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威圧感

 ――エリアスが行った依頼について、返答が来たのは四日後のことだった。ギルド側の連絡によると、ランクが高い人間ではなく保有している魔力量で該当する人物、魔法使いが現れたとのこと。

 ギルドランクそのものはそれなりにあるため新人というわけではない――エリアスはひとまずその人物を確認しようと町のギルドを訪れる。そこで対面した人物は、


「どうも」


 なんだか威圧感を感じさせる女性――見た目は二十歳前後の黒髪女性。格好は黒いローブで全身が真っ黒という出で立ちで、所持する杖さえ黒い。

 黒ずくめということで、なんだか近寄りがたい雰囲気を発しており――同時にエリアスは舐められないように高圧的な空気を出しているのかもしれない――と、思ったりした。


「……えっと、あなたが依頼を請けたい人間で間違いないか?」

「ええ、そうよ」

「名前を確認させてくれ」

「ジェミー=ディラサよ。ジェミーでいいわ」


 ギルドから言われた名前を一致しているため、エリアスは頷き話を進めることに。


「今回は調査ということで、魔物と交戦する可能性は低い……と思うが、それでも魔物の巣に近づくことになる。それは問題ないか?」

「ええ、何なら魔物と交戦しても良いくらいだけれど」


(好戦的だなあ)


 内心でぼやくエリアスだが、さすがに無茶をして魔物を招き寄せるなんてことをはしないだろうと思いつつ、


「わかった、依頼を請けた場合、あなたの仕事は索敵魔法の維持となる。使用する魔法制御をあなたに託し、調査を行う」

「わかったわ」


 承諾するジェミー。エリアスはここで、彼女を見つつ一つ言及する。


「……ギルドの人間から聞いたけど、北部関連の依頼を請けたのは初めてらしいな」

「そうね。今までは王都周辺で活動していたから」

「今回の仕事は、北部の最前線とは違うけど……これを足がかりに色々と仕事を請けようとしている、といったところか?」

「ええ、そんなところ」


 ――ここでエリアスは推測する。ギルドランクとしてはそれなりの人物だが、彼女くらいのランクは北部にゴロゴロいる。よって、北部で活動したいが仕事が得られず、今回北部最前線とは異なるが、引き受けたということか。


「なるほど、わかった。魔物と交戦する可能性があることから、ちゃんと指示を受けてくれること。それが条件だがいいか?」

「ええ」


 頷くジェミー。最初こそ威圧的だと感じたが、エリアスは問題ないだろうと判断し、彼女を雇うことにした。






 ジェミーには調査へ行う時に連絡するとして、エリアスは砦へ戻りフレンへ調査準備を加速するよう依頼。ノークへ報告も行い――そこから一気に調査へ向け動き出した。

 結果的に二日後には準備が整い、エリアスはジェミーへ連絡し、所定の場所で合流することに。助っ人が来たことで一気に話は進み、調査へ赴くこととなった――


「それじゃあ、ナナン山へ」


 エリアスが号令を掛ける。そこは依頼を行ったギルドがある町。ジェミーとも合流し、一行は山へと足を向ける。

 メンバーはエリアスとフレン、雇ったジェミーに加えルークとレイナ、そして物資を運ぶ役割として兵士が二人と合計七名。索敵魔法を行使さえすれば調査は滞りなく進むとして、日帰りのつもりであり野営準備などはしていない。


 道中は何も問題なく進み、その途中で聞き込みをした農村へと立ち寄る。聞き取り以降でナナン山に変化はないか確認したが、遠目から見て何かあったわけではなく、魔物の声が聞こえたわけでもない、とのことだった。

 よって、魔物の動きは以前の調査前から何も変わっていないと判断。そのままナナン山へと進み続けた。


「――依頼を請けた時に思ったけれど」


 歩いていると、エリアスへジェミーが声を掛けた。


「ずいぶんと変わった場所の調査をするのね」

「本来は、別の任務の途中だったんだ。先日、魔獣オルダーの討伐があったことは知っているか?」

「ええ、知っているわ」


 途端、少し声音が変わったのをエリアスは理解する。何か魔獣と因縁があるのかと疑問に思ったが、詮索はせず話を進める。


「魔獣が出現した影響で、その瘴気により魔物が発生する場所なんかが新規に出現していないかを確認するために、所属している砦の周辺を調べていた」

「その中でナナン山に魔物の巣があるとわかったと」

「そうだ。まあ人里から距離はあるし、今まで魔物の姿をはっきりと確認した人がいないから、放っておいても問題は出なさそうだが……面倒事になる前に調べておく、というのが国の方針だ」

「そこで魔物の詳細を確認するために今回調査をすると」

「その通りだ」

「……名前を見た時に思ったけれど、あなたは魔獣オルダーの討伐に貢献した聖騎士でしょう?」


(……噂を耳に入れたのかな?)


 エリアスはそう胸中で思いながら、首肯した。


「そうだ」

「てっきり最前線にいるのかと思ったけれど」

「あれは事前に仕込んだ策が功を奏し、たまたま俺に戦果が回ってきただけでの話さ。それに、俺一人では対応できなかった。色々な人の力を借りて達成したわけだし、俺だけの手柄というわけでもないさ」


 ――そこで、エリアスはミシェナのことを思い出す。彼女は現在砦にいない。北部の最前線で、魔物と戦っているはずだった。


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