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26話

だが、その呟きの後に呂布は不思議な気分になっていた。

「実の娘ではない?なら養子では無いのか?」

そんな疑問を思わず口にしてしまうと黄蓋がまた答えてくれる。

「同じ家に養女として引き取られてはおったらしいのだがな、途中で実の娘と分かって追い出されたという話も聞いた事がある」

呂布はその話を聞いて華雄の事を可哀そうに思い始めていた。

それは孫静も同じ気持ちであり、華雄の為に何か出来ないかと思案していると黄蓋が意外な事を口にする。

「華雄には弟と妹がいてな、その弟は呂布殿と共に私に仕えており、妹の方は劉備の所で軍師をしている」

それを聞いた孫静は思わず呟いたのだ。

「噂で聞いた事があります」

そう答えると華琳から聞いていた話を思い出していた。

(確か関羽と張飛と一緒に黄巾の乱に加わったって言っていたわね)

そんな話を聞いていた呉蘭も同じであったので驚いていたのだ。

「ほお、お主の知っている噂とわしが言っていた事は同じようだな」

黄蓋は笑みを浮かべて孫静に答える。

「黄巾の乱で武名を轟かせた呂布に才を認められた関羽と張飛、その者達の軍師が実は女だとは誰も知るまい」

二人は大きく頷くと華雄の凄さに感心したのである。

そんな話をずっと聞いていた董卓は二人に向かって言った。

「華雄にはあなたが孫静殿である事を隠しつつ、報告をしてあげて欲しいのですがどうですか?」

その質問に黄蓋と呉蘭はチラッとだけ目を合わせると頷くと黄蓋が答える。

「こちらも色々立て込んでおりますので、その間の報告としてでよければ引き受けます」

「そうしてもらえると有り難いのですが、何か必要な物はありますか?」

そんな董卓の心配に対して呂布は自分の剣を差し出すのだが、これにはさすがに全員目を丸くしてしまっていたのだ。

「俺が持っていたとしても今の曹操軍には必要ないでしょうから」

呂布が差し出した剣を董卓は受け取って確認すると黄蓋に渡しながら言ったのである。

「分かりました。これを使えば、華雄以外の者にも口を割らせる事が出来るかも知れませんね」

その説明を聞いた呂布は剣を見て頷くと、そのまま董卓の前に置いたのである。

そんなやり取りがあったものの呂布達は今後の計画を立てる事になるのだが、この一日目の夜はそれぞれが話し合っていた。

呂布は孫静や黄蓋と話をしていたが、呉蘭が離席したのを知ると追い掛けて行ったのだ。

「あの子に何か用があるのか?」

呂布の横に来た孫堅に聞かれ呂布は少し考えていたのだが、孫堅の問いに答える。

「もし俺がいなくなった時に誰が代わりになるだろうかと考えていたのです」

その言葉だけで、孫堅は自分の娘である孫策の事を思い出していたのである。

「そうかお前の軍師になるには、どういった人選が必要になるのかという事だな」

そう言う孫堅に呂布は苦笑いをしながら答える。

「それだけではないのですがね……」

だが、その言葉に孫堅はまだ他にもあると悟り話の続きを聞こうとしたのだが、そこに今度は劉備がやって来たのである。

「こんな夜更けに話し合いですか?」そう劉備は言うのだが董卓から言われた事を言うしかないと思った呂布は簡単に話す事にする。

「この度の曹操軍との戦、どういう手を打つべきかで話し合っていたのです」

そう説明する呂布に劉備は難しそうな顔で考えながら言う。

「あまり複雑になるのではなく、単純に曹操軍の弱さを利用して叩き潰せば良いのではないですか?」

劉備はそう言うのだが、それが出来れば苦労はしないと思ったのだが黙って話を聞いていた孫堅が口を開いたのだ。

「確かに単純に正面からぶつかり勝つというのは簡単ではあるがな」呂布はそこで何か問題があるのだろうと感じたので黙って続きを待っていたのだが、孫堅は劉備にも同じ事を言う。

