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調査と索敵

 翌日、エリアスはノークの部屋を訪れ、調査を行うと表明した。


「……魔物の調査?」

「はい、昨日の魔物について……砦の周辺で出現しないほどの危険度となれば、未開拓の場所で何かが起きて、砦周辺に魔物が出現している、という可能性があります」


 エリアスの指摘にノークの表情は硬くなる。


「つまり、危険度二の魔物が出た理由を探るというわけか」

「はい」

「……非常に危険ではあるが、昨日の戦いを見るに君ならば同様の魔物が現れても対応できそうだな」

「昨日の魔物は動きが読みやすかったのもありますが……危険だと判断すれば即座に退却しますよ」

「……わかった。異常事態であることは間違いないため、君に調査を頼もう。ただ、一人か?」

「可能であれば数名人をお借りしたいのですが」


 その言葉に、ノークは渋い顔をした――エリアスは即座にその心境を考える。


(危険度二の魔物は彼としては凶悪な存在。もし俺に同行する騎士や兵士が襲われたら……ということか)


「……しかし、砦の魔物を固めなければならないのも事実」


 ここでエリアスは方針転換を図る。


「許可が出れば私とフレンの二人で動きましょう」

「……彼女は戦えるのか?」

「身を守る手段は持っていますが、基本的には事務方です。しかし、東部では裏方の役割ですが戦場に出たことも」

「なるほど……」

「ひとまず、二人で調査を行ってみます。よろしいですね?」


 エリアスの問いにノークもとうとう頷き、


「わかった、是非とも頼む――」






「というわけでフレン、行くぞ」


 部屋に戻ったタイミングでフレンがやってきて、エリアスは説明を行いそう語る。結果、当のフレンは目を細めた。


「……フレン、どうした?」

「いえ、人員がいないことから私が駆り出されるのは理解できますし、構わないのですが昨日エリアスさんから指示された仕事はできませんよ」

「そこはゆっくりやればいいさ。別に期限があるわけでもない。それに、だ。魔物の調査の過程で最前線で戦う騎士とかに出会って話を聞けるかもしれないだろ?」

「希望的観測ではありますが……確かに、砦内にこもっているよりは有益かもしれません」

「騎士だけでなく『勇者』と話ができるかもしれないし……ともあれ最優先は魔物の発生源の特定だ。早速だが動くぞ」

「わかりました」


 エリアスはフレンを伴い砦を出る。幾人もの兵士や騎士に見送られ山へ向かうような形で歩を進める。

 その道中、やがて見えてきた森を見据え、そこに近づくとエリアス達は立ち止まる。


「まずは索敵だな」

「はい」


 エリアスは目をつむる。そして体の内に眠る魔力を呼び起こし、


「魔の領域を――暴け」


 声と共に、エリアスから魔力が発せられる。魔法が発動し、その効果は周辺に存在する魔物の姿を捉えるもの。

 エリアスは感覚で周辺の情勢を理解。それと共に目を開け、


「フレン、そういえば地図とか持ってきているか?」

「ありますよ」

「お、何も言っていないのにさすがだな」

「エリアスさんはもう少し色々考えて動いてください」


 その指摘にエリアスは苦笑しつつ、フレンから地図を受け取る。


「とりあえず砦周辺に魔物はいない。昨日の魔物がどこからやってきたのか、ということはわからないな」

「魔物の巣などはないと?」

「そういうのがあったとしたら、北部にいる騎士がとっくの昔に見つけているだろ」

「それもそうですね」


 エリアスは地図を眺めながら考える。


「うーん、どこからか山を下ってきたと考えるのが一番もっともらしい理由なんだが、あの魔物が一体だけと思えないんだよな」

「そうお考えになる理由は?」


 フレンが問うとエリアスはチラッと彼女を見て、


「勘だ」

「……本来ならため息をつくところですが、エリアスさんの勘は当たりますからね」

「一応、周辺の地形も確認しておくか」

「そうですね……ちなみにですが」

「ああ」

「山の方角へは行かれないんですか?」


 ――エリアスは「周辺」に魔物の気配はないと言った。だが、砦から少し離れた場所、北側には魔物の気配が漂っている。それは本来事務方であるフレンですら気づけるレベルであり、そちらが開拓の最前線にして、魔物の領域であることがわかる。


「どうしようか考え中ではある。それなりに距離もあるからな」

「私達の足なら行って帰ってくる程度ならば余裕ですが」

「……調査したいのか?」

「人と会わなければ私の仕事はできませんので」

「真面目だな……ふむ、とりあえず周辺の地形を確認してから考えるとするか」


 エリアスは歩き出す。それに続きフレンもまた歩を進める。


「フレン、そっちの見解でいいんだが魔物の出現、どう思う?」

「さすがに私達が来た事によるものだとは考えにくいと思うので、偶発的なものだという前提で推測をすると、前線側で何かあって魔物がここまでやってきた、と考えるのが妥当かと思います」

「魔物と戦った結果、何か刺激してしまって後方にもやってきたと」

「はい」

「俺としても似たような見解だが、ノーク殿はどう考えているんだろうな」

「慌てて報告書を作成していた様子なので、一両日中には王都へ報告をするとは思いますが」

「それで国側に動きがあったら俺はどうなるかな?」

「さあ……東部とはいえ最前線で戦っていた聖騎士がいるので、処置を任せるのでは?」

「でもその場合、俺が戦果を得ることになる。俺を飼い殺しにしたい人間からすると嫌だろ」

「そういった人間もさすがに魔物が人里まで下りてくるようなら、対処しろと指示すると思いますけどね」


 楽観的な見解を示すフレンに、エリアスは「そうか」とだけ応じつつ、前を歩く。


(しかし、ずいぶん面倒な話になってきたな)


 エリアスは内心でそう思う。それは魔物が出現したことではなく、政治的な話についてだ。


(聖騎士になったらそういうことも関わるんだろうなとなんとなく推測できていたが……あー、やだやだ)


 内心でそう考えつつも、足はしっかりと動き目的を果たそうとする。


(ま、いいや。とりあえず今は調査調査、と)


「フレン、疲れたら言ってくれ」

「このくらいであれば問題ありませんよ」


 そんなやりとりをしつつ、エリアス達は地形確認を進めた。


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