を抑えつつも倒せることだってわかりました」

「ルークの方は魔力を読む精度が高いみたいだな。ただ、それに頼ると気配隠しが上手い魔物と当たったら危ないかもしれない。常に全力を出せとは言わないが、余力を残して戦う場合は、敵の攻撃が回避できる余裕を常に持つ意識を持った方がいい」

「わかりました」

「レイナの方はどうだ?」

「私は……外皮が硬かったから大丈夫かと不安でしたけど、意外と楽に対処できたというか……」

「訓練をしていた思ったが、レイナの剣術は魔力を重きに置いているな。魔力の収束能力なんかが高く、他の騎士が同じ速度で振る斬撃よりも、魔力に厚みがある分だけ威力が高いみたいだな」

「そうなんですか?」

「そこを磨くと、より強力な剣をお見舞いできるようになる……それと魔力収束というのは体を強化することにも使えるし、応用の幅は広い。ルークと比較すれば、君の方が危険度の高い魔物と対抗できる可能性は高いな」


 レイナは自身の両手を見やる。本当か、と疑っている様子ではあったが、そんなことはないと反発することもなかった。


「今日の戦いぶりを踏まえ、明日二人の役割も決まった」


 エリアスが続けると、ルーク達へ視線を向けた。


「夜、何事もなければという前提になるが……戦いの中で、一回り大きい魔物がいただろう? あれがおそらく親玉だが……その親玉の討伐を、二人で行ってもらう」


 その指示は想定外だったか、二人とも驚き目を見張った。


「俺は洞窟内を警戒し、さらに凶悪な魔物がいないか警戒したい……もちろん、ジェミーの援護もある。それであれば、十分対処はできるだろう」

「……魔物の親玉について、危険度は?」


 質問をしたのはルーク。エリアスは先の戦いのことを思い返しつつ、返答した。


「危険度一は超えている。けれど、かといって危険度二までは到達していない。中途半端ではあるが、今日見た限りでは外皮などの構造は配下と似通っていた。二人は今日と同じようなパフォーマンスを出せれば、迎撃することができるはず」


 ルークとレイナは何も言わない。だが、今日の戦いによって経験を得て、親玉の存在に対しても恐怖はしていない。


「明日、状況を見て判断はする。だが基本的には二人で仕留めてもらう……それだけは踏まえておいてくれ」


 その言葉で、ルーク達は静かに頷いた。


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