「いくら弱くなっていると言っても曹操も人望のある方だからな、単純な勝ち方では反感や恨みを買う事になるかもしれん」

そんな孫堅の言葉に劉備は難色を示していたのだが、その反応を見た孫堅は少し考えると、また口を開いたのだ。

「こちらの兵士と農民を一体化させた部隊を戦地に送り込む事は出来るか?」

その言葉に二人は意外な顔をしてしまうのだが、孫堅はそのまま説明を続けたのである。

「戦うのは兵士ではあるが、その兵士を統率する人間が農民であるならば曹操も戦いにくいと思うぞ」

そう言った孫堅は呂布を見ると何故か笑みを浮かべていたのである。

そんな話をしていると誰かがやって来てる事に気付き視線を向けると関羽がいたので、呂布や孫堅も同じように視線を向ける。

「華雄という人物に関して話があるのだが」

そんな関羽の言葉に三人の反応はそれぞれ違ったものであったが、一度華雄がいた場所を見る。

すると董卓は頷き関羽に席を勧めると席に付き話を始めたのだ。

「華雄は曹操軍の中でも一二を争う程の武勇を誇る武将で、その腕前は戦場でしか発揮されないとまで言われておりました。

その華雄が突然戦に姿を見せなくなったので曹操殿も困っていたのです」

そこまで言うと劉備と孫堅も何故関羽がその話を出したのか気になったのである。

そんな二人に董卓は視線を向けて続きを話していった。

「私が華雄の居場所を曹操殿に教えてから数日後に、関羽殿が来られた時は驚きました」

その言葉を聞いた瞬間、その場にいた三人は改めて驚いた表情を関羽に向ける。

そんな三者三様の視線を受け止めていた関羽であったが、すぐに話を続けたのである。

「その時の戦では私は一騎当千の働きをみせる事が出来たのですが、曹操殿は私の事を知っており恐れておられた様なのです」

そんな関羽の言葉に三者三様の驚き方をしたが、その中でも孫堅は一番驚いていた。

「それはどういう事だ?」

「どうやら、華雄が曹操殿に私の事を報告したようです」

そんな関羽の説明を聞いて董卓は少し不思議に思っていたのだ。

(そんな簡単に人を裏切るような事はしないと言っていたはずなんだけど、何か思惑でもあるのかな?)

その疑問を董卓は口にする事無く黙っていると関羽はそのまま話を続けていった。

「それから私は曹操殿からのお誘いを受けるようになったのですが、やはり戦に借り出されておりました」

「何故、それほど優れた者を惜しむ事なく戦地に行かせていたのだ?」

孫堅は率直に思っていた事を言う。

「その腕前を買われていたのは確かだが、私でなくとも兵士の中に紛れて戦ってもらえれば良いという考えでありました」

そんな関羽の説明に関羽と董卓の二人に疑問を感じた孫堅は聞き返す。

「ならば華雄が私の事を伝えたとしても、こちらの軍が敗北する事などなかったのではないのか?」

孫堅の質問に関羽は董卓の方に視線を向けると董卓は頷いて答えた。

「確かにその通りですが、それは曹操殿も分かっていた事でしょう。ですが、それでも華雄を使い続けておりました」

その説明に劉備が気付いた事があったらしく口を開いた。

「その理由が張遼という人物なのではありませんか?」

そんな劉備の言葉に関羽は納得の表情を見せたので董卓はその張遼という人物について尋ねてみたのだ。

「私の下にその張遼と言う武将の報告は来てないので、どれほどの人なのか分からないのですが」

その質問に関羽はすぐに答える。

「張遼という将は武勇に関しては華雄に引けを取らないかも知れませんが、それ以外の事には疎い様です」

その説明だけでは理解できない董卓は思わず聞き返したのだが、どうやら劉備の方が理解していたようである。

「もし華雄と同じ様な能力を持っているのならば、それこそ華雄の様に戦の前後関係なく戦場に駆り出される事になると思います」

そこまで説明されれば董卓にも想像がついた。

「それは負担が大き過ぎますね。ですが張遼は曹操軍の中でも有数の騎馬兵を従えているので、それが戦地で孤立した呂布軍を攻め込めば勝利は間違いなしと思ったのではないかと思われます。実際に呂布将軍や私がいなかったら、そうなっていたでしょうからね」

そんな董卓の話を否定する人物がいた。

孫堅である。

「そんな事はない、戦場は自由になっているのだ。戦いたい者だけで戦えば良い」

そうキッパリと言い切る孫堅に関羽は少し驚く。

(孫堅殿ならば張遼を庇うかと思いましたが、この様子では無理を承知で味方をしてくれているのですね)

そんな事を考えつつも、さらに疑問が出てきたので聞いてみる事にする。

「関羽将軍が言うような人だとするのなら華雄はどうして裏切るような事を?」

そう尋ねられて関羽は考えていたが、結局は董卓からの質問に答えた。

「私には華雄の考えている事までは分かり兼ねますが、それは華雄本人でなければ分からないのではないでしょうか?」

劉備はその関羽の言葉を聞き、この話はこれ以上聞いても仕方がないと思い話を先に進める事にしたのだ。

「つまり、それは孫堅将軍でも無理だと言う事ですね」

そんな劉備の言葉に孫堅は少し思うところがあったのか、そのまま黙ってしまうのだが董卓は話を先に進める事にした。

「では、明日はその張遼軍と決着を付けましょう」

そう決めた董卓は張遼の性格を考える事にしたのだ。

「関羽将軍や劉備殿にお会いさせてみたいのですが、どうですか?」

その問いに二人は難色を示すと、孫堅が口を開いた。

「分かった。なら私だけで会わせてくれないか?」

「えっ?」

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