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魔物との戦い

 洞窟から這い出てくる魔物を見て、ルークとレイナが緊張するのをエリアスは魔力の流れから理解する。

 群れとなって襲い掛かる魔物の姿に畏怖したのだろう――だが、彼らはすぐさま表情を戻し、魔力の流れも正常になった。


 よし、とエリアスは胸中で一つ呟いた後、魔物がいよいよ洞窟から出ようとして――先頭の個体が、結界の壁に激突した。次いで後続がその魔物に次々と衝突。とはいえ、甲殻を持つ魔物は潰れるようなことにはならず、少しよろめいた後、動きが戻る。


「一匹ずつ戦うのは理解したけれど」


 ここでジェミーがエリアスへ向け発言する。


「どう戦う? あなたが先陣を切る?」

「俺は結界を維持しつつ、洞窟奥を警戒する……魔物は、三人で迎え撃ってくれ」


 一匹の魔物が、結界に存在する穴を見つけた。そこから外へ出ることができると理解した個体は、這い出るように洞窟の入口を抜ける。


「ルーク、レイナ、訓練の時を思い出せ。本来の実力を出すことができれば、討伐できる」


 ――その言葉と共に、ルーク達は前に出た。魔物が一匹外へ脱し、ルークへ襲い掛かる。


 まず彼はその動きを見極め、かわした。そして攻撃によって隙を晒した魔物へ向け、ルークとレイナは同時に剣を薙いだ。

 魔力を大いに乗せた剣戟は、甲殻で覆われた魔物の体を両断することに成功する――二人はそれに少し驚いた様子を見せつつ、


「倒せますね、これは……」

「うん、そうみたい」


 倒せたことで、二人の表情から恐怖が消える。次いで二体目が洞窟から出てくる。今度は魔物が攻撃を仕掛ける前にルークが間合いを詰め、魔物の頭部へ一閃した。

 その斬撃は魔力と彼自身の体重がしっかり乗ったためか、やはり魔物の体をぶった切ることに成功。次いで現れた個体も、レイナの一閃によって対処。二人は確かな手応えを感じた様子。


「ジェミー」


 そうした戦いぶりを見ながらエリアスは名を呼んだ。


「二人の援護を頼む。道を塞いでいるとはいえ、魔物の這い出てくる速度が増せば対処が難しくなる」

「了解」


 彼女は従い、エリアスは洞窟を注視する。目に見える魔物達は全て危険度一程度の力しかない。


(ルーク達なら難なく対処できる……問題は、魔物の親玉が洞窟の奥にいることか)


 とはいえそれは巨大というわけでもない。洞窟入口から観測できる気配からすると、似たような個体だが魔力量が多い、といった形だろうと推察できる。

 エリアスが思考する間にも入口から出てきた魔物をルーク達が迎撃する。しかし、レイナが放った剣が魔物を仕留め損なった。途端、さらに這い出た魔物も襲い掛かり、ルーク達は対処に迫られた。


 だが彼らの動きに迷いはなかった――レイナは仕留め損なった個体を相手取り、ルークが新たに入口から這い出た魔物と戦う。互いが互いを守る形となり、双方が魔物を倒したのは同じタイミングだった。

 そこにさらなる魔物が入口から――と、ここでジェミーの援護が飛んだ。魔法によって放たれた雷撃が魔物を貫通し、あっさりと黒焦げになる。


「少し息が上がっているわよ」


 彼女の助言にルークは今気付いたかのようにはっとなった。


「すみません、呼吸を整えます」

「目の前にいる敵に集中することは良いけど、息が上がったりして動きが鈍れば致命的にもなるから、ちゃんと自分の体のことも考えないと」

「ありがとうございます」


 礼を述べたルークは息を整えた後、再び魔物と向かい合う。レイナについても同様に呼吸を戻し、改めて剣に魔力を込め迎え撃つ。

 その戦いぶりを見て、エリアスは大丈夫だなと心の中で呟いた。


(危険度一については問題ない……あの調子なら、複数体に襲い掛かられても対処はできるだろう)


 ならば危険度一以上の魔物の場合は――エリアスはそこで、洞窟奥から今までとは違う個体を捉えた。魔力量が多い上に、どうやら他の魔物と比べて大きい。


(親玉がお出ましか?)


 エリアスは推測しつつ、どう立ち回るかを思案する。


(体が大きいのであれば、結界は通れないが……破壊できるだけの攻撃力を持っているのか?)


「奥から何か来るわね」


 と、ジェミーもエリアスが感知した個体を観測したらしく、言及した。


「どうするの? 騎士さん二人はひとまず対処しているし、もう援護は必要なさそうだけど……」

「……俺が構築した結界を強化してもらえるか」

「わかったわ」


 彼女は指示に従う。何かしら反発があってもおかしくはないが、どうやらエリアスの指示が的確であると考えているらしく、淡々と動く。

 彼女の魔力がエリアスが構築する結界に付与された。それによって強固となった結界に対し魔物は反応。明らかに動きが鈍った。


(これで親玉の動きも変わる……か?)


 そう呟いたのだが、親玉はなおも洞窟の入口へと向かってくる。エリアスはここで自分が迎え撃つことも考慮に入れつつ、ルーク達へ指示を送る。


「魔物の数は減っている。引き続き迎撃を――いけるか?」

「大丈夫です!」


 ルークが最初の返事をする。次いでレイナは、


「こっちも平気!」

「なら魔物は任せた! ジェミー、親玉と思しき魔物を注意してくれ」

「了解」


 彼女もまた応じ――いよいよ注目していた親玉が姿を現した。


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