表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/89

6話

「いえ、殿が呂布を討てば我らの勝利でござろう。ここに至っては私自身の問題は二の次です」

「ふむ、ではそうしようか」

それを聞いた劉備は迷わず返事をする。

その答えを聞いた関羽が嬉しそうに劉備に近寄ろうとした瞬間。

「ならぬな……関羽殿よ」

呂布奉先はそう言うと目にも止まらぬ速さで槍を繰り出し関羽を貫いたのである。

あまりの出来事に諸葛亮も関羽本人も全く反応する事が出来なかった。

諸葛亮が言葉を発するよりも早く呂布は関羽を刺し殺してしまっていたのである。

「関羽!!」

慌てて駆け寄る劉備。

そんな劉備を見据えると呂布奉先は言う。

「兄上よ!せめて一騎打ちで戦ってくれませんか?」

一瞬躊躇した劉備だったが、すぐに構えて答える。

「わかった……いいだろう」

そんな劉備の反応に満足げに頷くと、呂布はそのまま槍を振りかざす。

それは一瞬であった。

目にも止まらぬ速さで繰り出される突き技によって、劉備は為す術もなく切り裂かれるとその場に倒れる。

関羽の血を浴びて赤く染まった劉備を見下ろしながら呂布奉先は言う。

「本来なら俺が劉備軍を預かるはずだったのになぁ」

そんな呂布の言葉に諸葛亮は身体を震わせながら答える。

「どうしてこのような事をするのですか?何も見殺しにする必要はないではありませんか?」

その問に対して呂布は答える。

「知らん……ああそうだ、関羽の遺体を魏続殿の所に届けてやれよ」

それだけ言うと呂布は行ってしまったのである。

(一騎打ちにしたのはこのためか!?)

諸葛亮はその事を考えると悔しさで唇を噛んだのだった。

【魏続陣内】

劉備軍の敗退と関羽の戦死はすぐに魏続軍に伝えられた。

その事を一番悲しんだのは兵ではなく副将として支えていた趙雲であった。

「阿斗様。関羽殿が死んだというのは本当?それに行ったのは呂布奉先?だが事実としても距離がおかしい」

魏続の陣中に呼び出された趙雲は一人その場で自問自答していたのである。

そんな趙雲を心配した魏続が近づいて優しく話しかける。

「私は2日前呂布奉先と戦っているのだ。だからこそ距離がおかしいのだよその話が本当であれば劉備の場所に向かう事など無理だ」その魏続の気遣いに趙雲は笑顔を見せると答える。

