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準備と人員

 エリアス達が仕事をこなす間に、魔獣オルダーに関する情報も見聞きすることとなった。どうやら魔獣は開拓最前線に幾度か出没し、なおかつ赤き狼が出現した位置に対し頻繁に目撃情報が上がっている。

 本来魔物は狡猾であれば人間との争いは避ける――戦う相手としては面倒であるため、人間を見たら魔物の領域へ引き返すのが一般的なのだが、どうやら魔獣は違うらしい。


「この違いについては魔獣オルダーを調査している人も意見が分かれているそうですが」


 砦に戻り、エリアスは自室でフレンからの報告を聞く。


「過去における討伐のタイミングでも、魔獣オルダーは人間が開拓している領域に幾度も足を運んでいる……何かしら理由がある、というのが国の見解のようです」

「正直、魔物の行動動機なんて探っても意味はない……と思うんだが」


 エリアスは腕を組みつつ、自身の考察を語る。


「五十年……それだけ長く生き続けた魔獣だ。何の意味も無く人間の領域に来るというのは考えにくい……ならばどういう理由が、と色々と考察するのも当然だが」

「……私達には『ロージス』の一件があります」


 フレンが述べる。それでエリアスは頷き、


「もし『ロージス』みたいな存在がいたら話は変わってくる」

「いる、と思いますか?」

「東部で『ロージス』が出現した時、俺達は極めて例外的な存在だと考えた。しかし、よくよく考えれば世界の六割は魔物の領域なんだ。俺達が知らないことの方が多いだろう。となれば『ロージス』のような存在が多数いたって不思議じゃない」

「……もしいたのであれば魔獣オルダーが行動する理由も説明できますが、ああした存在が顔を出す可能性はあるでしょうか?」

「さすがに姿は現さないだろう。俺達だって『ロージス』と遭遇したのは偶然の産物だ。地底の調査……それによって『ロージス』は仕掛けてきた」

「魔獣オルダーを討伐する過程で深追いすると、さらに凶悪な存在に辿り着く可能性がありますね」

「……俺達の推測が正しいのなら、オルダーを倒しても代わりみたいな存在がまた現れるかもしれないが、その時はその時だな」

「はい、まずは魔獣討伐に注力するべきでしょう」


 結論を出し、エリアスは深々と頷いた後、


「それで、情報は……」

「はい、可能な限り調べました」


 そう言いながらフレンはエリアスへ資料を渡す。


「必要だと思われる内容は網羅したと思いますが……」

「……うん、これなら十分だな。すぐにでも準備はできそうだ」

「なら準備を進め、後は討伐の日まで待つ、でしょうか」

「もう一つやらなければならないことがある……罠の準備については可能だが、討伐が始まってから仕掛けるとなったら、人員が必要だ」

「人手が必要なことは以前も言っていましたね……ただ、どこから引っ張るか。いっそのこと、東部へ連絡しますか?」

「それは最終手段だな。可能であれば北部の人間から協力者を得たいところだ」

「……ミシェナさんの知り合いから引っ張るということも?」

「一応考えてはいる。ただ、それなりの地位にいるなら面倒なことになりそうな気もする」


 そう言いつつ、エリアスは頭を悩ませる。


「仕事で色々と物資を輸送していた時、勇者や騎士を見て回ったけど……罠の準備ができそうな人もいるにはいたが、さすがに俺が話し掛けて依頼を持ちかけるというのは、面倒事を呼び寄せるリスクもあるからな……」

「ミシェナさんも新人勇者ということで、知り合いも少なそうですしね」

「とはいえ彼女に相談するのことも考慮に入れよう……あ、そういえばミシェナから連絡があった。三日くらいでこっちに戻ってくると。なおかつ、同行者もいる」

「ノーク殿に説明はしましたか?」

「話は通しておいたが、ミシェナからも言われたらしく迎え入れるとは言っていたよ。ただ、なんだか複雑そうな表情をしていたけど……」

「それを聞く限り、協力を仰ぐのはリスクがありそうですね」


 ここでエリアス達は同時にため息をついた。


「討伐の目処は立っているんだが、さすがに北部へ来て日が浅い俺は何かをやるにしても制限が掛かるな」

「そこは仕方がありませんよ……ともあれ、やれることを進めていきましょう」

「そうだな……フレン、今日の予定は?」

「物資の輸送指示が来ています。ただ、今回は少し特殊です」

「特殊?」

「エリアスさんを指定しています。なおかつ荷物自体も小さい物です」

「……聖騎士という立場から、重要そうな物資を運ばせようとしているんだろう。大規模魔法の触媒とかかな?」

「大規模魔法、ですか」

「どんなものを想像しているかわからないが、索敵魔法とかで魔獣オルダーの位置を補足するだけでもかなり広範囲に魔法を展開させないといけないから、触媒もそれだけ高価になるぞ」

「なるほど」


 ――触媒とは、主に魔法を使用する際に利用する物を指す。人間が持つ魔力量には限界があるため、それを超えた強力な魔法を使用する場合、開拓によって手に入った魔力を含む素材などを利用し、人の魔力量では使用できない魔法を扱えるようになる。

 杖を持つ魔法使いなどは、先端に埋め込まれた宝石――あるいは魔石と呼ばれるものを媒介して魔法を行使するケースもある。エリアスはそうした触媒の類いだろうと予想しつつ、


「フレン、場所は?」

「開拓最前線に位置する砦です」

「勇者や騎士が多数いるだろうな。望みは薄いかもしれないが、俺達に手を貸してもらえる人がいないか、探してみようか――」


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