表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勇者パーティーVS歴代最強魔王ジェノサイド・イービル ~勇者パーティーに加入している武闘家が主人公です。あと彼は行方不明の妹を探しています~

作者: 小鳥遊 悠治

 歴代最強の魔王ジェノサイド・イービル。勇者パーティーでは絶対に勝てない要素しかないやつを倒すには勇者パーティーから脱退するしかない。今はアイテム『女神の聖域』の効果で魔王はこちらに攻撃できないが、それはこちらも同じだ。


「……なあ、お前ら。まだ死にたくないだろ? こいつは俺がなんとかするから、お前らは故郷に帰れ」


「ふざ、けるな! ここで逃げたら……何もかも終わりなんだぞ!」


「そうよ! 私たちがこいつを倒さないとこの世界は!」


「二人はこの戦いが終わったら結婚するんだろ? 歴代最強の勇者と歴代最強の魔法使いの子どもを見られないのは残念まが、こいつを倒すには誰かが勇者パーティーから脱退するしかないんだよ」


「……行方不明のお前の妹は誰が探すんだ?」


「戦士、俺は今日ここで死ぬから、それはお前に任せていいか?」


「……お前はそれでいいのか?」


「ああ」


「……そうか。分かった」


「盗賊、お前の手癖の悪さに何度も助けられた。魔物の体の一部とか武器とか盗んできてくれてありがとう」


「それだけが取り柄だからな……」


「そうだ、お前はこれからもその特技を活かしてみんなを助けてやってくれ」


「……おっ、そろそろアイテムの効果が切れるな。腹黒双子姉妹……いや、賢者と僧侶、二人に頼みがある」


「何?」


「なあに?」


「俺にお前らが使えるバフを全部かけてくれ」


「あんたをいじめられなくなるから、やだ」


「お姉ちゃん、最期なんだから言うこと聞いてあげようよ。あっ、ごめんなさい……」


「気にするな。呪いでそうなってるんだから。えっと、じゃあ、頼む」


「……やだ」


「お姉ちゃん、泣かないで。ほら、早くしないとこのパーティー全滅しちゃうよ」


「……死んだら殺す」


「お姉ちゃん、死んだら殺せないよー。まあ、不死鳥だったらできるけど」


 なんだかんだ言いつつ二人は俺に二人が使えるバフを全て俺にかけてくれた。


「みんな、ありがとう。商人と遊び人のカップルにも俺のこと伝えておいてくれ。えっと、本当は言っておきたいことたくさんあるんだけど、そろそろ時間だから無理そうだな。じゃあ、最後にこれだけ言わせてくれ。みんな! 今日まで本当にありがとう! お前らと過ごした日々は俺の最高の宝物だ! それじゃあ、いってくる!」


 アイテムの効果が切れると同時に俺は自分の命を燃やして力に変えた。人生で一度しか使えない大技だから当たっても当たらなくても俺は確実に死ぬ。だけど、それでみんなが……世界が助かるのなら俺は喜んでこの命を捧げるよ。勇者パーティー全員に生命エネルギーや魔力も透明にできる透明魔法がかかっているからその効果が切れるまではみんなの安全は保障されている。


「ジェノサイド・イービル! お前は俺が……いや、俺たちが倒す!!」


「ケトアヅ! ケトアヅ!!」


 戦いが始まってからこいつはずっと同じ言葉を発している。それが何を意味するのかはさっぱり分からないがきっと殺すとか倒すみたいな意味なんだろう。


「あれ? 攻撃してこないな。そうか、お前は勇者パーティーにしか攻撃できないんだな!!」


「ケトアヅ! ケトアヅ!!」


「なんだよ! 伝えたいことがあるなら俺に分かるように言えよ!!」


「ケトアヅー!!」


 俺たちはジェノサイド・イービルの胸にある真っ赤なコアをみんなの拳で殴った。


「いくぞ! みんな!! ファイナル! オールエナジー! マキシマム! フル! バーストォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「キィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 コアに亀裂が入り、それは徐々にコア全体に広がっていく。


