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中年聖騎士は、気付かぬうちに武を極める  作者: 陽山純樹
第一章

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武を極める

 エリアスは気配を探りながら討伐隊の状況を確認していく。魔獣オルダーは人間の領域に足を踏み入れ、それと共に国側が用意した魔法によって退路を断たれた。作戦通りオルダーは魔物の領域へ戻ることなく、人間達が待ち受ける場所へと近づいていく。

 そして、エリアス達は作戦通り包囲を狭めていくように動き始めた。魔獣オルダーがそれに気付いたのかは不明だが、包囲そのものは成功し確実に魔獣を追い込んでいる。


 そして、最前線では魔獣と騎士達が交戦を始めた。エリアスの耳にはどこからか喚声が聞こえてきた。


「始まったようね」


 ミシェナが言う。エリアスは頷くと、


「国は可能な限り対策を立てている。少なくとも真正面からの激突で負けるようなことにはならないだろう」

「歴戦の勇者とかもいるからね」

「この状況で魔獣を倒すことができるのか。現在時点で作戦が機能し逃げる様子は見せないが、さすがに危機的状況に陥ったら、逃走に全力を尽くすだろう」

「……私達も討伐を行うために準備はしたけど」


 と、ミシェナはエリアスへ言う。


「本来なら、今の戦いで終われば幸いよね」

「そうだな、現状で歴戦の勇者や騎士がいるのなら、因縁の相手とはいえ決着がつくかもしれない」

「……そういえば、一ついい?」


 ここでミシェナは話題を変える。


「エリアスは魔獣オルダーの情報を得て、罠を選んだよね?」

「ああ」

「そういう情報を国へ伝えようとは思わなかったの?」

「……あくまで俺が討伐する場合有効だと思う罠を選定しただけだし、国に言っても聞き入れてはもらえないさ。そもそも、現時点で俺にそこまでの発言力もないからな」


 エリアスは肩をすくめつつ、語っていく。


「東部で二十年以上戦ってきたけど、北部では新参者だからな。聖騎士、という肩書きを得たとはいえ、実際は単なる騎士とそれほど変わらない。周囲の目が少し違う程度だよ」

「……そんな立場を、エリアスは納得しているの?」

「完全に納得しているわけじゃないさ。ただまあ、東部ではひたすら仕事の日々だったし、国が俺に対しどういう思惑を抱いていようとも、後方支援役としてゆっくりするのもいいかと考えていたんだが、情勢がそれを許さなかったな」

「そう……エリアス、あなたが目標としているものは何?」

「急にどうした?」

「単純な興味。作戦開始まで暇でしょ? 雑談のつもりで話をしてくれればいいよ」


 そう言われ、エリアスは少しだけ沈黙したが――やがて、


「俺の目標は一つ。武を極めることだ」

「それは剣術? 魔法?」

「全て、だ。といってもあらゆる剣術を習得し、魔法を扱えるようになるというわけじゃない。いかなる魔物が出てきたとしても、倒すことができる実力――戦う相手が魔物と人間とでは大きく違うけど、俺は魔物相手に武を極めたいと願っている」

「なるほど、ね……でも、肉体的なピークは通り過ぎちゃったでしょ?」

「それ、フレンにも言われたよ。でも昔より今の方ができることも、倒せる魔物の種類も増えている。現在進行形で、俺は成長できている……なら、そうした目標を持っても構わないだろ?」

「目標……か」

「そういうミシェナはどうなんだ? 勇者となり、北部へやってきたということは何かしら考えがあるのかもしれないが」

「高尚な理由があるわけじゃないよ。自分の技量を試したい……どこまで通用するかを確かめたいというのが一番かな。後は、他の勇者に会ってみたいとも思ってる」

「確かめてどうするんだ?」

「自分がまだまだだと思うなら、たぶん剣を振ることになるよ……エリアスみたいに武を極めるとまではいかないけど、強い敵と戦って成長したいという願いは持っているし」

「そうか」


 ――強くなるための目的までは尋ねなかった。それは彼女も同様だ。


「武を極める、か……それはエリアス自身が納得いったら終わり?」

「そうだな……北部へ来て思ったのは、俺は東部に居続けたことで色々と世間知らずな面もあるなということだ。多数の騎士や勇者がいるこの北部なら、武を極めるために必要なものが手に入るかもしれない……そういう意味で、北部へやってきて良かったと思ってる」

「でも、任されたのは後方の砦」

「まあ最前線でないことは予想していたし……それにさっきも言ったが、ゆっくりしようかなと思っていたんだ。むしろ後方の砦であれば好都合だっただろう。英気を養って、改めて武を極めるために剣を握ろうと考えていたんだが――」


 そこまで語った時、戦場に変化が。どうやら魔獣オルダーは多数の攻撃を受け、移動を開始した。


「ミシェナ、話の途中で悪いが魔獣オルダーも何かしら動いた」

「決着がつくことはなさそう?」

「ああ、包囲を狭められている以上、どこへ逃げても騎士に狙われるわけだが……俺達も動けそうだ。フレン」

「はい」


 名を呼ばれフレンは即座に返事をした。


「協力者と連絡を取り合い、罠を張る準備をします」

「ああ、頼む……さて、ここからは魔獣次第でいくらでも戦況は変化する。フレンは常に連絡を行い、協力者の位置を確認してくれ。ミシェナはフレンの護衛を一旦お願いしたい」

「うん、了解」

「俺は魔獣オルダーの動向をより正確に捉える……俺達もいよいよ本番だ。フレンもミシェナも、気合いを入れてくれ――」


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