「それはそうでございますな(笑)」

「うん、お前の事を信頼してはいるが呂布奉先と戦い生き延びている者と戦えばお前でも殺されるぞ?何せあの関羽を倒した男だからな」

そして二人はお互い見つめ合うと笑い合った。

するとそんな二人の前に張飛が現れたのである。

驚く魏続に対し趙雲は言う。

「その呂布奉先は本物の呂布奉先なのか?それとも偽物なのかということを私が言いたいのだ」

「どういう意味だ?」

張飛が尋ねると趙雲は答える。

「私は関羽殿と共に過ごした長い日々の中で、あのお方の優しさを知っているつもりだ。だからこそ劉備軍があれほど一方的に敗北したことが信じられないのだ」

魏続はそれについては何も答えられずにいた。

そんな魏続を無視して張飛が言う。

「あやつは基本的に罠などは好かぬはずじゃ。しかし、兵糧を絶たれたというのはどうであろうか?恐らく幻術か何かなのか?」

「ふむ、張飛殿がそこまで言うのであれば……一度趙雲に様子を見てきて貰おうではないか」

魏続の言葉に対して張飛は嬉しそうに答えた。

「では、私の部隊の者は呂布奉先に勝てると思っていてもよろしいでしょうか?」

魏続の言葉に張飛は少し考えた後答える。

「関羽の首と共に劉備の首を献上すればおそらく大丈夫であろう」

そんな答えを聞いて趙雲は急いでその場を後にしたのであった。

【陣外】

趙雲が外に出ると既に戦場には火の手が上がっていた。

「しまった!このままでは呂布奉先に追い付けなくなるぞ」

趙雲はすぐに馬に乗って呂布の後を追う事にしたのだが、そこに前方から一人の文官が近づいて来た。

その文官を見た瞬間、趙雲は全てを理解する事になる。

「おお、この様な所でお会いできるとは光栄にございますな大司馬殿」

そんな声に対し文官は不気味な笑顔を見せながら答える。

「大司馬か……ふふふ、ここまで来た褒美に少しお前に話をしてやろう。しかし残念ながら私もそんなに長くはここに居れないのでな手短に話そう」

そして文官は趙雲に近づくと小声で言う。

「例の場所へ向かえ」

その言葉を聞いた趙雲はすぐに動き出すのである。

【野営地】

夜になりその日の作業を終えた張飛と魏続の前に現れた文官が近づくと言った。

「我々は一足先に帰るぞ」

その言葉を聞いて魏続は答える。

「我々が残って戦うのを期待していたのではないか?」

そんな魏続に対し文官は首を横に振りながら答える。

「我々は兵士ではないからな……あまり長く居残れば怪しまれてしまう」

それを聞いた魏続が答えようとする前に張飛が尋ねたのであった。

「呂布殿はどちらに?」

その問いに驚く二人は文官を見る事しか出来なかったのだが、それに答えたのは文官ではなかった。

「趙雲と共に帰ったよ」

そう言ったのは魏続と同じ副将として進軍していた法正だったのである。

「劉備はどこにいる?」

そんな張飛の問に魏続が答える。

「魏続、あんた何を考えているんだ?」

魏続の問いに答えず張飛が言う。

「質問に答えよ!」

そんな怒りの言葉に対し法正は静かに言ったのである。

「どうせ、お前らは関羽の首の代わりに俺達を生け捕りにして曹操軍に行こうと考えていたのだろう?」

その問に対して魏続は何も答えない。

張飛はそんな法正を睨むとこう続けるのであった。

「ここで儂等が逃げたら我らは曹操軍に捕らえられるだろう……お主らの命はないのじゃぞ」

「はい、その通りでございます」

そう言うと法正は不気味な笑顔で答えるのであった。

【呂布陣内】

張飛の予想通り曹操軍は呂布奉先と軍師である程イクだけを連れて逃げ始めていた。

そんな中、程イクは副将である黄忠を愛馬である赤兎と共に置き去りにしたまま全速力で呂布の後に続いていた。

そんな速さについていけたのは貂蝉ただ一人だけであった。

「ば、化け物か……」

その問に答えられるものはいなかったのである。

こうして呂布奉先と張飛は曹操軍を逃がすことになったのだ。

張飛達は急ぎ劉備の陣へ向かい天幕の中へ入って行ったのだが中には死体が二つと一人の遺体だけが残っていたのである。

「劉備はどこに行ったのだ!?」

張飛が周りを見渡す中、突然後ろから肩を叩かれる。

張飛は反応して素早く距離を取ると叫ぶのであった。

「誰だ!」

そこに立っていたのは死んだはずの関羽だったのである。

「どうしてお前がここに……いや、もしやお前は……」

張飛の言葉を聞いた関羽は静かに答える。

「私が生きている事でそんなに驚くのでしたら私の首はとうに討ち取られたのであるな」

「はい呂布奉先により討ち取らまじでございます」

「なるほど歴史の闇が動き出したか」

「はい?」

「こちらの話だ。しかもやったのが『呂布奉先』となるとな些か難問だ」

「その呂布奉先とは誰なのでしょうか?どこにいるかも分かりませんが、そいつを追えば良いのですね」

張飛はそう言うと関羽に向かって構えた。

そんな張飛の目の前に孫策が現れたのだ。

「その男を殺す事は私が許さないぞ」

その言葉に対して関羽が答える。

「孫策伯符か……わたしは」

「もう1人の関羽雲長かな?歴史に密かにいたと言われている」

「ほほう……知っていたか……」

「お前はどうなる?歴史に名を残すか?」

「どうであろうな?私が偽者かどうかの判断は私にはつかない事だ」

その問いに孫策は少し考えると言う。

「ならば俺に仕えてくれないか?改めて歴史の闇に葬られるよりその方がお主のためでもあるであろう」

そんな孫策の提案に張飛は言う。

「よろしいのですか?」

それを聞くと関羽は頷く。

「それが一番だと俺は察した」

関羽は孫策につくことになった。

こうして、反董卓連合は勝利で幕を閉じることになる。

【魏続陣内】

敗北した魏続と張飛はどうするかを相談していた。

「我々は曹操様に弓を引くわけにはいかない……かといって呂布奉先に義理立てして孫策側にもつけまい」

「悔しいが私達では呂布には敵わないよ」

そんな会話を聞き張飛が言う

「ワシなら行ける!孫策の元へ行こう!」

その言葉に対して魏続も張飛を見ながら答える。

「行くのは自由だが、これだけは忘れるな!戦いもせずに逃げ出す事がばれれば問答無用で殺されるぞ!」

「その時はその程度の男だったという事だ」

そう言うと張飛は立ち上がり黄忠の遺体を手にすると、そのまま出て行ってしまう。

その後姿を見ながら魏続は思うのである。

(我らにもまだ呂布に抗える武人の心はあるのだろうか?)

そんな不安を感じながらも魏続は兵を引き連れて劉備の元へと向かったのだった。

張飛が孫策の元へと駆けつけると、すぐに事情を話してその軍の中に紛れる事が出来た。

それを少し離れた所から見ていた張飛の娘である銀屏は話しかける。

「奉先……どうしてこのような事を」

「見ていられないからだ」

そう言うと張飛は先に進んでいく。

そんな父親の様子を見ながら銀屏は蜀漢軍の兵達に指示を出すのであった。

既に魏軍と戦っていた孫軍の士気は高いものがあり、黄忠の部隊を一人で葬ったほどの実力を持つ張飛の援軍に士気が上がっていたのである。

「孫仁様のご子息ならば!」

「張飛将軍がいれば怖いものはない」

そんな話をしながら呉軍は一路洛陽へ向かう事を決定した。

そんな呉軍が長安へ辿りつく頃にはすでに日は暮れかけており両軍の動きも止めて野営することになる。

そんな野営中の陣営の中に張飛の姿はなく、銀屏が一人で探し回る。

「奉先どこ?どこ?」

すると何処からか声が聞こえてくる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