「終わりだ。俺もお前も……」


「……タス、ケテ」


「え?」


「……オニイチャン」


「そ、そんな……どうして……どうしてお前がここに……」


 魔王が消滅する直前、俺は魔王のコアの中に行方不明の妹がいることに気づいた。


「おめでとう! 君が次の魔王だ!!」


「くそ! 情報量が多すぎる! だが、残念だったな! 俺はもうすぐ死ぬ!! 確実にな!!」


「そうか。では、お前にこれをやろう」


「ぐっ! な、なんだ!? これは!!」


「お前の体に不死鳥の羽を刺した。これでお前は妹同様一生死ねなくなった! では、そろそろ魔王になってもらうとするか」


「や、やめろ! 俺は魔王になんかなりたくない!!」


「魔王を倒すと次の魔王になる。まあ、魔王クラスの魔力を持っているだけでも魔王になるがね。つまり、それらはこの世界のルールだ。ルールには必ず従わなければならない。さぁ、勇気ある武闘家よ、早くこの私『魔王の鎧』と一つになりたまえ。それとも兄妹仲良く魔王になるか? そうすればずっと妹のそばにいられるぞ」


「お、俺は……」


「しっかりしろ! 武闘家!!」


「勇者! お前、なんで!」


「私もいるわよ!!」


「魔法使い!? なんで、どうして……」


「そんなの決まってるだろ! 勇者パーティーにはお前が必要だからだ!」


「戦士……」


「こいつの心は俺が盗む」


「盗賊……」


「こいつは私のおもちゃ、誰にも渡さない」


「お姉ちゃん、これは私たちのおもちゃだよ」


「賢者……僧侶……」


「私たちもいますよ!」


「やっほー! みんなー! 久しぶりー!!」


「商人……遊び人……」


 二人の手には転移が使える貴重なアイテムが握られている。


「邪魔をするな! 世界のルールに従えー!!」


「武闘家! こいつの話は聞かなくていい! お前は俺を……いや、俺たちを信じろ!!」


「みんな……。よおし! 全員でこいつを倒すぞ!!」


『おー!!』


「世界のルールに従えー! 従わないものは死刑だー!!」


 魔王の鎧に付与されていた勇者パーティーでは絶対に勝てない不思議な力は俺の妹のものだったため俺たちの猛攻でなんとか倒せた。

 それから千年後。


「はい、お兄ちゃん、あーん♡」


「あ、あーん。もぐもぐ……」


「どう? おいしい?」


「あ、ああ」


 俺は実家で妹の手作りの料理を食べていた。


「妹よ、そろそろお嫁に行ったらどうだ?」


「不死鳥の羽が抜けたら行くよー」


「それ、一生無理じゃないか?」


「そうだねー♡」


 あの日、俺たちは魔王の鎧から色々聞き出した。

 まず魔王の鎧は世界に一つずつあること。この世界は神が作ったということ。俺がこの世界のコアだということ。それから俺の妹が魔王の鎧が進化したものだということ。俺はそれくらいしか知らないが、他にも色々聞き出したらしい。

 その後、俺以外の勇者パーティーは魔王の鎧を脅し……説得して不死鳥の羽やら不死鳥の涙やらを受け取り、いろんな世界の魔王の鎧を回収しているようだ。

 俺はこの世界のコアなのでこの世界から出られない。しかし、できることはある。凶暴な魔物の討伐や友好的な魔物の保護、冒険者の育成や畑仕事。あとは……まあ、要するに毎日忙しくしているということだ。一応、モテはするが妹が全て追い払っている。


「ねえ、お兄ちゃん。子どもは何人欲しい?」


「実の兄妹は結婚できないぞー」


「知ってまーす。でも、あと千年くらいしたら法が変わりそうだよね。そしたら」


「それまでに不死鳥の羽抜けてるといいな」


「お兄ちゃんとずーっと一緒に生きられるんだから一生このままでいいよー♡」


「お前はそれでいいのか?」


「うん♡」


「そうか」


 あの日、もし俺が何もしていなかったらおそらく勇者パーティーだけでなくこの世界は消滅していただろう。だが、俺はあの日動いた。怖かったけど、みんなのために頑張った。勇気を出して一歩、また一歩と前に進んでいった。またあんなことになったらどうしようとたまに考える時がある。でも、多分何度そういう状況になっても俺はあの日と同じことをする。確信はないけど、そんな気がする。


「お兄ちゃん、これからもこの世界を一緒に守ろうね」


「ああ!」


「大変だ! 武闘家! 森に魔物が現れた!!」


「分かった。すぐに向かう」


「私も行くー!! チェーンジ! アルティメット・デーモンキングアーマー!!」


「またこれか。これ装備すると想像以上に色々強化されるから戦いづらいんだよなー」


「お兄ちゃん! 早く行こう!!」


「ああ、そうだな。じゃあ、行くか!!」


「うん!!」


 続く?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